「弟のような生徒を守りたい」
体当たりで指導した新人時代
昭和51年、新人教師として霞ヶ浦高等学校に着任した赤城校長と柴崎校長。当時は生徒数が急増した時期でもあり、最高で1学年1,100人という時もあった。赤城先生は理科、柴崎先生は商業と情報の授業を担当。1週間に20時間以上も授業を行っていた。
「ほとんどのクラスの授業に出ていたので、生徒の名前は全部覚えました」と赤城校長。柴崎校長は教科指導のアイデアとして新聞を教材に使った。金銭感覚を身に付けてもらうため、新聞の株式面を活用したのだ。
「生徒には毎日新聞を持ってこさせ、興味のある会社の株価を1年間追跡させました。日々株価は変動しますから、その理由は新聞の記事から探させます。そうすることで、経済の状況が自然に理解できるようになりました。卒業後実際に株を購入し、自動車を買えるほど利益を上げた卒業生もいましたよ」と柴崎校長。
赤城校長の専門は化学だったが、授業で教えることになったのは地学。実は高校時代、地学は大の苦手だった。「苦手だった分、生徒がどこでつまずくのかもよくわかる。自分も一から勉強し直して生徒に教えました。優等生ではなかったことが逆に良かったですね」と赤城先生。
当時は男子校だった同校。生徒指導が大変だった時期とも重なった。
「大学を出たばかりで、生徒とはそう年齢が変わりません。弟のような生徒を守りたい、最後まで面倒をみたいと強く思っていました」と柴崎先生。
野田や流山など、千葉方面から通う生徒も3分の1ほどおり、何か問題があると、夜、千葉まで車を走らせて家庭訪問をした。新人時代、先輩教師から教わったことは「体を動かすということ」。とにかく現場に行って話をし、真摯に対処した。
「学校を休ませない・やめさせない」と奔走した両校長。1時限目に姿が見えなければ、すぐに家に連絡。担任だけでなく、生徒からも連絡を入れてもらうこともした。抜き打ちで家庭訪問に行くこともあった。
「悪いことをしたらきちんと叱る。手をかけてちゃんとした社会人にさせる。随分と叱りましたが、その頃の教え子からは、今でも連絡が来ますよ」と両校長は懐かしそうに語ってくれた。
甲子園出場を機に大変化
男女共学化で入学者が増
同校の生徒の意識が大きく変わったのは平成2年。その春、野球部が甲子園に出場したのが大きなキッカケとなった。
「何かあったら甲子園に出場できない。生徒は自分たちで考えて行動するようになり、言葉遣いもよくなりました」と柴崎校長。入学志願者も増え、全体的に学力もアップした。同時に大学進学志向の生徒が増加。自ら選んでこの学校に入りたいと思う生徒も多くなってきた。
平成16年には男女共学になった。赤城校長と柴崎校長は二人で男女共学に移行した学校を視察。地元の中学では「女子の一期生になろう」と呼びかけた。さらに中学生の意見を聞いて制服を製作。この制服は大評判で、希望者増を後押しした。その結果、受験者は対前年比600人増の2,400人を超え、入学者は定員を上回る490人を記録。同時期から生徒指導も激減し、霞ヶ浦高等学校は進学校への道を歩み始めた。 |
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そして、平成21年には併設校・霞南至健中学校が開校。柴崎校長は今春、高校の教頭から霞南至健中学の校長に着任した。
「柴崎先生は何かあると『私が行きます』とすぐに行ってくれる行動派。柴崎先生がやるからには私も負けられないと思って、頑張ってきました」と赤城先生。
一方、柴崎先生は「赤城先生は真面目。やろうと決めたことは一つひとつ達成していく。これは私には真似ができません。頼りになるよい相談相手でした」と話す。
教務畑を一筋に歩んできた赤城先生と、生徒募集や進路の重責を担ってきた柴崎先生。タイプこそ違うが、盟友である二人が、今後、両輪となって中学校・高等学校を牽引していく。
8時限目を設定し
夏期講習もさらに充実
霞ヶ浦高等学校は5コース制をとっている。国公立・難関私立大学を目指す「特進ゼミコース」と「進学ゼミコース」、中堅大学以上を目指す「進学コース」、文系大学・専門学校進学の「総合進学コース」、就職や進学を視野に入れた「総合コース」の5つだ。
同校が今後目指すのは「国公立大毎年2ケタ合格」。そのための学習時間を確保するため、進学コース以上で7時限まで行っていた授業を今年度から特進ゼミコースと進学ゼミコースの全学年で8時限目を設定。50分ないし90分の講座をプラスして設けることにした。
さらに夏休みを4期に分け、予備校の講師を招いた夏期講習も行う。これは特進ゼミの生徒は必修だ。
「今の3年生は5コースになって、初めて入学してきた生徒。入学時からきっちりと積み上げてきているので、今年国公立に合格した卒業生より成績が上の生徒も少なくありません」と赤城校長。さらに実績を伸ばしてくれるだろうと期待が高まっている。
霞南至健中学校の今後の展望は、霞ヶ浦高等学校と中高一貫教育を確立することだ。特進ゼミコースと連携し、6年間の学習指導構想で国公立・難関私学大合格を目指す生徒を育成していきたいと考えている。ただし、生徒が希望する場合、難関公立高校の受験も認めている。水戸一高や土浦一高など、公立トップ校に進学する生徒もいる。
「入学してくる生徒の学力は元々高い。もう少し人数が増えて2クラスになれば、競争心が芽生え、さらに学力が伸びるのではと期待しています」と柴崎校長は話している。
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