たゆまない進化をめざし
様々な改革を続ける
閑静な住宅街の丘の上に、賢明学院中学高等学校のキャンパスがある。『気持ちのいい挨拶では日本一の学校』を目指す大原正義校長の教えが生徒たちに自然に浸透し、キャンパスのあちらこちらで元気な声での挨拶が交わされている。
「一度立ち止まり、相手の顔を見て挨拶するのが基本です。ほぼ全員ができるようになってきたので、次はそれに加え、笑顔で挨拶を交わすようにと指導しています」
大原校長のこの教えは、賢明学院が育む4つの力のうち、『人と積極的に関わり生き抜く人間力』や『将来必要となる社会人基礎力』を養う一環にもなっている。また、品性や礼儀、マナーといった躾面も重視。礼拝や集会などで集まる際も、大声で騒ぐことなく生徒全員が静かに待っているという状況だ。
残り2つの力のひとつが『国際理解力』。海外研修やイングリッシュラウンジ、E.S.S.部による英語での昼休み番組制作、中高生のスコア型テストの中で最大のテストとなるGTEC for STUDENTSの採用など、英語に触れる機会は多い。さらに中学では、幼少期から親しみ、学んだ英語学習を中学入試であきらめさせず、より成長してもらうために受験の選択教科に英語を導入し、注目を集めている。
一方、高校では2年生から「文理」クラスに分かれて授業を受けるが、2017年から英語学習に比重を置く、グローバルクラスを設置。国内の外国語系大学への進学はもとより、留学や、海外への大学進学を希望する生徒を強くバックアップするカリキュラムとなっている。
「決して改革の歩みを止めてはいけない。たゆまず進化し続けることが大切なのです」
進化の一環として、今年度は中学のコースを一新。高度な問題発見・解決力を先進的な授業で身につけるプロヴィデンスコースと、徹底した基礎学力定着及び行事やクラブなどでも活躍するグレイスコースの2コース制になり、意識の高い新入生が多数入学した。
「表現するICT」で
全国大会3位を達成
移動式プロジェクターや
学習支援コンテンツの製作も
2020年度大学入試改革に向け、多くの学校がどのような手段を講じるかを模索する中、賢明学院では、今までの取り組みを統括したi3(アイキューブ)プロジェクトを2015年度よりスタートさせている。i3とは「よりIntelligence(知的)に,よりInterest(興味・好奇心)に,よりInteractive(相互)に」をコンセプトにしたプロジェクトで、ICT教育を活用して授業の拡張を行うもの。ICT教育と言えば単にタブレット等の電子機器を使用する授業をイメージするが、賢明学院は他校とは少し異なる教育法を採っている。
「本校では『書くICT』『表現するICT』『操作するICT』の3つの取り組みを、通常授業の一環として実践しています」
そう語るのはICT教育推進センター長の歌丸茂雄先生。『表現するICT』ではクエストエデュケーション(教育と探求社主催)を採用。課題についてブレインストーミングやディスカッションを行い、パワーポイントなどで資料を作成、より良いプレゼンテーションを行う力を身につける。現在3年連続でプレゼンテーションの全国大会へ出場、初出場となった中学一年が作家の佐藤愛子氏について探究し、進路探究部門で全国3位の偉業を成し遂げた。
『操作するICT』では、歌丸先生自らが移動式電子黒板機能付きプロジェクター(通称アイキューブカート)を製作。教室間でスムーズなプロジェクター移動を可能にしたことで、教員が素早く準備でき、新しい形の授業展開がどんどん広がり始めている。
また、歌丸先生はタブレット端末をフル活用する、賢明学院独自の学習支援コンテンツのプラットフォームを構築しようとしている。
「今年度から、各教科で学習動画『i3movie』の配信を始動させます。これは、日々の授業に密着した、授業の問題解説や学習内容のまとめの動画を各先生が作成し、「分からないをゼロ化」する復習教材とします。さらに『反転学習』・『アクティブラーニング』型授業のベースとなるように動画を作成、通常授業を拡張する中で、生徒の学力向上に生かしていく予定です」。実験段階での生徒からの評判も上々だそうで、成績の底上げが期待されている。 |
「書くICT」教育ツールで最優秀賞
取り組み1年目で受賞
『書くICT』ではNOLTYプランナーズが発行するスコラ手帳を利用している。
「書くICTとは情報や意思伝達のための書く能力です。2020年の大学入試改革でも必要とされる力ですが、小論文や作文での書く指導は、書くための「正解」があり、毎日書くには不向きです。手帳であれば書くことは自分の日常のことでいいので、とにかく書くことに集中できますね」
一般的に手帳を半年後に使い続ける人は手帳を買った人の4割程度だそうだ。教員が強制した状態ではそれよりも短くなると考え、生徒には“だいたい”でもいいから書くように伝え、教員には生徒に書く強制をせずに、自発的に書き始めるまで待つことが大事だと促した。配布された時には何も書かなかった生徒も、手帳の効果を発信している『帳活』新聞を読み、初めてみたところ、思ったよりも管理が楽なことに気づき、続々と書き始めるように。強制しない、“ゆるっ”とはじまったこの『書くICT』の取り組みが授業の振り返りにつながり、生徒の成績が全体的に底上げされる結果に結びついたのだ。
このスコラ手帳は全国で930超の学校が導入しており、NOLTYが主催する全国手帳甲子園も毎年開催されている。賢明学院がこの『書くICT』の教育ツールとして「学校手帳取り組み部門」で参加したところ高い評価を得て、取り組み一年目で、2015年の最優秀賞を受賞した。
賢明学院ではすべての教科の授業にこのICT活用教育を結びつけられるよう、i3プロジェクトに取り組んでいる。この独自の先進教育が、賢明学院が育む4つの力の最後の一つ『未来実現力』の育成の一端を担っている。
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