自治自立と良心のもとに行動する生徒を
育てる同志社スピリット
敷地面積約8万平方メートル。甲子園球場グラウンドの約6倍の敷地面積を誇る、雄大でゆとりのある学習空間。豊かな緑に縁取られた煉瓦色の壁が新しさと懐かしさを見事に融合している、それが同志社香里中学校・高等学校を訪れた人の第一印象となる。
同校の校長として今年度から生徒や教員たちを束ねる核となるのが、福田耕治校長だ。
「愛をもって人と接し、何事も愛をもって行動するー。このことを私は常に生徒に伝えています。『愛』という言葉が難しいと感じる生徒には、「好きになろう」と言い換えることもあります。愛をもつこと・好きになることは、校祖である新島襄が目指した『良心を育む』第一歩なのです」
自治自立の精神をもち、良心のもとに行動できる。つまり自分で考えて判断し、信念をもって前進していく人間。それが同志社スピリットを持つ人であると福田校長は語る。
この同志社スピリットを磨くための心の訓練の一環にもなっているのが、キリスト教精神を学ぶ礼拝をはじめとした聖書の時間や、ボランティア活動、国際イベントへの参加など。こういった時間では教科書に載っていない部分、勉強ではないところを指導する。その中で生徒は自由に考え、疑問点については自分たちで話し合うことも多い。
「同志社スピリットは大学でも学ぶことができますが、礼拝は自由参加になる上、高校時代よりも参加は少なくなります。本校では、他校から同志社大学へ入学した生徒とは異なり、最初から同志社スピリットを身に付けていることで、大学では学生たちをまとめる核になる力のある人材として育つことが可能です」
また、現在の校舎のある土地は、林を開拓した場所だったが、近年は敷地の側まで住宅街がせまっている。最寄り駅からこの住宅街の中にある通学路を、毎朝20分近くかけて徒歩で通学してくる生徒が多い。そのため、自然と近隣の住民との触れ合いや関係性は濃くなり、生徒たちのマナー向上は必須となっている。そこで生徒会・自治会が中心となり『通学マナー向上プロジェクト』に取り組み、通学時の注意点を示唆、啓発ポスターを掲示するなどして、自分たちでより良い学校生活と学習環境が作れるように、生徒自身が努力をしているのも特徴だ。
自由な考えを伸ばし
問題解決力を育む教育
中学校では将来の学びに欠かせない確かな基礎学力と、人格形成のための様々な学習機会を取り入れている。中でも特徴があるのが総合的な学習の時間として行われている『リベルタス』だ。1年では国際理解学習、2年は作文指導、そして3年では様々な職業のプロを招き、実際の現場での話を聞くキャリア教育などが行われる。高校ではさらに礼拝や聖書の時間、ボランティア活動などを通じた、人格形成を重視した学びが特徴だ。また、進学志望先が理系・文系に関わらず、相互の科目を選択でき、広い知識力を養うことが可能。
「一般的に教師の一方的な指導で、成績を伸ばしていく学校がありますが、同志社香里では、生徒にのびのびと意見を述べさせ、自由な中で個々の意志を育みながら、問題解決能力を自然と育成していきます」
それが顕著に表れたのが、昨年夏に実施された第8回高校生模擬裁判選手権・関西大会である。架空の事件を題材にし、参加校の代表者が検察側、弁護側に立って法廷で弁論技術を競う大会で、大阪地方裁判所を会場にして開催された。参加者には関西地区でもトップクラスと呼ばれる進学校の生徒も多い。この大会への出場希望者を校内で呼びかけたところ、夏休みに練習を行うにも関わらず多くの生徒が参加。ハードな練習を乗り越えて本番で見事優勝、栄冠を手にすることに成功したのだ。日本弁護士連合会主催の本格的な開催だけに、優勝するのは非常に困難だったものの、法学部進学を視野に入れている生徒だけでなく、理系コースの生徒も参加。全員が自信と実力を手に入れた。 |
「校内のハード面は充分に整いました。あとはソフト面の充実です。厳しさも楽しさも教えることで、学校に通うことの魅力を生徒たちに教えていけるよう、教員には話しています」
そのために、生徒・保護者・教職員の連絡・連携を密にし、人間同士の触れ合いを大切にしている。これは、福田校長が学生時代から取り組んできたレスリングを通じ、世界40カ国以上で人とのコミュニケーションを図ってきた経験から、顔を合わせて話すことの大切さを伝え続けてきたためでもある。
そして、クラス担任・クラブ顧問・校務分掌すべてを専任教員が担っているからこそ、そのようにきめ細やかな対応ができるのも同志社香里の特徴のひとつである。
その結果、学校評価アンケートでは、90%を超える生徒が「学校が楽しい」、「この学校に入学して良かった」と答えている。特筆に値することであろう。
現在、同志社香里中学校・高等学校から同志社大学・同志社女子大学に進学する卒業生は95%以上(今春は97.7%)。医療系などの同志社大学に無い学部への進学を希望する生徒以外は、ほとんどが系列大学へ進学している。こうして長い時間をかけて同志社の考えを身につけた卒業生たちは、現在、国内・海外で力を発揮し続けているのだ。
|