今年度就任した竹政幸雄校長は、52歳の新鋭。3月までは麗澤高等学校の3年生を受け持つ一教師だった。
麗澤高等学校、麗澤大学を卒業して教師になり、1986年にはイギリスの大学で英語教
育に関するマスターを取得、英語教師としてのキャリアは30年になる。
「元気な学校にしたいと考えて理事長は私を校長にしたのかもしれません。こういうのを抜擢と言うのでしょう」とはにかみながらも、学校の独自性をより全面に出していきたいと改革の熱い思いを語る。
地域に開かれた学校として
麗澤高等学校はイギリスのパブリックスクールをモデルに男女共学の全寮制校として昭和10年に創立した。東京ドーム10個分の広大なキャンパスに全国から集まった生徒だけでなく寮担当の教職員も生活し、時には父母代わりとなってかかわり、教育にあたっていた。しかし、時代とともに平成4年には通学制を導入、現在では寮生の方が少ない。
「通学制にともなってキャンパスを開放し、今では地域に開かれた学校として随分根付いています。珍しい木々があるのでお弁当を持って見に来られたり、おじいちゃんやおばあちゃんが散歩に来られたり。しかし、再度独自性を考え、学校づくりに反映していきたい」と校長は話す。
教育理念は心を育てる「モラロジー」
「本校の独自性を考えた時、モラロジーという教育理念と、モラロジーを実践する教師、そして教育力を持つこの自然あふれるキャンパスの3つが挙げられると考えています」と竹政校長は強く語る。「モラロジー」とは、創立者の法学博士・廣池千九郎氏が学問的に体系づけた知徳一体の教育理念である。
「自然からの恵みや周囲の人々に感謝できる心」、「人の喜びや悲しみ、傷みを共感できる思いやりの心」、「自らの可能性を伸ばし、夢の実現に向けて苦しいときこそ頑張ることのできる自立の心」、これらの心を育て、豊かな人間性を養うことを教育方針とし、その上に必要な知力と体力を身につけ、国際社会で活躍できる人材の育成を目指す。
「私は大学時代も寮生だったのですが、生活すべてがモラロジーの教育と実践の場でした。でも、通学生が多い現在では学校の中で、教師が実践しながら教育する機会を多く持つようさらに努力していきたいと考えています」。昨今教育目標とされる「生きる力」は、同校では創立以来取り組んできたことだと校長は言う。
また、麗澤キャンパスは約46万m2と広大で、1万5000本近くの木々をはじめ、多彩な草花、小動物たちが息づいている。四季折々の表情を見せる生命あふれる自然の中で過ごす日々は、10代の柔軟な心に感受性と感性を育むとともに心を癒す。大きく、高く、清らかに、人間を豊かにする贅沢な環境だ。 |
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中高一貫教育は、「自分プロジェクト」
中学校は、今年で2年目を迎えたばかり。「子どもたちは元気で、休み時間は走り回るので、校舎が狭く感じるほどですよ」と竹政校長は微笑む。
中高一貫教育は、「自分プロジェクト」と名付け、2年ごと3つのステージに分け、
一人ひとりの可能性が開花し、結実する進路学習を展開している。特に国際社会で活躍できる人材を育成するため分析力や論理的に表現する力と英語力がつく授業を重視し実践している。
表現力については1年次で「自分のキャンパスを知ろう」というテーマのもと、グルー
プで調査研究し、まとめて発表する。2年次には「地域を知ろう」というテーマで街の環境問題などについて調べたことをパソコンを使って発表する。
英語の授業は、クラスを2つに分け、それぞれに日本人とネイティヴの教師をつけている。「1クラスは40人弱ですが、そこに4人の教師が入ってるんです。成果はかなり上がっていて、中学1年の終わりに英語劇のコンテストをしましたが、発音が非常に美しく、びっくりしました。高校を卒業する時には、英語で論理的に自分の考えを表現できるようになるでしょう」。校長は目を輝かせる。
コース制導入から10 年
卒業論文は英語で書く国際コース
高等学校は、2年次から進路により4つのコースに分かれる。国公立大学を目指す「文理コース」、私立文系および国公立文系大学を目指す「文系コース」、私立理系および国公立理系大学を目指す「理数コース」、そして英語の学習に重点を置き、私立文系および国公立文系大学を目指す「国際コース」。
「昨年は3年生の担任だったのですが、1クラス30人前後を2人のネイティヴ教師が教え、かなり鍛えていました。週に16〜18時間を英語の授業にあて、卒論まで英語で書かせましたよ。国公立大学への進学率も年々伸びています」。
その他広大なキャンパスには施設が充実し、クラブ活動や行事に生かされている。テニスコート6面、野球場など運動施設は贅沢なほど。
「今後はテニス、ゴルフ、乗馬などに力を入れていきたい」と校長は豊富を語る。広いキャンパスがあるからこそ実現可能なクラブ活動だ。
新校長のもと、今後どのように発展していくのか注目していきたい学校である。
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