マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

2021年統合により中高大連携始動
「京都発世界人財」の育成を目指す

京都先端科学大学附属中学校高等学校

四季折々の草花や木々が繁り、静かで集中しやすい環境で、生徒たちは勉学に励む


2021年4月、学校法人永守学園の運営する京都先端科学大学と発展的統合を果たした、京都先端科学大学附属中学校高等学校。これを機に、学校法人永守学園が目指す人物像「京都発世界人財」の育成を同中学校高等学校も掲げるようになった。これまでも多様な学びや体験を通して生徒の適性を引き出す教育プログラムを提供してきたが、今後は附属校として、大学のリソースも積極的に活用し、さらに進化した教育プログラムの構築に取り組む。法人合併による新たな動向や学校の強み等について、中学教頭の山田尊文先生と中学部部長の竹村慎吾先生に話をうかがった。


知的好奇心を刺激する探究型学習
「地球学」がさらに進化する

学校法人永守学園が掲げる「京都発世界人財」の育成を礎に、2030年代にSociety5.0(超スマート社会)で活躍できるグローバル・ナビゲーターを育成すべく始動した、京都先端科学大学附属中学校高等学校。中高大連携による多様な教育プログラムが提供できるようになり、人材育成に向けての環境が整った。

これまで同中学校は、独自の探究型学習「地球学」という教育プログラムを展開している。地球学は生徒一人ひとりの興味・関心を大切にし、ホンモノに触れる経験から知的好奇心を刺激する。教科の枠を越えた探究活動等を通じて、学ぶことの意味や喜びを体感し、自らの適性について深く考え、社会で生きる力を身につけることを目的とする。

地球学では深泥池のフィールドワークや、長崎県天草地方の潜伏キリシタン関連遺産の見学等さまざまなプログラムを実施してきたが、大学との連携を契機にさらなる進化が可能となった。例えば、昨年は中学3年生を対象に、新型コロナというテーマから疫病の歴史、妖怪アマビエまで学びの幅を広げ、さらに京都先端科学大学人文学部で妖怪を専門に研究されている教授に特別講義してもらうという深い学びを実現させた。あるいは、同大学のバイオ環境学部の教授とともにプログラムを構築することは以前から行なっていたが、さらに強化していく予定だ。また同大学に昨年新設された工学部の施設・実験設備を見学・使用させてもらう等、中高大一貫で生徒の可能性を引き出す教育プログラムを推進していきたいと考える。

「中高大連携が可能となり、永守学園全体で『京都発世界人財』の育成という目標に、一体感を持って取り組めるようになりました」と中学部部長の竹村慎吾先生は語る。

「学びのSTEAM化」で
教科の枠を越えた学びを実現

今年度より中高大の連絡協議会を設置し、文理の枠を越えたSTEAM教育や中高大一貫した英語教育のプログラム創造をめざしている。
例えば、近年注目されているSTEAM教育はScience, Technology, Engineering, Art, Mathematicsの5つの教育の総称であるが、Artに関しては、ここ数年「科学と芸術」をテーマに、中学校の文化祭では生徒全員と教職員で一つのアート作品を制作している。生徒一人ひとりが一つの国をテーマに絵を描き、全員の作品をつなぎ合わせたモニュメントを創作。協働して一つの作品を創り上げるアートの面白さを体感している。

また竹村先生は、「誰にでも数学は必要で、誰にでも国語は必要です。ですから理系・文系と分けるのでなく、教科横断的なプログラムが求められます。社会が求める力もそういった総合的な力だと思います」と語る。

このような思いから、中学部の教職員たちは、「STEAMのEはEarthology(地球学)のE」「AはAgriculture(農業)のA」等と自由に発想し、アイデアを出し合い、多様なプログラムを構築している。これは「地球学」の学びの一環でもあるが、京都先端科学大学バイオ環境学部とのコラボにより、中学生が大学のキャンパスを訪れ、農業を体験するプログラム等を予定中である。

「座学の勉強以外にも、美術や体育すべての教科が大事なのです。何事にも前向きに興味・関心を持って学んでほしいのです」と中学教頭の山田尊文先生は語る。


「縦割り活動」では、学年の枠を越えて様々な活動に取り組む

生徒の適性に応じた多様な
進路実現ができる中学校高等学校を目指して

保護者からも中高大連携の教育改革については期待が寄せられているが、もう一つ、注目を集めているのが、京都先端科学大学への内部進学制度である。この制度は、今年の高校3年生から導入され、高校3年間の評定と高3夏休み明けの校内実力テストの結果をもとに総合的に判断されるもので、普段からの努力が求められる。山田中学教頭はあえてこう語る。

「この制度が設けられても、エスカレーター式の附属校になるわけではありません。今春も卒業生は海外大学や京都大学をはじめとする国公立大学、医学部医学科、有名私立大学等への幅広い進学を果たしています。そこに、工学部や看護学科など5学部11学科を有する総合大学である京都先端科学大学への内部進学制度を導入することで、進路の選択肢が格段に広がりました」

このことからも、同校は「多様な進路実現ができる中学校高等学校」という立場で進路指導を実践し、大学の附属校としてこれまで以上に生徒の一人ひとりの適性に応じた幅広い進路選択が可能になったといえる。

多彩な学校行事を通じて
一人ひとりの個性に光をあてる教育を

「本校の行事すべては、一人ひとりが成長できる教育プログラムだと考えています」と竹村先生。
その一環として、同中学校が独自に取り組むのが「縦割り活動」である。全学年2~3名で構成される合同グループで、校内ツアーや校外学習等の学校行事に取り組み、3年生が後輩の面倒を見るというもの。これによって3年生はリーダーシップや主体性が培われ、後輩は先輩の姿を見て学ぶ。このような学年という枠を越えた交流により、それぞれが成長できるチャンスが生まれる。

「中学は少人数というメリットを最大限生かし、生徒一人ひとりを大事に育てます。勉強が苦手な生徒でもプレゼン力があったり、スポーツが得意であったり、合唱コンクールでみんなを引っ張る力がある等、それぞれに必ず『強み』があります。多彩な行事を通じて、生徒のさまざまな個性に光をあてて活躍してほしいと願っています」と山田中学教頭。

十把一絡げにするのでなく、生徒一人ひとりの個性を重んじる教育が同校の真骨頂だ。

「中学で適性を見つけ、高校で伸ばし、大学で究める。自分の強みをしっかりと手にした“トンガリ人材”が社会へ出てその力をいかんなく発揮し、あらゆる分野で活躍してほしい。そうすれば社会全体がより良いものになると信じています」と、最後に山田中学教頭は生徒たちの未来について熱く語ってくれた。

京都先端科学大学附属中学校高等学校  https://www.js.kuas.ac.jp/