目指すは海外の名門大学
世界のリーダーを育成
「世界に目を向け、将来、世界を舞台に活躍してほしいという思いを込めて、クラス名に『グローバル』と入れました」
そう話すのは春日部共栄中学校教頭の星善博先生だ。昨年度から中学校のクラスを「グローバルエリートクラス」と「グローバルスタンダードクラス」の2つに設定。目標とするのは世界の名門大学。国内でも東大・京大を筆頭に難関大学を目指す。
「グローバルエリートクラス」では週1時間、クリティカルシンキングの時間を設けている。「日本人はクリスマスを祝い、初詣にも行く。これは節操がなく慎むべきことだ。この意見について反論せよ」といった課題に対し、自分の考えをまとめていく。答えが1つではない問題に取り組むことで、柔軟な思考力、判断力、表現力を身に付けることが目的だ。文武両道の国際派を育成する「グローバルスタンダードクラス」とともに、これからの時代に求められる中高一貫教育を追求している。
また同校では、将来の夢を実現する力を身に付けるため、「リーダーズ・カリキュラム」を重視している。その一環として、各界の第一人者を招いて、年間8回もの講演会を行っている。ノーベル化学賞を受賞した白川英樹氏や脳科学者の茂木健一郎氏らも講師として名を連ねる。まさに「本物に触れる教育」の具体的展開だ。
世界を導くリーダーには語学力に加え、幅広い知見や思いやり、協調性、リーダーシップが求められる。そうした人間性の根源となる部分を多感な中高の6年間で大事に育んでいく。
ボストンの大学で
現地の学生や研究者と交流
昨年から「グローバルイングリッシュプログラム」をスタート。中1・2を対象に夏休みの3日間、校内で生徒10人に1人ずつネイティブの講師が付き、クイズやゲームを通して英語を使う楽しさを体感してもらう。1年は自己紹介までできるのが目標。昨年経験している2年では「空港での会話」等、場面を想定した寸劇も行う予定だ。
「このグループはレベル分けをしません。英語が得意な生徒も苦手な生徒も一緒です。皆、3日目には会話ができるようになっていますね。日常生活で英語を話す機会が少ない生徒たちのために、このプログラムでは少人数によるアウトプットを重視しています。生徒には発信力が身に付いてきていると感じます」と、広報委員で英語科教諭の赤松美由紀先生は話す。
中3では「K-SEP(Kyoei Summer English Program)」を行う。これは10数人のグループに英語圏の大学生がリーダーとして入り、得意分野についてまとめ、英語でプレゼンテーションをするもの。大学生は日本語が話せないので、コミュニケーションは英語のみ。10日間、途中に合宿も入れながら、何をどう発表するかをまとめていく。
「生徒は自分がこれまで勉強してきた知識を総動員し、ネイティブの大学生と会話します。2月のカナダ語学研修(現、中2・3生は全員、中1は希望制で夏休みに実施)を想定し、伝わる英語とはどういうものかを学んでいきます。会話を通して『理解してもらえた!』『伝わった』という、いいスパイラルを積み上げてほしいと考えています。小グループなので普段は前に出てこない生徒もステージで発表をします。それも新鮮な経験のようです」と赤松先生。
高校では、「グローバル人材育成プログラム」がある。昨年から始まった10日間のボストンでの研修プログラム(希望制)では、大学の寮に泊まり、ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)等を訪問。そこに通う日本人学生や研究者と交流するほか、各国の同年代の学生ともディスカッションする。
「参加する生徒の英語力は英検2級以上でしょうか。現地で自信を持って自分の意見が言えるよう、事前研修をしっかり行っています」と赤松先生。同校のネイティブ講師と社会的テーマについて討論するなど、現地で十分な学びができるよう準備をする。
今年からオーストラリアでの研修(希望制)も予定している。ホームステイ中心で英検2〜準2級を想定。
「生徒がいつか、こんな大学で学んでみたいと思ってくれるようになることを期待しています」と星先生は話す。
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アジアや国内でも国際交流
海外留学の気運が高まる
高2の全員参加の修学旅行はシンガポール・マレーシア。
「シンガポールは高度に都市化された国。生徒たちは班別研修で、それを体感します。マレーシアでは家庭を訪問し、民族衣装を着せてもらうなど、現地の人々の温かさに触れます。どちらもさまざまな国や地域から人々が集まって形成された国家。この修学旅行を通じて、英語を話すことの楽しさと、日本もアジアの一員だということを感じてもらいたいと思っています」と星先生。
春日部共栄では、カナダをはじめ、さまざまな国々からの短期・長期の留学生を毎年受け入れている。ホームステイは同校の生徒の家庭にお願いしており、ホストファミリーとして登録してくれる家庭も年々多くなっている。
「日本にいながら国際交流をしたいと考える保護者の方も増えています」と赤松先生。
生徒が希望すれば、毎年でも国際プログラムに参加できる同校。部活動も盛んで、文武両道を掲げているとおり、昨年甲子園に出場した野球部員の中にも、現在留学準備を進めている生徒がいる。
星先生は、「海外留学を希望する生徒は確実に増えつつあります。世界を舞台にたくさんの卒業生が活躍してくれることを期待したいですね」と話している。
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