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時間を有効活用し
可能性を拡げる生徒たち

　JR学研都市線の長尾駅から徒歩８分、閑静な住宅街に長尾谷高等学校の枚方本校はある。他に梅田校、ナンバ校、京都校、奈良校があり、各校では必修科目のほかに美容コース、歴史散策講座、環境講座など特色を出したカリキュラムが準備されている。生徒は所属校以外の各校の講座も自由に受講することができる。

　梅田校では昨年から「特進クラス」が設置され、現在28名が受験対策に特化した授業を受けている。同クラスで数学担当の中井真也教諭は、「関関同立などを一般入試で受験をする生徒にとって、ひとつの効率的な学習スタイルを提供しています」と、単位制・通信制ならではの時間的余裕を生かしたクラスであることを強調する。

　全日制では通学に費やす時間が少なからず受験生の負担となっている。そのうえ、予備校などに通えば、移動時間でさらに負担は増す。そのため、「受験勉強に専念したいと考える有名進学校から高３になってから転入してくる生徒もいます」というのは、右田辰生校長代理。

　こうした時間を自由に使えるメリットは受験対策以外でも注目されている。現在、枚方本校にはバレリーナの養成所に通う生徒や、お笑い芸能の研修生といったいわば“ダブルスクール”という選択をした生徒もいるが、無理の無い高卒資格の取得に向け、レポートの作成に励んでいる。

　また、昨今は１時間でも多くの練習時間を持ちたいアスリートを目指す生徒にも、単位制・通信制高校のメリットが認識されるようになった。

　卒業までの流れを見てみよう。高卒資格取得のための必要単位数は74単位以上（全日制は90単位以上）。これを３年以上かけて取得する。入学後、チューター（担任）のアドヴァイスを受けながら、生徒は自分にあったカリキュラムを選択するが、普段の学習はレポートの提出が中心となる。科目により、最低限のスクーリング時間数が決められているが、それほど多くはない。

　たとえば、「国語表現１」の授業数は半年間で全12回の授業が行われるが、このうち必要出席時間数は2時間である。無論、全授業を受講することもできるが、その判断も生徒自身に任されている。

　単位認定試験は年２回行われるが、レポートをきちんと提出している生徒にとって合格することは難しくない。

学ぶ意欲を見守る姿勢と
安心して学べる環境

　既述の通り、単位制・通信制高校では学校へ行く機会は極めて数少ない。そこで生徒一人ひとりに問われてくるのが、自主性、自己管理能力である。そのため、入学、転・編入に際しては、学習に対する意欲、態度を重視した面接が行われる（中学卒は数学と国語の学科試験）。

　右田辰生校長代理は「ほとんどの生徒は入学試験前に保護者と見学に訪れます。その時、各校の担当者より学校のシステムをよく説明し、納得のうえ入試に臨んでいただいています」と話す。

　見学に訪れた保護者からは「学校で過ごす時間が少ないため、交友関係を持てるか」といった質問を受けることもあるというが、それに対して右田校長代理は次のように説明している。

　「校外学習や行事を各校で数多く設けており、どの行事に参加するかは生徒自身に任されていますが、こうした場で生徒間交流は活発に行われていますし、また、クラブ活動ではもちろん、比較的スクーリング時数が多い体育の授業をきっかけに交友関係が結ばれていくようです」と。

　たしかに、学校という建物の中だけが人間関係を育む場ではない。きっかけさえあれば、どのような場でも交友関係は築いていけるものだ。

　ただ、生徒の中には中学時代などに友達との関係で深い葛藤を経験し、人との交わりに自信を失っている生徒もいる。そうした生徒にも長尾谷高校は広く学びの場を提供する立場から、行事やイベントへの参加を強制するものではない。あくまで生徒を見守り、学習を手助けすることで高校卒業資格取得をサポートするというスタンスである。

　スクーリングでの授業も１科目20名程度のクラス編成となっているため、大勢の中に身を置くことに慣れていない生徒にとっては、安心できる環境といえる。こうしたスタンスが在校生、卒業生に認められてか、同校への入学者は口コミによるケースが多く、兄弟で入学、卒業していくこともあるという。