マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

学祖・弘法大師空海の建学精神が息づく
日々、仏教の教えに触れて心・学・身を高める

洛南高等学校・
洛南高等学校附属中学校

仲間たちと共に学び汗を流し、​いろいろなことを学ぶ洛南キャンパス。学校は1200年の歴史をもつ東寺の境内にある


およそ1200年前、真言宗の開祖・弘法大師が設立した「綜藝種智院」は庶民に門戸を開いた日本初の私立学校だ。これを源とする学校法人真言宗洛南学園は名刹、東寺(教王護国寺)の境内に建つ。校訓の「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」は、仏教の「三帰依(仏法僧)」を現代の言葉に置き換えたもの。国公立大学・難関私立大学への進学率は高く、また多くのトップアスリートを輩出している。多彩な才能を開花させる教育について聞いた。


心を清め、自己を見つめ直す
「御影供」は特別な一日

名刹・東寺の静かな境内を通り、生徒たちは登校する。校内に入る前に学び舎に一礼。この「校門一礼」から一日が始まる。教室の窓から五重塔が望めるのは同校ならではだ。
「この恵まれた環境で過ごすこともまた仏教の教えに触れる体験です」と北川辰雄校長は言う。さらに「雑事は仏事」という考え方から、日常のあらゆる行いが自分を磨く機会になるとし、挨拶、勉強、クラブ活動、学校行事に真剣に取り組ませている。

清掃活動もその一つだ。人の心は周りの環境に左右されるからこそ、清潔で落ち着いた環境に整えるように指導している。「入学当初は雑巾を使うのが初めてで絞れない生徒もいますが、だんだん身についていきます」と渉外部長の中村信吾教諭。「学校を美しく保つのは自分のためだけでなく一緒に学ぶ友達のためでもあります。そうした気遣いや優しさも清掃を通して育んでいきたいです」(中村渉外部長)

弘法大使の月命日である21日に行う法要、「御影供」も大切な営みだ。この日は授業もクラブ活動もなく、生徒は講堂に集まって学校長の講話を聞き、吹奏楽部が献奏する。その後は教室に戻り、感じたことや反省を作文にしたためる。無言で自分を見つめ直す、静かな時間だ。

毎週の「宗教」の授業でも、宗教の先生の話の後、感想や考えをノートに書く。「自分を客観視し、文章にすることが自己を確立する助けになるはずです。卒業生からは『まとまった文章を書く習慣が身につき、社会に出てから生きています』とよく聞きます」と北川校長は話す。

高校は「空」と「海」の2コース
一人ひとりの進路実現を応援

同校のルーツである綜藝種智院は、身分に関わりなく向学心のある人々に開かれた学校だった。綜藝種智とは「総合的に学ぶことによって智恵の種が芽生える」という弘法大使の理想をあらわしている。
その精神のもと、さまざまな才能や目標を持つ生徒が学ぶ同校は、京都屈指の進学校として、また運動系クラブや吹奏楽部の強豪校としても知られている。卒業生は100m走で日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀選手、男子バレーボール日本代表の大塚達宣選手、福澤達哉選手、俳優の佐々木蔵之介氏など多士済々だ。

「東大、京大、医学部をめざして努力する生徒も、師事したい指導者のいる大学にAO入試や推薦入学で進学するスポーツ選手もいます。有名大学に一人でも多くとは考えず、一人ひとりの自己実現を応援する進路指導をしています」(北川校長)
学習カリキュラムは中高一貫ならではの先取りで1学年先の課程を学び、高校3年時は受験対策に専念するプランだが、中村渉外部長は「6年間は長丁場ですから全力で走り切れる生徒ばかりではありません。だからこそ中学時代はできるだけクラブ活動をして、色々な経験をしながら自分のペースを掴むように勧めています」と言う。

高校からは2コースに分かれる。最難関国公立大学・学部を目指す「空パラダイム」と、適性・希望に応じた進路を実現する「海パラダイム」だ。空と海の名称は弘法大師がたどり着いた悟りの境地「我が心空のごとく、我が心海のごとく」から名付けた。

「空パラダイム」では1年生で高校課程の基礎を固め、2年生は文理に分かれ、習熟度別授業も取り入れつつレベルアップさせる。3年生は入試問題演習や二次試験で問われる応用力の完成に取り組む。昨年度は東京大学26名、京都大学70名、大阪大学21名、神戸大学20名をはじめ国公立、難関私大に高い合格実績を打ち出した。

「海パラダイム」には主に高校入学の生徒が3年間で高校課程を習得し、主要科目を強化して難関大学をめざす「αプログラム」と、課外活動に打ち込みながら進路を実現する「βプログラム」がある。進学率は高く、過去にはクラブ活動を続けながら京都大学に合格した生徒もいる。


(左)体育祭の華、応援合戦。高校3年生がリーダーシップをとって完成させる
(右)「雑事は仏事」。日常のあらゆることに仏教の教えがある。掃除もその一つ

全力で取り組む体育祭が
受験勉強のスイッチを入れる

同校は学校行事が盛んだ。バレーボール大会、水泳大会、サッカー大会、かるた大会などを開催し、どれも大いに盛り上がる。なかでも9月の体育祭は中学・高校の縦割りで赤・青・黄の3チームに分かれて全力で競う。クラスや学年の入り混じる混成チームなので日頃、交流のない生徒同士が団結するのだ。

「ただ走るだけでは洛南の体育祭じゃありません」と北川校長が言うように、目玉は迫力満点の応援合戦だ。100人編成の応援団が華麗な背景画をバックに創作パフォーマンスを披露する。演出や稽古でリーダーシップをとるのは3年生だ。受験勉強どころではないため夏休みに集中的に勉強して備える。

興奮と感動の体育祭が終わると3年生は受験に向けてラストスパートだ。ここにきて体育祭で培った絆が生きるという。「一緒に体育祭を創りあげた仲間で励まし合い、勉強も助け合い、団体戦で受験に臨むのです。秋以降の追い上げには洛南の力を感じます」(中村渉外部長)。

毎日、学び舎を拭き清め、月に一度の「御影供」では心静かに自分を省みる。一方で勉強、クラブ活動、学校行事には全力で取り組む。洛南らしい学校生活を通して生徒たちは自己を高めていく。残念ながら昨年度は新型コロナ禍のため体育祭を開催できなかった。北川校長も中村渉外部長も「今年こそは体験させてあげたい」と願っている。

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校  http://www.rakunan-h.ed.jp/