カリキュラムの一新と特待生制度の導入
小松原高等学校は、平成6年に進学のためのカリキュラムを導入。以来、着々と成果を上げてきた。ここ数年、大学進学希望者数が急激に増加。その対応として昨年から普通科を「進学選抜」「進学」「総合」の3コースに設定し、生徒一人ひとりに合わせた進路指導を行っている。
「進学選抜コース」では、平成17年度からさらなるレベルアップを目指して思い切ったカリキュラムの変更が行われる。現在、新しいシラバスの作成が代々木ゼミナールの協力を得て進行中で、9月に公表される予定である。その具体的な内容を、鳥井完教頭先生に聞いた。
「MARCHと言われる有名私立大学2桁合格を、最低限保証するのが目標です。そのために、1年生では大学に合わせた問題集などはあえて使わず、教科書を徹底的に学習します。土台となる基礎学力をつければ、偏差値を10ポイント上げることは可能です。新しいシラバスに基づいた徹底した教科書指導で、偏差値50前後の生徒も、10ポイントアップを実現させ、MARCHの合格に結び付けていきます。教科書だけではセンター試験で満点は取れませんが、70点は必ず取れるはずです」。
「進学コース」についても、現在のカリキュラムを見直し、多数の指定校推薦枠を使って、現役合格を果たしていく。
なお平成17年度からは、特待生制度も本格的に導入する予定で、書類審査などで選抜された10名程度の生徒に対し、3年間学納金が全額免除になるという。
ニーズに合わせた多彩な科目選択群
「総合コース」には、5つの科目選択群(パッケージ)がある。パソコンで授業を受ける「情報」は人気が高く、1クラスでは足りず2クラスになった。社会福祉実務教育を学ぶ「ライフワーク」、危険物取り扱い資格など工業系の各種資格取得を目指す「ライセンス」、音楽・美術・書道の専門教育を行う「芸術」、スポーツリーダーを育成する「スポーツ」がある。多彩な科目選択群から、生徒は自分の興味や関心のある分野を豊かに伸ばしていくことができる。
「ライフワーク」には男子校には珍しく、調理実習や衣服の時間も設けている。「調理も針仕事もできたら、怖いものはありません。男も自立しなければなりませんからね」と鳥井教頭。
同校に入学してくる生徒の中には、不登校だったり、勉強に対する苦手意識を持っている生徒も少なくない。特に理科や数学を苦手とする生徒が多いため、授業は復習から始めている。
「まず『数学が一番やさしいんだよ』ということを教えます。生活の中の身近な事例をあげて説明しますと『なんだ、そういうことか。これならわかる』と実感するんですね。その実感が苦手意識を払拭し、自信となって結果につながっていくのです」。 |
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専門性と総合性を追求する工業系学科
小松原高校の工業系学科には「機械科」「情報技術科」「自動車科」がある。高い技術指導に対する評価は高く、就職決定率は100パーセントである。なかでも、県下に2校しかない「自動車科」は人気が高い。
「3学科の特性を追求し専門的に深めていくことはもちろんですが、これからの時代は、より総合的に学べるようにカリキュラムを改革していこうと思っています。例えば、機械科にいても自動車工学や修理が学べるようにしていきます」。
盛んな部活動と課外活動
小松原高校は部活動も盛んで、その活躍は全国に知られている。バトミントン部は、全国高校選抜・男子シングルスの部で優勝。また自動車部は「ホンダ・エコノパワー燃費競技全国大会」で、一般の部を抑えて見事優勝し、本田宗一郎カップを獲得している。
また同校では、地域貢献活動にも力を入れている。昨年からは、生徒全員参加で南浦和、学校周辺地域の清掃を授業として行っている。
当時3年生の生徒5人によって始められた空き缶を集めて車椅子を贈る活動は、朝日新聞に取り上げられた。その活動は今も継続されており、車椅子を贈るだけではなく、自動車科の生徒たちによる修理のボランティアが大変喜ばれているのだ。
「中学時代、欠席がちだった生徒が『学校で、先生がこんなに相手してくれたことはなかった』と、一日も休まず登校してくるんですよ。一番嬉しいのは、生徒が『学校が楽しい』と言ってくれることですね。生徒たちはまだ16、17歳。まだまだその後があります。無理をせず、身の丈に合った進路指導を心がけています。小松原高校へ行けば頑張れるものがある――そういう学校にしたいですね」と、鳥井教頭は熱く語った。
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