ニーズに応えた
伝統校の生活指導
4月に就任したばかりの松葉幸男校長は「学校の魅力とは、生徒や保護者のニーズに応えるということだと思います。高い学費を払って私学に来てくれるということは、それだけのニーズがあってのことですから、そのニーズを的確に把握して、応えていくことがやるべきことだと思っています」と抱負を語る。
私学に子どもを通わせる最大の理由は“生活指導”だというアンケート結果があるとした上で、松葉校長は言う。
「保護者が子どもを私学に入れる最大の理由は、きちんとした生活指導で、勉強もしっかりできる環境にあるからだと思います。公立ではしきれない生活指導を徹底的にできることが、私学の生命線の一つです」
もう一つ大事なことは、生徒の学力をより一層伸ばし、レベルの高い進学を目指すこと。「生活指導と進学指導の二つが、生徒や保護者が私学を選ぶ大きな理由ですので、今後もその辺はしっかりとやっていきたいと思います」。
未来を切り拓く4つの力
「人間力・語学力・
創造力・進学力」
同校が提唱する“未来を切り拓く4つの力”とは、自ら考え行動し、人と社会とつながることで実現するものだ。
まず人間力とは「基本は“人を思いやる心”で、社会のためになる人といった、世のため人のために尽くせる人材をイメージしています。3年間を通じて『論語』を学ぶ伝統の授業がありますが、二松學舍という学校法人そのものが、東洋文化に立脚し、その精神の支柱となっているのは『論語』ではないかと思います」と松葉校長は語る。
語学力においては、母国語である日本語の基本に注力するのはもちろん、英語の他に3年次には、中国語・韓国語を選択履修することができる。隣接する二松學舍大学の教員による直接指導で、言葉の背景にある文化や風習も掘り下げ、言語に対する理解を深めることができる。
創造力については、「いいお手本がなくなってしまった今の日本社会では、自らが新しく生み出していく力を持たないと、世界でリーダーシップを発揮することは難しいと思います」と松葉校長。書道教育でも有名な二松學舍は“学生が自ら学びを選択する”創造型システム「高大連携教育」で書道を履修すると、大学の単位として認定されるという附属校の強みがある。
そして進学力。「特進コース」と「進学コース」があり、どちらも1年次は「共通・選択」で基礎固め。2年次からは文系クラスの他に理系クラスも設置、3年次には生徒一人ひとりの能力や適性などに応じたカリキュラムを設定している。通常の授業(基礎)、演習科目(応用力)、補習授業(補足部分)、さらに合宿、予備校の講師が行う「学舎(まなびや)」といった受験指導が何重にも組まれている。今春もGMARCHの中でも難関校の合格者の他、多くの上位大学の合格者を輩出した。二松學舍大学へは、毎年50人程度が内部進学をしている。
難関大を目指す特進コースは授業時間が多く、月曜日には8時間授業が用意されている。
「昨年までは7時間でしたが、学年の担任たちの想いが形になりました。教員たちは熱い意気込みを見せてくれていて、非常にいい傾向だと感心しています」
また、現役国立大学生が来校し、進学や勉強相談を受ける「チューター制度」も導入4年目。「高校生が勉強が嫌になる瞬間は“わからなくなる時”で、その時にその場ですぐに教えてくれると挫折しないで済みます。自学自習のアドバイザーですね」。
新しい試み「夏の私塾」
生徒と教員の近い距離感
今年の夏休みから「夏の私塾」として、教員によるテーマ別の個人塾を開く試みが開始された。 |
「生徒はいわば教員の個人塾に弟子入りして、その先生について勉強します。今までは組織として、勉強をしっかりと教えていくことが強調されてきましたが、教員一人ひとりの持っている力を、子どもたちに私塾のような形で、個別指導をしようじゃないかということで始まりました。これがどこまで広がっていくかは今後のことですが、今年はトライアルということで、担当教員28人で、延べ425コマ(1コマ=50分)実施することになりました」
校舎は地下2階から地上7階の屋上までの全9フロアに収まり、各移動教室の設備も充実している。この居心地のいい空間で、生徒と教員の距離感の近さが、強い信頼関係を生んでいる。同校はOBの子どもが入学してくることが多く、親子兄弟、中には親子3代二松學舍という家庭もあるという。「公立は教員が6年で他校に異動してしまいますが、私学には異動がありませんので、いつ来ても習った先生がいる、というのはいいことだと思います。親が子どもに自分が通ってよかったから、と勧めることができるのは、私学の大きな強みです」
人間としての基礎が
あってこその学力
松葉校長は力を込めて話す。「いくら勉強ができても、いい大学に行っても、電車の中でお年寄りや体の不自由な方に席を譲れないような人間だったら、勉強している意味はなく、人間としての基礎があって、初めて学力がある、ということを教えていきたいと思います。今の子どもたちはナイーブな心を持っていますから、その心にうまく響けば、かなり成果が上がってくるはずです。高校生は疾風怒涛の時代、壁にぶつかる時でもあります。そんなとき、自分で選んだ学校、“入れる学校ではなく、入りたい学校”だったら頑張れると思うのです」
「論語」によって、東洋文化の人間の基本的なあり方について学ぶ二松學舍の生徒たち。松葉校長の人間形成を基礎とした生活指導が、浸透しやすい土壌は十分に整っている。
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