新コース制の導入と心の教育を並行
『自分とは何か』を念頭に置いた「自分探し」を原点に、他者とともに学び合う関係をつくることを通じて、自分らしさや物事の判断能力の発達といった人間教育に重点をおいてきた東京純心女子中学・高等学校。心の発達を伴った学習指導は生徒の精神的な育成とともにモチベーションをも充実させ、毎年、難関国公立・私立への合格率を上げてきた名門校である。
6年一貫教育の中で、生徒の発達段階に合わせた3ステージ制を採ってきたが、来年度よりは、さらに生徒の目的に合わせた指導が行えるようにという配慮から、高校では3コース制がシステム化されることになった。
コースはそれぞれの希望大学進路に合わせ、国公立文系・(国公立)理系・私立文系とされる予定。現在の3ステージ制の導入期(中1・中2)と展開期(中3・高1)、完成期(高2・高3)の利点を生かしつつ、進路別に授業を受けられるコース制を来年から実施する。
「年々理系を志望する生徒が増加する傾向にあり、高2でのクラス分けの際には、希望者が許容人数を超える程になっています。しかし、理系進学には、かなりの学力が必要であるということも事実です。そのため、中学生の時に基礎基本をしっかりと身につけてもらってから、高校で3つのコースの内のどれを選択するかを選んでもらうのです」。
そう語るのは、岩崎淳子校長先生。このコース選択に至るまでの展開期の2年は、6年間の内でも最も重要な時期であり、このときに「自分の将来の夢」という課題に正面から取り組んでいくため、高1では宿泊研修を行って、人生についてのディスカッションの時間を取っているのも特徴だ。
「この宿泊研修では、教員と学校にいる時よりも密度の濃い接触ができる好機でもあります。教員が自らの体験を話したり、生徒の悩みをじっくりと聞くことで、生徒のモチベーションを高め、自分のコース選択にはっきりとした意識を持たせることができるのです」。
また、このほかにも卒業生との懇談やコンピュータによる情報検索なども行われ、精神面の充実を図った純心女子ならではの進路指導となっている。
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様々な行事を通じ人間的な成長を促す
このように、進路指導のなかにも心の教育を採り入れた純心女子の指導は、様々な学校内行事のなかにも見ることができる。カトリックの学校らしく、ミサやクリスマス会などの宗教的行事を通して心の糧をいただき、「労作」の授業を通し自ら種を蒔き、自然界のいとなみについて考える。老人ホームへの施設訪問を含めたボランティア活動。イギリスやカナダで語学集中コースを体験し、異文化交流を行い自国を見つめ直す24日間の海外研修。そして1年間の学習活動やクラブ、有志団体なども自分たちの表現したいことを決めて発表し、バザーや模擬店などの売上金をブラジルヘの寄付金とする純心祭の開催など、そのどれもが人間教育へつながっている。
異文化交流では、純心女子の生徒なら毎年でも受け入れたいというほど、海外でも生徒たちに対する評価は高い。ホストファミリーが安心して招く留学生は少ないのだが、生徒全員がそうやって受け入れられるのは、純心女子の人間教育の賜だと言えるだろう。
また、純心祭の発表にも大きな特徴がある。今年度は「OnlyOne」という各々の個性を重視するテーマを軸に、それぞれが思い思いの発表を行っており、シスターたちも心を込めた手作りのケーキを販売するなど、生徒たちだけでなく地域住民からも喜ばれる内容の学園祭である。そのなかには生徒主催のボランティアグループによる車椅子や点字体験、盲導犬や盲導犬利用者の方のお話もあり、普段は気付かない障害者への心配りを再確認できるということで、終日非常ににぎわっていた。
「こういった行事の準備過程や日々の何気ない日常生活のなかで、生徒にはどれだけ自分たちが愛されているかを感じてほしいのです。私たちも親の愛と同じ深さで、生徒一人ひとりの未来に思いを馳せています。そうして、長い人生を充足して生き、最後の一息を終えるときに『幸せな人生だった』と思えるような生涯を歩んでほしい。そう思いながら、シスターや教員は皆、毎日生徒に接しています」。
岩崎校長の言葉通り、愛されて育った生徒たちが、卒業した後も折りに触れ訪ねてくることは珍しくない。学校は彼女らの家庭であり、帰ってくる場所である。その思いが生徒たちの将来において、強い力となっていることは間違いない。
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