脈々と続く
創始者の教育への思い
広大な敷地に、幼稚園から大学までの施設が立ち並ぶ玉川学園。幼稚部から高校3年までをひとつの学校としてとらえたK-12一貫教育システムの教育が実践され、小学1年〜高校3年は1年生〜12年生と呼称。キャンパス内では生徒たちが学年を超えて、クラブ活動や自由研究にのびのびと取り組む、ゆとりある学習環境だ。
総合学園としては、世界で初めてISO14001の認証登録が認められるほど、敷地内は恵まれた自然に包まれている。こういった自然環境は、生徒たちの環境学習の一環になるだけでなく、緑を大切にすることで、豊かな心の教育にもつながっている。
この『心の教育』こそ、玉川学園の教育理念と大きな関係を持つと、酒井健司教育部長は力強く語る。
「先の大震災では、大自然の力の前で、人間の造った物はもろくも壊されてしまいました。しかし、その大きな力でも壊されなかったものがあります。それは人を思いやる気持ち、互いに支え合う心です。玉川学園の生徒たちも、いま自分たちが何をすることができるかを祈り、考え続けました。生徒たちは心を込めて、自分たちのすべきこと、できることを探し、行動しています。本学で行われている心の教育の成果が表れていると思います」
玉川学園の教育理念は、「真・善・美・聖・健・富の6つの価値の創造を目指す」こと。真・善・美・聖という絶対的な価値と、健やかな身体を育てる「健」、自活する生活力の「富」の付加価値の各々を、学校のシンボルのひとつでもあるコスモスの6枚の花びらのように調和させて、社会が求める人間育成に結びつける全人教育が目標だ。
さらに酒井部長は、玉川学園の教育のモットーとして、「人生の最も苦しい、いやな、つらい、損な場面を真っ先に微笑みを持って担当せよ」であると続ける。喜びのみを追うのではなく、進んで嫌な部分を引き受けることで、人の痛みを知る人間になれ、という指導方針には、80年近く前の創始者の教育への情熱が、今も脈々と息づいていることが感じられる。
本物に触れる
真の国際教育と体験授業
40年以上の歴史がある国際教育は、各国を代表するにふさわしい名門校との提携を成立させており、現在その数は15を超える。
もちろん留学のチャンスも多く設定されている。が、留学選抜を経て、海外の学校への切符を手にする条件は、「添乗員や同行の教員なし・ひとりで基本的な生活ができること」という厳しいもの。そのため、留学は非常に狭き門と言えるだろう。
ただし、交換留学生制度が盛んなため、学内でもさまざまな国から来た留学生とコミュニケーションを取ることは可能。また、ネイティブ講師による英会話授業のカリキュラム数も他の公立校と比較すると格段に多く、英語や他国の文化に触れる機会は、留学しなくとも、生徒が望めば得られる環境となっている。
英語の授業では、中高一貫用教材を使用している。検定教科書と比較すると、文字はより小さく、厚みも増し、その分、単語量が極めて多いこの教材。だが、英語に幼い頃から触れている生徒には、それほど難しい教材ではない。
「玉川学園では幼稚園〜4年までに楽しく英語に触れ、5年からは中学の教材も使用して文法を整理します。そのため、7年生となる中学から入学した生徒は、内部進学生と大きな差ができますが、補習やサポート、習熟度別授業などで、8年進級時にはほぼ同レベルまで引き上げられます」と、酒井教育部長は言う。
また、もうひとつの教育の特徴が、本物を体験させる授業の実践。理科実験だけでなく、絵画や美術、芸術などでも、クオリティーの高い『本物』に触れさせ、偏差値だけではない豊かな知識の習得と心の教育を行っている。
「大学への進学は現役生でおよそ85%。受験準備生を含めると、ほぼ100%の生徒が大学へ進学します」
だが、大学への合格が指導のゴールではない。大学卒業後、彼らが社会人としてステップアップしたときに、玉川学園で学んでよかったと思えるときが来ることが、学校としての目標であり、学園の方針である。 |
国際バカロレア提供の
教育プログラムに基づいた指導
7年生進学時、生徒は一般クラスとIBクラスに分かれる。
IBクラスは国際バカロレア機構が提供する教育プログラムに基づいた指導を行うクラス。7年〜10年生は前期中等教育課程(MYP)11、12年生は後期中等教育課程(DP)のプログラムをそれぞれ履修するため、7年の入学時には外部入学生も加わることができるが、10年生進級時は事前相談が必要となり、IB認定校在籍者、またはそれに準じた教育を受けた者に限っている。
英・数・理・社を英語で、美術/技術・情報などを日本語とのバイリンガルで指導し、その他の授業にも一部英語を使用。DP履修後には国際バカロレア統一試験を受験し、合格すればディブロマ資格を得ることができる。この資格は、ハーバード・エール・ケンブリッジなどの世界トップクラスの大学が入学許可や進学資格として用いている。そのため、IBクラスの卒業生は海外の大学進学を目指す者も多い。
また、2008年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の認定も受け、10〜12年生にプロアクティブラーニングコース(PLコース)を設立。理数と英語を重視したこのコースで、学術研究所・脳科学研究所の協力を軸に、国内外の理数・医学系大学への進学を視野に入れ、専門カリキュラム学習を行っている。
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