改革着手から3年目
着実に歩みを進める
「自主創造の精神の育成」を第一の教育目標に掲げる日本大学習志野高等学校は、日本大学理工学部船橋キャンパスに隣接し、緑豊かな環境にある。この立地を活かして、高3生を対象に理工学部の授業を受講し、単位認定を行う高大連携事業を行ってきた。2年後に新校舎を竣工させる予定で、その際には理工学部のキャンパス内に移転し、施設、設備の最新化を図り、ハード面の改革を達成する。
同校で長年教鞭を執ってきた古澤廣校長は、「日大の付属高校として、これまで順調な生徒募集を行ってきましたが、少子化の影響を受け、個性化や特色ある教育の必要性を実感。5年前から改革に着手しました」と話す。その改革のひとつが先述した新校舎の建設である。
ソフト面においては、1年次から総合的学習の時間を利用して、将来の職業観を見据えるためのキャリア教育に着手、読書タイムの導入と各クラス学級文庫への新聞の配置は、生徒が活字に慣れ親しむ目的で始められた。20年以上続いた制服を今春、モデルチェンジしたことも改革改善のひとつに数えられる。
そして、改革の中心といえる文系・理系あわせて5コース制の導入から3年目を迎える。生徒が進路に応じ、自らの意思によって(ある程度の適性は考慮される)選択するコース制は、自主創造の精神を育成するという教育目標と連動し、進学に対する明確な目的意識を持たせている。
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平均化クラスと5つのコース
5つのコースは、文系のGA(Global and Advanced 総合進学)、NP(National and Public 国公立進学)と、理系のCST(College of Science and Technology 理工学部進学)、GA、NPが設置されている。この5コースのうちから、高2進級時に生徒は希望に応じ、コースを選択する。高1年次においてはコース分化を行わず、「平均化クラス」として、全生徒が同じカリキュラム、同じ教材で学習を行うというのも同校の特徴である。
その理由について古澤校長は、「高1でコース分けをしようとするなら、中学校時の学力によってコースを決めなければなりません。本校には併設中学がなく、ほとんどの生徒が公立中学校からの入学者ですので、中学校時の学力を参考に高校のコース分けをすることはなじまないと考えました。最初の1年間は全員同じスタートラインに立って、自らの進路をじっくりと考えてほしいとの考えから『平均化クラス』を導入しているのです」と話す。
この1年間に職業観を養うキャリア教育が行われ、生徒は将来を見据えたうえでコースを選択するという流れになっている。
各コースの特徴は、文・理系通じて、NPコースは1クラス編成で、あくまで国公立を目指す覚悟が必要だ。というのも同コースを選択した時点で、私大の指定校推薦を受ける権利を失い、いわゆる“滑り止め”のための私大受験をする場合は、一般入試で受験することが条件となっているからだ。
GAコースは難関私大への進学を目指すが、指定校推薦は希望に応じて成績上位者から順に受けることができる。ただ、このコースにも国公立大に進学する者も若干名いる。理系のGAコースでは、3年の週当たりの授業時数が38時間と他のコースに比べ、3時間多く組まれている。また、同コースでは文・理ともに2年次で1クラスを選抜クラスとして編成するが、3年次ではこれを解散する。その理由について「2年生はクラブに集中する傾向が強く、学習面においては中だるみの時期となりやすく、選抜クラスを編成しますが、3年生になれば、おのずと学習中心の生活になりますので、クラスを解消しても選抜クラスを経験した生徒が、全体の牽引役になるのです」と古澤校長。
CSTコースは日大理工学部への進学を前提とし、高3次より大学の授業を週1〜2時間受講できるメリットがある。高2で1年をかけてキャンパス見学会に参加し、12の学科をすべて見学・体験し、高3進級時点では目指す学科も決定しているという。担任も日大理工学部出身の教諭で、さまざまな相談に応じることはもちろん、進学後は同学部でリーダーシップを担える学生の育成を目指している。
今後進む連携強化
日大理工学部との高大連携は、今後ますます進む方向で、古澤校長は「次回の学習指導要領改訂時にカリキュラムの見直しを行うことになるが、その時点で、現在高3で週1〜2単位の連携授業をさらに増やし、将来的には20単位程度まで認めていきたいと考えている」と話した。
多様な進路希望に対応しながら、日本大学の付属校としてのメリットも存分に打ち出したい考えのようだ。
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