和洋国府台女子中学校のキャンパスは田園地帯が広がる市川市の高台に位置している。校舎は赤い屋根にクリーム色の壁。レンガ敷きの中庭を中心に、アーチ型の回廊がぐるりと囲むヨーロッパ風の低層建築である。学校全体が明るく開放感にあふれ、生徒たちが楽しくのびのびと学べる雰囲気だ。
通学には、JR「市川」駅と「松戸」駅からはスクールバスが運行されており、地元千葉県だけでなく、東京都や埼玉県から通う生徒も多い。
生きた英語を学ぶ
今年1月20日、中学入試の第1回目に同校を受験した生徒数は1,423名。昨年の1.5倍にも上った。歩留まり率も予測を大幅に超えた。募集定員の8クラス280名に対し、349名が入学。昨年の9クラスからさらに1クラスを増設し、10クラスとなった。
この人気の要因を高橋邦昌校長は、「本校の教育方針と地道な努力の積み重ねを評価していただいたのでは」と話す。同校は建学の理念である「和魂洋才」の精神を現代に引き継ぎ、茶道や邦楽など日本の伝統文化の学習を通じた「心」の教育と同時に、未来を先取りした学習指導にも力を入れている。そのひとつが、「生きた英語」を重視する教育だ。英会話の授業をネイティヴスピーカーが担当するだけでなく、生きた英語に触れる機会を多く設けている。日本にいながら本場の英語を学べるプログラムとして、3年生の希望者が参加する「ブリティッシュヒルズ」2泊3日の疑似留学体験がある。また、4年前からは冬休みにオーストラリアの姉妹校から先生方を招き、学園の佐倉セミナーハウスにおいて3泊4日の語学宿泊研修を実施している。「日本在住のネイティヴスピーカーではなく、いま現在の英語を話す先生方から真に生きた英語を学ぶことができます」。
研修では中学1年から3年までの希望者が、先生方と寝食を共にしながら英語オンリーの生活を送る。レッスンは1日5時間。1人の先生が17人前後の生徒を指導する。昨年は、ESL(English as Second Language)の指導資格を持った先生を含む4名が来日。参加を希望する生徒が多いために2回に分けて実施された。
「毎年参加するリピーターが増えてきています」と高橋校長。
中学卒業後の春休みには、8日間のイギリス研修。さらに高校進学後はオーストラリア名門女子校への短期・長期留学の機会なども用意されている。
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科学的への関心を目覚めさせる
同校では、2005年度入学の中学1年生から理科の授業時数を1時間増の週4時間とし、観察・実験の授業を大幅に増やした。その数は年間35項目。毎週2時間を充てている。
「女子だから理数は苦手というのではなく、実際のものに触れながら自分たちのペースで楽しく学んでもらいたい」と高橋校長。
1年生の理科T分野は、まず最初に液体窒素を用いて、状態変化と極低温の世界を体験させる。バラの花が一瞬で凍る様子は生徒たちの興味を引き付け、学習意欲を高める。次の授業では安全面に配慮し、ガスバーナーやマッチの取り扱い方を丁寧に指導する。実験のなかには「べっこう飴づくり」や「カルメ焼き」など、お菓子づくりもプログラムされており、生徒に大好評だ。実験は1グループ4人で行うため、お互いに人任せでは先に進めない。生徒一人ひとりが主体的に参加する。
その結果、入学当初は2割ほどしかいなかった「理科好き」が、1年後には6割以上に増えた。さらに、実験の結果を予想したり、失敗したときには、その原因を突き止めようとするなど、科学的に思考する態度も身についてきたという。
また数学にも重点を置いている。英語と数学の授業は、中学3年から習熟度別少人数編成で行われる。夏期休暇中には、普段の授業よりもレベルアップした特別講座を開いて、数学への興味を深めている。さらに生徒全員が数検を受験。昨年はおよそ半数が3級に合格。21名が準2級に合格し、6名が高校3年レベルである2級の一次試験を通過した。
高橋校長は学校説明会で、資料のひとつとして「男女別学推奨の特集記事について」と題する小冊子を保護者に配布した。これは、ドイツで多くの人々に読まれている週刊政治雑誌「シュピーゲル」(2004年5月17日号)の特集記事を高橋校長が翻訳したものである。記事では、男女別学の利点を教育的見地から実証的に示し、別学の復活を推奨している。
例えば、一般的に「理数は男子の方が得意」と言われているが、実際には、教科の得意不得意は性差以上に個人差が大きい。ところが生徒自身が「教科の偏見」に囚われているため、男女共学では女子が男子との競争を回避する傾向がある。これに対して記事では、別学クラスで女子が生来の能力を十分に発揮している事例を紹介している。その他、異性の目を気にせず学校生活を送れる点や、学校行事にリーダーシップをもって取り組める点など、別学の利点は多いとしている。
文部科学大臣賞を受賞
同校では、日本女性としての品格を身につける人間教育を根底に据えたうえで、生徒の能力を引き出し、知性を磨く教育を実践している。まさに女子校ならではの教育である。3月3日、同校は「社団法人日本縫製機械工業会主催ホームソーイングコンテスト」において、文部科学大臣賞を受賞した。このコンテストには高校のファッションテクニックス科の生徒たちが作品を出品した。そのいずれもが「見かけの華やかさだけを追わず、基礎的な縫製技術が極めて高く、細かなところを丁寧に仕上げてある」と評価され、学校賞として授与されたのだ。
ここにも和洋国府台女子中学校・高等学校の教育の成果が明確に示されたといえる。
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