生徒による授業評価で
高い指導モチベーション
キリスト教精神に基づき、多文化共生の教育と語学力に優れた国際人育成に力を注ぐ桜美林中学校・高等学校。ここ近年は、大学進学実績において目覚しい躍進を遂げ、その「止まらぬ勢い」に各方面が注視する。
一昨年に続いて、今年度も東大合格者を出し、難関私大と呼ばれる早稲田・慶應・上智・東京理科大学へは、この3年間で34人から49人、GMARCHへは115人から201人と合格者数を着実に伸ばした。こうした躍進の秘訣は、「9年前に就任した本田栄一校長が推し進めた授業改革にあります」と入試広報部長の平澤直寛先生は語る。
まず、授業一つひとつが大事ということで、生徒による授業評価を取り入れた。
「生徒へのアンケート作成、データ分析などは第三者機関にお願いしました。その結果、我々の足りないものは何かを、改めて認識することになったのです」
教員は約75人、9年で3分の1に当たる25人ほどが入れ替わった。他校から活躍の場を求めて就任してきたキャリア教員をはじめ、指導陣のモチベーションは高く、学習環境の充実化、活性化が実現している。
「第三者機関からの同校の評定も3年連続伸びており、関東圏の学校ではめずらしいと言われます。教員の努力の現われです」と、平澤広報部長は自信を見せた。
カリキュラム改革と
併設大学合格の安心保証と
改革が始まった2003年、カリキュラムの見直しも行われた。当時、アンケートを取ると、必ずしも大学受験に対応したカリキュラムにはなっておらず、予備校に通っている生徒が多いことがわかった。そこで、高校3年次は正規の授業を原則午前中で終了し、午後はそれぞれの志望にあわせて、大学進学に向けた受験講座を開講。
「生徒たちが予備校に行かなくていいように、我々自身が月曜から土曜まで毎日、いわば予備校講座を開講しています」
入試現代文、センター数学、GMARCH英語、医療系論述など、文系クラスで約18講座、理系クラスで約23講座を設け、個々の入試対策にあわせた柔軟な学習が可能に。その成果が合格実績の結果につながってきた、と平澤広報部長は分析する。
また、かつては他大学の受験に失敗すると、併設の桜美林大学には進学できなかったが、現在は桜美林大学への併願(合格権を保持し、他大学への受験)が可能となった。「生徒たちは安心して難関大学にチャレンジするようになった。これも飛躍的な合格実績の一つの要因です」。
かつて7〜8割の生徒が桜美林大学へ進学を決めていたが、今年度は桜美林大学への進学率は8%とついに一ケタに。大多数の生徒は他大学受験に挑戦し、私大トップ校、国公立大学への驚異的な進学率の伸びへと力を発揮している。数年前から中学入試に午後入試を取り入れており、平澤広報部長は「合格実績は今後、さらに伸びると確信しています」と断言する。
特化した進路指導部
高い学習目的の育成へ
改革以前から進路指導部は独立した部署として機能し、改革の一環として、その活動がさらに強化されている。
センター試験や各大学の入試は毎年さまざまな変更が加えられ、その対策にはかなりの労力が欠かせない。その点、同校の特化した進路指導部は、「入試で何が変わり、ではいま何をなすべきか」と、司令塔として最新情報を提供し、個々の対策をきめ細かに指示している。プロフェッショナルな独立した進路指導部、授業評価、カリキュラム改革、併設大学への併願可能システム、これらが相まって着実に成果を上げているのである。 |
ところで同校は、例えば東大合格○名といった合格目標数値は持っておらず、そこが他校と異なる点だという。「社会に出たときに恥じない、教養ある人間を育てること。大学受験においても、大学の名のもとに進学するのではなく、大学で学びたいことを極め、勉強することを大切に考えています」
保護者には、そうした進学スタイルに共感してもらい、評価を得ている。中高6ヵ年は、社会人になるにあたって、土台となる骨格を形成する期間。特に中学1年次から高校1年次の4年間で、なぜ勉強したいのか、将来何をやりたいのか、自問自答して目標を持たせる指導を重視している。
その実践カリキュラムが、保護者の協力を得て実施しているキャリアガイダンス。年4回、中学1年から高校1年の4年間、在校生の保護者に、弁護士、警官、商社マンなど、自らの仕事について語ってもらい、将来の目標を見つける絶好の機会となっている。
卒業までスクールバス無料
「保護者から求められているニーズに応え、提供していきたい」。本田校長が就任して実現したのが、スクールバスの無料運行だ。高校卒業までの6年間、スクールバスが無料で利用できるようになった。その利便性は、生徒や保護者に好評で、大いに活用されている。より快適で充実した学習環境にむけて、桜美林の意欲的な学校改革は続く。
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