マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

進学クラスと専門科を持つ湖国の伝統校
来年度改編、スポーツ健康コースを新設

滋賀短期大学附属高等学校

生活デザインコースでは子どもの成長期に抱える課題の発見とその解決への道筋を探求していきます。


滋賀短期大学附属高等学校の創立は大正7年(1918)。創設者・中野冨美氏が10人に満たない生徒を教える裁縫学校から始まった。女性の自立を願い、技術教育と同様に人間教育を重視した創設者の思いが、建学の精神「心技一如」に込められている。その後、女子実業高校を経て、現在は共学進学校に成長。系列の短大、保育園、幼稚園を展開する総合学園に発展している。そして来年度、普通科Ⅰ類に3つのコースを新設する。改編のねらいや親身な学習サポートについて聞いた。


普通科Ⅰ類を3コース制に
さまざまな進路希望を応援

キャンパスはJR大津駅からの徒歩12分ほどの丘陵地帯にあり、2018年に竣工した新校舎の最上階からは琵琶湖が見晴らせる。この恵まれた環境で生徒たちは学習に部活動に励んでいる。系列に滋賀短期大学、附属幼稚園、附属保育園がある中でも高校の歴史が最も古く、大正7年(1918)に中野冨美女史が設立した裁縫学校がルーツだ。

「手に職をつけて自立し社会に参加する女性を育てるという、当時としては先進的な発想で始まりました。裁ち縫いの技術だけではなく、仕事に対する心がまえや身だしなみなども教える学校だったと聞いています」と小林昌彦教頭は語る。

その後、家政科の女子高校となり、1970年に普通科を設置、2008年には共学化と、女性の生き方の多様化に対応して改革を続けてきた。現在は、部活動に励みながら国公立大学、難関私立大学への進学を目指す普通科Ⅱ類、同じく部活動と勉学とを両立させながら進学を目指す普通科Ⅰ類、創学の流れを汲み、保育と食を中心とした家庭科を専門的に学ぶ生活デザイン科の2学科がある。

来年度からは普通科Ⅰ類を改編し、従来の進学志向を引き継ぐ総合進学コース、競技力はもちろんのこと、スポーツ科学にも学びの焦点をあてたスポーツ健康コース、そして生活デザイン科をコースとして組み入れて3コースにする。

「生活デザイン科の生徒は目的意識が高く、学習態度もまじめです。ただ男子の入学がほとんどないため実質、女子クラスになっています。男女共同参画の時代にふさわしい環境で学ばせてあげたいというのが今回の改編のねらいの一つです」(小林教頭)

生活デザイン科の生徒の多くは専門領域の学びの深化を求めて滋賀短期大学へ専願特別推薦制度で進学しているが、近年はその方向も広がりを見せている。滋賀短期大学への特別推薦制度で生活学科、幼児教育保育学科に進学できるメリットは改編後も変わらない。

スポーツ健康コースは、体育系の部活動に打ち込みたい生徒、また看護・医療分野で活躍できる人材の育成を目指す。スポーツ医療や体育理論、栄養学を学び、救急救命やレクリエーション指導者の資格取得を支援する。小林教頭は「スポーツ科学に基づいて強くなりたい選手や、アスリートのケアやトレーニングの指導論に興味のある生徒には最適のコース」と期待している。

なお、新しい普通科Ⅰ類はコース別に生徒募集をするのではなく、2年時に学びたい専門分野を選択する。入学後に興味の対象や将来の夢が変わっても対応できるフレキシブルなカリキュラムだ。


文武両道の校風で部活動が盛ん。写真の女子バスケットボール部はインターハイ常連校

校内塾、進学講座、受験校別指導
3つのサポートで国公立、難関校へ

普通科Ⅱ類は大学受験のために学力伸長を重視する授業を展開する。英・数・国は到達度別のクラス編成でシビアだが生徒の目的意識は高く、3年生まで部活動を続ける文武両道の生徒は多い。進学実績は堅調で、現状2クラスから国公立大、関関同立、産龍佛橘への合格者は60名を超える。来年度から1クラス増設するが、これまで通り1クラス30人の少人数制できめ細かい学習指導を続けていく。

募集企画部主任の神原啓人教諭は「難関大学に合格してくれるのも喜ばしいですが、3年間で力をつけて高校入学時には手が届かないと思っていた進路を実現してくれるのが嬉しい。その達成感を大切にしたいです」と言う。

そのための学習サポートは手厚く、1、2年生の日頃の学習を補強する進学講座、2年生の秋から受験対策に取り組む校内塾、3年生になっても部活動を続けたい生徒のための受験校別個別指導があり、普通科Ⅱ類に限らず受講できる。

私学の強みでICTツールの導入は迅速だった。全生徒がiPadで小テストに取り組んだり、探究型授業の情報収集やレポート作成をしたりと使いこなしている。

「来年度から新しくなる高校教科書はQRコードが記載されているなど、ICTツールを使う学習を前提につくられています。また、社会に出ればこうしたツールは不可欠です。マナーやリテラシーを身につけるためにも教員、保護者の方々と一緒にうまく活用していきたいです」(神原教諭)


(左)生活デザイン科では保育と食を専門的に学ぶ。来年度からは普通科Ⅰ類・生活デザインコースに変わる
(右)「学びの世界を楽しんでほしい」そんな想いが込められた新校舎

活発な部活動、国際交流
高大連携で短大の単位を先取り

勉強も部活動も思い切りできるのが同校の校風だ。強化指定部の女子バスケットボール部、女子バドミントン部、女子バレーボール部、女子ソフトボール部、硬式野球部は全国大会や県大会で好成績を収めている。2025年滋賀国スポの強化拠点校に指定され、地元ゆかりの選手育成を期待されていることもあり「これを機にいっそう部活動を活性化させていきたい」と小林教頭は言う。

語学研修や国際交流の機会は多く、2年生の秋には全生徒がオーストラリアまたはマレーシアへの海外研修旅行を体験する。さらに希望者はニュージーランドでの語学研修に参加できる。また、修学旅行で来日する台湾の高校生を迎える交流を続けてきた。「同世代同士、英語でスポーツやアニメの話題で盛り上がっています」と神原教諭。

系列の滋賀短期大学との連携は強く、普通科Ⅰ類と生活デザイン科は週2時間、短大の講義を受講している。この受講では同短大の単位取得が可能で、同短大に進学する生徒にはアドバンテージになる。

こうした多彩な学びができる進学校として注目度が高まっているが「生徒と教師の距離が近い、中規模校の良さを発揮していきたい」(小林教頭)という理由で大幅な生徒増は考えていないという。少人数クラスで一学年250人ほどの規模を維持し、一人ひとりの生徒を丁寧に指導していく方針だ。


滋賀短期大学附属高等学校  https://www.sumire.ac.jp/highschool