スクールモットーを実現
「自学自習」の姿勢
「校舎の窓は大きく、太陽の光が入ってきます。元々明るい生徒の多い学校ですが、ますます明るくなったと思いますね。草花も多いですし、とても気持ちが良い。外でお弁当を食べたり、木の下で勉強をしたりしている生徒もいます」と大野校長。
生徒たちは新校舎が大好き。その証拠として、欠席や遅刻が減った。また、校舎の人気は今春の入試にも現れ、これまで新1年生は5クラスだったが、231人が入学。急きょ6クラスになったほどだ。
大野校長は校舎の次は、中身である教育内容について見直していきたいと語る。まず着手したのは「落ち着いた授業時間の確保」。昨年、一年かけて行事を見直し、残すべき行事とそうでない行事を選別。必要なものだけを残した。
また外せない新年度の健康診断も5月末に移行、新学年のスタートから一定期間、勉強のみに時間を割けるようにした。6月には運動会を実施し、それ以降、夏休みまでは行事を入れないなど、授業と行事のメリハリをつける取り組みが始められている。
「例年と比較しても、生徒に落ち着きが出ていると感じています」と、大野校長は早くも効果を実感。そのねらいは「自学自習」の確立にある。
「集中して勉強できる期間を設けることで、自分からもっと勉強したいという姿勢に近づけていきたいと考えています」
大野校長は、現在も中1生の理科の授業を受け持つ。その中で「つい、教え過ぎてしまっているな」と思うこともあるという。1から10まで教えるのではなく、9まで教えてもらったら、後は自分で答えを探しだす努力が生徒には必要だと感じている。
「本校では神様から与えられている賜物を磨き、世に生かせる女性の育成を目指しています。賜物とは何かは、自分で探さなくてはなりません。また、その賜物も他人に磨いてもらってしまっては、役に立つものにはなりませんね。自ら進んで学ぶ姿勢を持っていないと、本当の意味で学校のモットーである『神を仰ぎ、人に仕う』の精神は育ちません。まずは、自学自習の習慣付けから始めていきたいと思っています」
校舎は新しくなっても、女子聖学院の伝統は変わらない。「スクールモットー」の実践を掲げる伝統はしっかり受け継がれている。
パパも女子聖?
心強いPTAと同窓生
女子聖学院はPTAの活動も盛んだ。今年もPTA委員の立候補を募ったところ、定員の2割オーバーの応募があった。校内を飾る草花の世話をする園芸ボランティアはPTAが担当。校舎の建て替え前には、聖書にちなんだ植物を植えたバイブルガーデンも自ら提案し、作ってくれた。
PTAの中でもユニークなのは通称「パパプロ」、正しくは「パパも女子聖 土曜プログラム」と呼ばれる、お父さん中心の活動だ。
運動会や記念祭のときの警備はパパプロの担当。そのため、お揃いのパーカーもお父さんたちで製作した。また、受験勉強を頑張る高3年生に、やきいも200本を毎年焼いて、励ましてくれている。
「記念祭にはお父さん方のチョコバナナが大人気。こうして気持ちよく協力してくださることは、私立学校にとってはありがたいことだと思っております」と大野校長。
同校には強力な応援団がもうひとつある。それは卒業生で組織されている「翠耀会」だ。購買部と食堂をほぼボランティアで運営している。
「食堂ではお弁当を持ってこられない生徒のために、手作りの親子丼やうどんなどを作ってくださっています。少ない人数にもかかわらず、メニューも多く用意され、生徒のことを第一に考えていただいています」と大野校長。文房具などの売り上げも同校に寄付している。
「同窓生といっても、生徒にとっては、自分の母親より上の先輩方になります。ときどき、『お行議が悪いですよ』『その言葉遣いはなんですか』と注意されることもありますが、それも先輩・後輩のよい関係のひとつだと感じています」 |
本当に進みたい進路に導いていける指導を
同校の2009年3月の卒業生は、国公立大に4人、難関私立・GMARCHには47人が合格。大野校長は、そうした数字にはならない要素も多いと話す。
「本校は自分の希望する大学に合格したら、たとえ受かることが確実視されている大学でも、他は受験しない生徒が多いですね。生徒の意思を尊重し、学校としても無理に受験させることはしていません。反面、行きたい大学があり、そのための力が不足している生徒のためには、一人ひとりを大切にバックアップしていきたいですね」
同校では、学校の様子を知ってもらおうと授業参観を実施。同時に教員の指導力向上のため、アンケートを取っている。教員同士も空いている時間に授業を見て、教員同士で感想を書くようにしている。
「先生方へのいい刺激にもなっていますね。いい加減な授業はしていないという、自負を持っている方ばかりですから、本当はもっと見てもらいたいと思っているのではないでしょうか」と大野校長。
集中して勉強できる時間と空間を維持し、勉強の習慣付けを図って、方針を明確に打ち出した同校。「生徒が頑張っている姿を多くの方に見てほしい」と、これからも同校の魅力を発信していく。
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