スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)とは、゛英語教育を重点的に行う学校を指定し、英語教育を重視したカリキュラムの開発、一部の教科を英語によって行う教育。大学や海外姉妹校との効果的な連携方策等についての実践的研究を行う゛ことを旨とし、文部科学省が指定する事業である。平成14年、全国16校を指定して開始された。
満を持して企画書を提出
SELHi事業は年々関心が高まっており、3年目となる今年度は100校余りの申請があった。その中で指定を受けたのは35校。西日本で新規に指定校となったのは、滋賀学園を含めて2校という狭き門だった。
滋賀学園では、2年前からSELHiに参画する計画があったが、準備を万端整えてから申請すべく、その年は見送ることにした。
その後、アドバイザーに国際教育部の森実先生を迎え、英語科の近藤芳治先生を中心に、教師が一丸となって取り組んだ。
「今年のSELHiは、とても高いハードルでした。3・4時間かけて、何回もミーティングを重ね、企画を練り上げました。これだけやったのだから、仮に申請が通らなくてもSELHiを超えるものが出来たのだから、と覚悟を決めて認定を待ちました」と近藤先生。
満を持して提出した企画が認められ、初めての申請で指定を受けることができたのだった。
徹底した音読指導に特色
提出した研究課題は、次の3点。
(1) 国語科と連携し徹底した音読指導による表現力育成プログラム開発。
(2) 高度な発信スキル育成の研究:ライティング教材と評価方法の研究とプレゼンテーションの指導法の研究。
(3) 教員の自己啓発を個別に行うプログラム(個人大学院と呼ぶ)の研究。
「(1)の音読指導が注目されたのではないでしょうか。一般的に行われている英語の授業は、英語を日本語に直して理解させる訳読式です。この方法では生徒の口から出るのは日本語です。それは日本語の勉強でしかありません。言葉は使わなければ身に付きませんから本校では、まず英語を耳で聞き、口に出す音読を徹底させています。最終目標は、英語での自己表現なのです」と森先生は語る。
英語を使って自己表現が出来るためには、まず母国語である日本語で自己表現が出来なくてはならない。そのために国語科とも連携し、自己表現能力の開発に力が注がれている。
具体的な例として、夏休みに校内でスピーチコンテストを開催。
まず一学期の国語の時間に、筋道を立てて考えを展開し、日本語にまとめる。次にそれを英語の時間に英訳し、発表するというものである。
|
|
大きく変わった英語の授業
英語の授業も、去年までとは一変しているという。実際の授業がどのように変わったか、近藤先生に聞いた。
「50分、英語だけで授業をしています。それまでは訳読式の授業しかやってきませんでしたから、最初は授業の台本作りから始めました。出来上がった台本を森先生にチェックして貰うのですが、何時になろうと台本が完成するまでは家に帰りませんでした。英語を聞き、英語を話す生徒参加型の授業は、生徒の反応が今までとは全然違うのです。生徒だけでなく、教師の私も『楽しい』と思える授業が展開できました」。
生徒は新しい授業に目を輝かせ、去年に比べて格段にモチベーションが上がっていることを実感したという。
「教員として、いろいろな仕事はありますが、まずは本位の英語で勝負できるよう、個人のスキルアップのための課題を設け、2学期からスタートさせます。自己満足の研究でなく必ず生徒に還元できるよう、勉強会をしています」と意欲的に語る近藤先生に、森先生はこう付け加えた。
「今までのやり方を180度変えられた先生を、私は尊敬しています。若い先生は、変わることを恐れませんね。少々の失敗は取り戻せます。いくらでも改善できるのです」。
『2005年、滋賀学園は進化する』
「滋賀学園は、今もどんどん変わっています。進化しています。下地はきちっと出来ています。『変えたい』生徒、『進化したい』生徒、英語は苦手でも意欲の固まりのような生徒は、必ずサポートします」と言い切る両先生だった。
2005年にはスポーツコースが新設される滋賀学園。学校全体が進化の前の胎動を始めているようである。
|
|