「何点でもいいんだよ」で
失敗を恐れない心に
2015年度から英検やTOEIC、TOEFLなど、英語の資格試験を生徒全員が受験する取り組みをスタートさせた日出学園中学校・高等学校。
「生徒には『何点でもいいんだよ。数年後、数十年後、大学進学や就職のときに何が必要か、今の段階で知っておこう』という声かけをしています。すると、大半の生徒は喜んで受けてくれますね」。そう話すのは入試広報部部長の石川 茂先生だ。
中1は英検、中2はTOEFL Primary、中3はTOEIC Bridge、高1はTOEFL Junior、高2はTOEICを全員受験する。何点でもよいとしながらも、中2のTOEFL Primaryでは満点が続出。高1のTOEFL Juniorでは約1割の生徒が英検2級相当のB1レベル以上をマークした。
一方、スコアが思わしくなかった生徒でも「授業より楽しかった」「英語は好きじゃないですが、大学や就職で必要なことがわかった」という感想を寄せている。高スコアの生徒からは「自分で申し込んで本会場でチャレンジしたい」「今までにない試験で楽しかった」という声が多く上がった。
「本校の生徒は、のびのびと勉強に取り組む子どもたちが多いのが特徴です。こうした感想にも『日出らしさ』が出ていると感じますね。どのレベルにあっても、今後頑張っていきたいという気持ちを持ってくれました」(石川先生)。
堤雅義校長も「TOEICやTOEFLは合否ではなく、勉強した成果が点数で現れるのが良いですね。『これは世界につながるテストだ』という意識も生徒に芽生えたように思います」と話す。
この取り組みは勉強に向かう姿勢にも変化を与えた。
「生徒は失敗を恐れなくなり、他の教科においても積極的に質問するようになりました」と石川先生。
同校の職員室の一角にはテーブルとイスが用意してあり、質問スペースが提供されているが、そこを訪れる生徒が格段に増えている。これまで自分の意見を言えなかったおとなしい生徒も「自分の想いを伝えられるようになった」と石川先生は感じている。
同時に教員の意識も変化してきた。「今やっている勉強が将来どのように役に立つか、生徒にきちんと伝えるようになってきました。また、その生徒の得意なことを見つけ、導こうとする姿勢に変わってきたと思っています」と話している。
入学後の合宿で一気に仲良く
国際交流でメンタルも鍛える
幼稚園から高校まで擁する総合学園である同校。中学受験を考える家庭からの質問ナンバーワンは「小学校から上がってくる生徒たちにうまく溶け込めるのか」だ。
これに対して堤校長は「内進生も外進生も度量が大きいといいますか、他者を受け入れる心の広い子どもたちが多い。そのため、自然に輪に溶け込んでいますよ」と太鼓判を押す。
加えて、入学式の2日後には、同校の軽井沢山荘にて、2泊3日のオリエンテーション合宿を行う。そこで物づくりやバーベキューを一緒に体験することで、一気に生徒同士の距離が縮まり、合宿前は顔見知りが一人もいなくて不安そうだった外進生も、あっと言う間に友達をつくっている。
「帰りのバスの中では、皆いい笑顔になっていますよ。毎年その笑顔を見るのが本当に楽しみです。この合宿から学年づくりが始まりますが、よいスタートを切ることで中学3年間がずっとうまくいくと感じています」
オーストラリアの姉妹校「セントポールズ・アングリカン・グラマースクール」との国際交流も生徒を大きく成長させている。約30名の生徒が互いの学園を訪れ、ホームステイをしながら異文化への理解を深めているものだ。 |
「オーストラリアのホームステイを経験した生徒は本当に変わりますね。まず英語を聞く力は確実に伸び、カタコトながら意思疎通ができるようになります。そして、何よりもメンタルが強くなって帰ってきます」と堤校長。
国土の広いオーストラリアでは、教室の窓から見える景色も大らか。「些細なことで悩んでいたが、オーストラリアに行ったら、悩みが吹き飛んでしまった」という声も聞かれ、この交流をキッカケに留学を決め、オーストラリアの大学に進学した生徒も現れている。
躍進する大学進学実績
将来を見据えた進路指導を
今春の大学進学実績は大きく飛躍した。例年GMARCHレベルの合格者が30名だったところ、今年は北海道大学1名、早慶上理17名、GMARCH49名とジャンプアップ。今回、初めて高3のクラスを国公立大クラス、AOや推薦クラスと進路別に分けたことが結果につながった。
再来年度からは高1の段階から特進クラスを設置し、生徒の希望を叶えるべく学力面のサポートを強化していく予定だ。
「それと併行して、卒業生や保護者などを招き、職業について語っていただく機会を設けています。進学指導ではなく『進路』の指導に力を注いでいきたいですね」と堤校長。
「今後、人工知能の発達により、人間が従事する仕事がなくなると言われています。しかし、チャレンジがしやすくなった社会とも言われています。生徒にはさまざまな職業を知ることで、進路には多くの選択肢があるということや、先を見据える視点を持ってほしいと思っています」と話している。
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