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中学・高校受験:学びネット

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サレジオ工業高等専門学校

 
  「ものづくり」の意欲を尊重し、愛ある専門技術者を養成する
 
学歴重視、偏差値教育の弊害がますます深刻化する中で、注目されているのが高専。「ものづくり」に関心を持つ学生が、自分の可能性を伸ばせる教育機関だ。今回は、全国唯一のカトリック・ミッション系の私立高専、サレジオ高専に伺い、「アシステンツァ」という理念に基づいた人間教育と高専の社会的役割や可能性について、同校の鈴木勝重校長にお話を伺った。

校 長: 鈴木勝重
住 所: 〒194-0215 東京都町田市小山ケ丘4-6-8
電 話: 042-775-3020(代表)
交 通: 京王相模原線「多摩境」駅下車、徒歩約8分、JR横浜線、京王相模原線「橋本」駅下車、多摩車庫行き「響きの丘」バス停前
学生数: 793名(専攻科20名含む)
(2006.11.1現在)
ホームページ: http://www.salesio-sp.ac.jp/

 

「常に学生のそばに」が
創立以来の一貫姿勢

サレジオ高専は、前身は昭和10年の設立、創立71周年という伝統校だ。平成17年4月に移転したという、東京町田市の多摩境地区にあるキャンパスを訪ねると、緑あふれる美しい敷地内に、先進的なフォルムの校舎が建ち並んでいた。中でもひときわ目を引くのが、三角形に切り立つ屋根のサレジアンホールだ。その白い壁に掲げられた十字架が、ミッション系スクールであることを思い起こさせる。日本全国の高専の中で、カトリック・ミッション系は同校だけ。「技術を通じて、ひとりでも多くの人の幸福を願い、社会に貢献する心豊かな人間を育成する」ことを理念としたのが、創立者ヨハネ・ボスコ。彼が掲げた「アシステンツァ」の精神は、今も息づいており、鈴木校長が4月に就任した際にも、この理念の再確認をまず徹底したという。

「『アシステンツァ』はイタリア語で、常に寄り添うという意味の言葉です。教育者は、常に学生のそばにいることが大切。四六時中そばにいるというだけではなく、常に存在を感じられて、迷ったり不安になったりした時には相談にのってあげられることです。どんなときでも、自分を思ってくれる人がいるという安心感を与えてやることが、とても大切なんです」

関心のある分野でこそ
学生は大きく伸びる

日本に高専が誕生したのは、今から44年前のこと。産業の発展に即応した優秀な技術者養成のために、産業界の要請によって発足した、技術立国日本を陰で支えてきた高等教育機関だと言える。中学卒業生を5年間の一貫教育で専門技術者へと育成するもので、工学系や商船関係などの専門技術の教育を中心としている。多くの高等学校が大学進学を目標に、受験のための学習を中心としているのに対して、実践的な技術の習得を重視しているのが最大の特長。500時間にも及ぶ実験・実習・制作関係の授業を通して、高度な実力を身につけていく。

同校には、電子工学科、電気工学科、情報工学科、デザイン工学科の4学科が設けられている。いずれの科の卒業生も、高い専門能力で実社会から注目されており、就職率は100%。だが、就職するだけが進路ではない。希望すれば、同校の専攻科課程で2年間学び、大学卒と同じ学士の学位を得ることもできるし、他大学の3年生に編入することも可能だ。

「今の中高生を取り巻く状況には、さまざまな問題がありますが、偏差値教育の弊害も深刻だと私は思います。個々の個性や将来の夢は二の次で、とにかく有名大学に合格することを目標にするという教育が、正しいとは考えられない。偏差値ではなく適性に合った進路でこそ、人はいきいきと成長していけるはずです。そして、そのための進路の一つが、高専だと言えます。ものづくりが好きだ、ものを作る技術を身につけたい、という思いがあるなら、それを伸ばしてやる。更に高度な技術、知識を養いたいという気持ちが芽生えたら、高専で学んだことを土台にして、大学への進学や編入で、自分の可能性をさらに広げていく。そういう方法もあるということを中学生や、その保護者、学校の先生方に、ぜひ知っていただきたいのです」

専門技術者として人生を歩いていくか否かを、中学卒業時に決定することは難しい。しかし、好きなことを学び、好きな道で生きることが、幸せな生き方につながるのは間違いないだろう。そして、ものづくりへの関心や素養が、「とにかく有名大学へ」という一般的な観念で置きざりにされてしまうのは、本人にとってはもちろん、日本の産業界においても、もったいないことだというお話には、なるほどと納得させられた。「高専という選択肢を知って欲しい」という鈴木校長の切望に応えるかのように、今年の学校説明会には、昨年の1.5倍の参加者があり、大変盛況だったとか。激動する社会の中で、人生観や教育意識も、徐々に変わりつつあるのかもしれない。

日本の技術力を認識する
──それも大切な国際交流

全世界20ケ国、54ケ所に系列校がある同校では、国際交流にも積極的だ。単に英語教育に力を入れるというようなことに留まらず、「技術」を通して会話する、「技術」を介した相互協力という姿勢が特徴だ。今年も、10月にはフィリピンのマニラにある姉妹校から、学生5人と教師2名が来校した。逆に来年の3月には、同校の学生と教師がマニラに行く予定だという。

「今のマニラは、20年前の日本のような状況で、技術レベルの差は比較にならないほどです。だから、同じアジアの国として、向こうは日本を誇りにしているし、憧れの国です。そして、同じような技術進化を目指している。そういう希望に対して、私たちに何ができるのかを考えることが大切です。どんな技術が必要とされていて、どんな貢献ができるのかを、日本の学生と教師が実感すれば、日本の国や企業の国際的立場も理解できるでしょう。ものづくりという実質的な側面だけではなく、技術革新国の役割を知ることも、国際交流の大きな意義なのです」

確かな技術教育を通して、創造性に富んだ国際的な視野を育成する。それもまた、キリスト教の精神に基づく同校の教育理念である。鈴木校長は、「神は愛なり。技術は人なり。真理は道なり」という言葉を口にされた。高い技術を持っていても、それを使う側の人間性が高くなければ、技術進化に意味はない。人間はなぜ存在し、どこに向かって進んでいくべきなのかという考え方が、しっかりと確立されていなければ、技術者が社会を進化させる存在になるとは限らないのだ。

こういう意味を考えれば、キリスト教の精神と技術者養成という組み合わせは、当然のように思えてくる。本当に人の幸せのために使われる技術、それを駆使できる技術者が巣立つのは、きっとこういう場所なのだろうと思わせる空気。それが、サレジオ高専の広々としたキャンパスに確かに満ちていた。

 
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