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中学・高校受験:学びネット

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愛徳学園中学校・高等学校

 
  今こそ光る、命をみつめる教育 内外の声を傾聴し改革にも着手
生命の尊厳が軽んじられる風潮の中、愛徳学園中学校・高等学校は特にこの1年、命をみつめる教育に重点的に取り組んできた。「寝た子を起こす」との批判もある性教育に敢えて踏み込んで着実な成果を上げ、闘病中の同世代の葛藤を伝え聞く講演会では深く生きることを学んだ。いわば時代が欠落させた寛容さを補う教育が実践されている。改革の一環として学校評価制を導入し、塾をはじめ内外の声を学校づくりに生かす動きも見せている

校 長: 能美 啓子
住 所: 〒655-0037 神戸市垂水区歌敷山3-6-49
電 話: 078-708-5353
交 通: JR「舞子」駅からバス「学園正門前」下車・JR「垂水」駅からバス「愛徳学園前」下車
学生数: 中学校 145名
高等学校 154名 (2007.5.1現在)
ホームページ: http://www.aitokugakuen.ed.jp/

 

昨年来、報じられてきた数々のいじめ問題や、それに起因するこどもの自殺に、学校や保護者が神経を尖らせていることはご承知の通りである。中高生にもなると、いじめの当事者関係が複雑で一概に特効薬のような指導法、解決法はない。特に最近ではインターネットや携帯電話を利用したいじめが深刻化しており、年齢によってはそうしたツールの利用自体を抑制する意見も出されている。だが、こうした措置は所詮、“水際の保護”でしかない。

他人を傷つけたり、自らの命を絶つことが繰り返されない教育がいかに叫ばれようと、そうした教育とは結局のところ生命の尊厳について時間をかけ着実に教え導くこと以外にはないの。愛徳学園中学校・高等学校ではこれまでもカトリックのミッションスクールとして、命を育み守る教育を実践してきたところだが、昨今の社会状況に照らし、この1年特段に力を入れて命の大切さを再認識させる取り組みを行っている。

「今、生きていることは奇跡なんだ」

中学1年生を対象にした「性教育デリバリー授業」では、助産師を招き(1)助産師の仕事内容 (2)出産場面の説明 (3)胎児の成長する様子 (4)命が生まれる確率などについて講義を受けた。新生児を模した人形を抱いて、自分自身がかつて守られる客体であったことを実感し、次に自分自身と異性の体と心を知る。そして、もはや中学生となった自分が、自身と他者の命を守る主体であることに気づかせるというもの。氾濫する性情報に惑わされることなく、健全な性に関わる正しい知識を得ることで命の大切さを学ばせる取り組みである。

受講後の感想として「7兆分の1の確率で生まれてきたことに感動しました。今、生きていることは奇跡なんだなあと思いました」や「今、自分がこの顔で、この体で生きていることは当たり前じゃないことが分かりました」など、自分自身が2人といない、かけがいのない存在であることを率直に表現したものが多かった。 

中学3年生〜高校2年生は「性感染症への理解と予防」について、婦人科医師による講演を聴いた。一般に、性交渉の体験年齢は低年齢化しており、それに伴いHIVをはじめとする感染症や人工妊娠中絶が中高生の間で増加傾向にあるとされる。また、インターネットなどから誤った避妊、感染予防情報が流されることも中高生の被害を大きくしていると指摘されている。

講演では性感染症がどれほど命を脅かすものであるか、また、中絶が自らの体を傷つけ、胎児の命を葬る行為であることを実際例から詳しく伝えた。事前学習〜受講〜事後学習という流れの中で、性行為や妊娠に対し責任ある自己決定ができるよう導いている。
講演を聴いた中3生は「よく考えて行動しなければと思いました。最後に傷つくのは女性のほうで、自分自身がしっかりしないといけない。性感染症のことは全然理解していなかったし、本当の事が聞けてよかったと思います」と。また、別の生徒は「医学的な話から自分の体、命の大切さをあらためて実感することができました」と感想を述べている。
こうした講演のほか、ホスピスの現場からチャプレン・カウンセラーを招き、生きたくても生きられない同世代の心の叫びを聴く講演会も開催した。限られた命を最後の瞬間まで希望を持って生き抜いた17歳の高校生の話や、自分より先に退院していく人を妬んでしまう悲しい気持ちをカウンセラーに打ち明けた全身麻痺の青年の話。それらを通じ生徒らは「今、与えられている命を大切に」というメッセージを受け取ったことだろう。

自分自身を大切にできなければ、他者を大切にすることはできない。生徒一人ひとりに、自らがかけがいのない存在であることを意識させ、すべての友人やそれに連なる人々にとっても同様であることを、日々確認する実践が行われている。

内外の声に耳を傾け 学校改革へ

変化を好まず、上品で清楚なシスターのいる学校――愛徳学園にはそうしたイメージがあるといわれてきた。同校が今年、学習塾を対象に行ったアンケートでも「どちらかというと、おとなしいタイプの子に勧める学校」や「悪いイメージはないが、地味で目立たない学校」「平穏な学校生活が送れる半面、児童・保護者に(勧めるだけの)インパクトがない」といった意見が多かった。

能美校長は「厳しい意見をいただきましたが、学校改革を行っていくうえではどれも貴重なご意見」と真摯に受け止めている。女子校の人気が低迷する中、同校の生徒数も減少を続けている。少人数で家庭的な雰囲気の中で、きめ細やかな指導が可能な点は評価されているが、校長としては内外の声を聞き改革すべきは改革して、生徒数を増やしたい考えだ。

その第一歩として、今年初めて学校評価制を導入。在校生とその保護者、教職員、卒業生に対しそれぞれアンケートを実施した。「現在、委託先が結果をまとめている段階ですが、実施したからには結果を活用したい」と、改革に向けて能美校長に迷いはない。
在校生向けアンケートでは、(1)学習指導について、補習や休暇中の学習支援の充実度、教材、学力診断テストについて、教員の熱意、魅力など16項目、(2)生活指導面ではいじめなどの問題に適切な対応を行っているか、カウンセリング体制が充実しているか、服装や目上の方への指導は実施理由がよくわかるかなど10項目が並んだ。ほかに(3)進路指導では個別相談への対応や指定校推薦枠の充実度、センター試験や推薦入試の利用希望など具体的な質問がなされた。保護者には受験校の選択動機について尋ね、同校の教育方針、学校行事、校風についての現状認識および、それを重要視するかどうかについても聞いている。
また、授業時間数も土曜日の授業を徐々に増やしているほか、1時間目が始まる前に30分の特別授業を実施。春休みの講習も始めた。どちらも現段階では任意参加制だが、今後は朝の特別授業も系統立てて行っていくという。

キリスト教主義に基づく学校として、これまで派手な宣伝は一切行わず、在校生や卒業生の口コミによって生徒を確保してきた。実際、卒業生から感謝の手紙が送られてくることもしばしばで、社会人となっても繋がりを持ち続けるOGも多い。しかし、より多くの生徒数の確保は創立母体である愛徳カルメル修道会が目標とする「必要に迫られている人々への奉仕の精神」を伝え続けるうえで避けて通れないとの判断がなされた。今後の愛徳学園の改革に注目が集まりそうだ。

 
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