自己実現を可能にする
「3プラス1」体制
同校での教員生活37年という嶋野校長。「自分の意見を持ち、行動できる女性、経済的に自立して職業生活によって社会貢献できる女性、校祖が願ったこうした女性のあり方、生き方を教える建学の精神は、創立111年目を迎えた今も、決して色あせることはありません」と、情熱を込めて語る。
「女性が働きやすい社会体制が整ってきてはいますが、女性の考え方や育児へのかかわり方は、時間で区切られるものではありません。出産や育児を経た後も社会復帰して自己実現するためには、中高の6年間で自分がどう生きるかを描き、プランを立て、その実現に立ち向かう力を付ける必要があります」
そこで、同校では「25年後の生き方を共に創る」という教育テーマを掲げるとともに、「3プラス1」という独自の教育体制を整え、生徒が自らライフデザインを描く過程を強力にサポート。25年後も高い次元での社会参加を可能にするスキルや能力の養成を図っている。
3本柱のひとつ、「キャリア教育」では、社会を生き抜く「人間力」を身に付ける。中1での自分史作成に始まり、校祖研究、職業調べ、職場体験、大手企業のミッションを受けての商品開発など、さまざまなプログラムを経て、高1前期終了時に「25年後の私」というキャリアプランにまとめ、明確な目標を持って大学選択をしていく。
また、「感性表現教育」は、日常の教育活動を通して、「観る力」「聴く力」「感じる力」「表現する力」を養い、急速な変化の時代をしなやかに生きる判断力やコミュニケーション力を養う。礼法の授業や日本文化実習、各種行事やクラブ活動も、そのための重要な機会になっている。
「国際交流教育」は、創立時から多くの留学生を受け入れてきた同校の伝統教育。海外4ヵ国の高校との交換留学や海外語学研修、留学生サポーターなどの制度が充実している。2008年には、英語既習者を対象とする国際学級「GSC(グローバルスタディーズクラス)」を開設。海外大学への進学を可能にする高い英語力と、日本文化を身に付けた真の国際人の育成を目指している。
人とかかわり
自分を発揮する
同校の教育で特に重視しているのが、人とのかかわりの中で培われる、自己認識や他者への尊重、コミュニケーション能力など、総合的な人間関係能力の養成。部活動や委員会活動、学校行事などが盛んな所以である。さまざまな場面に生徒同士が切磋琢磨し、向上するための工夫が盛り込まれ、生徒数の多い学校ならではの魅力になっている。
例えば、運動会や文化祭。実行委員の生徒たちが、企画・立案・運営をすべて担い、先輩・後輩を越えて、協調性やリーダーシップが育成される。委員会はその年の進行状況や課題を記録して次年度へ引き継ぎ、伝統が継承されていく。「社会に出て要求されるのは、他者の力を融合していく関係能力です」と嶋野校長。
また、中学1年から高校2年まで実施される「移動教室」も、人間関係力を育成する大切な機会と位置付けている。中学3年は、今年から福島県のブリティッシュ・ヒルズでの滞在型研修を実施。ネイティブ教員の指導を受けながら、まる4日間を英語漬けで過ごす。
「レッスンは、仲良しグループが固まらないように工夫されています。すべての活動が英語で行われるため、伝えよう、理解しようという意志を持ち、自分からかかわっていかなければ何も始まりません。人とかかわっていくために、自分をどう発揮しなければならないのかを考え、自分が“揺さぶられる”よい機会になります」と、同行した嶋野校長。
この「移動教室」はより教育的効果の高い形へと見直しを進めており、中学2年は、昨年から田植え体験を盛り込んで実施。自然や農作業に触れる貴重な機会にもなっている。 |
理系進学率が増加
広がる社会活動
「3プラス1」の導入は、生徒たちに明らかな変化をもたらした。自身の将来をしっかりと見つめることで、医歯薬系、医療系、理工系に進む生徒が増加。また、高齢者施設への慰問や、子どもたちへの読み聞かせ会など、ボランティア活動の幅も広がった。また、今年3月にはアメリカのNPO「ヤングアメリカンズ」のアウトリーチプログラムを同校で開催。約40人の生徒がアメリカの若者たちと英語ミュージカルを創作し、舞台に立った。
「生徒がより生き生きとし、自信を持つようになりました。特に社会貢献活動は、自分の力を社会へ還元していこうという校祖の教えそのものです」と嶋野校長。
よりよい教育体制へと革新を続けながらも、校祖の女子教育理念をしっかりと守り伝える同校。そんな学校に信頼を寄せ、祖母から母へ、母から娘へと、世代を超えて入学を希望する生徒が多い。「今年は4代目が入学しました」と嶋野校長は顔をほころばせる。
「これまで実感してきた本校の女子教育の素晴らしさをしっかりと継承し、卒業生がいつでも帰ってきたいと思える母校であり続けたいと願っています」
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