マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

まわりを照らす「燈台の光」のような人を目指し
“BeLeaders”でSDGsについて学び、取り組む

賢明女子学院中学校・高等学校

松浦明生校長を囲んで“Be Leaders”のメンバーたち。有志約50人が今年も集まる


「燈台の光のような人になれるように」。これが、1951年設立の賢明女子学院中学校・高等学校の教育理念である。本校は、聖書に基づくイエス・キリスト教会の教えと、カトリック教会の教える価値観によって、社会に貢献する人材を育成。「燈台の光」には、社会に出てから自らのもてる魅力で様々な人を照らす女性になってほしいという思いが込められている。その一環として現在展開する“Be Leaders”の取り組みについて、藤岡佐和子教頭と広報の橋本久美子さんに話を聞いた。


SDGsの開発目標について
自分たちに何ができるかを考える

教育理念をもとに2018年からスタートさせたリヴィエプロジェクトでは、校舎の改修や理数教育の強化、ICT教育等さまざまな変革を実現した。そのうちの一つに、今回取材した“Be Leaders”がある。

“Be Leaders”は、現代社会が抱える問題に広く目を向け、たとえ自分の力が小さくても、それら問題について学んで知り、解決のために何ができるかを考え、発信し、行動することを目的としている。今年も中1から高2までの有志の生徒たち約50人が集まった。

2019年に立ち上げ、2020年には他者に奉仕するという同校の精神と、世界が合意したSDGs(ustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の趣旨が合致。SDGsについて学び、さまざまな取り組みを行なった。

生徒自らの発案で難民へ服を届け
海のゴミ調査等を実行

2020年に行なったSDGsに関する活動の一つが、ユニクロとGU主催の「“届けよう、服のチカラ” プロジェクト」である。近隣の男子校と協力し合い、多くの子ども服を集め、ユニクロを通じて難民の子どもたちへ届けた。今年も地域に呼びかけて実行するそうだ。

また、株式会社姫路環境開発の協力で、播磨灘沖で底引き網漁を行なって海に捨てられたゴミを調査したり、聞き込み調査隊は、SDGsの取り組みを行なう古紙回収業者や鞄メーカーのセイバン等へのインタビューを行なったりした。

さらには、全校生徒への意識の浸透を図るため“Be Leaders”の活動をまとめた新聞を発刊。これは現在8号まで続いている。
教員たちも、生徒が「やりたい」といえば決して反対はしない。むしろ、どうすればできるかサポートし生徒の自主性を尊重する。

「勉強だけでなく、世の中に目を向け、気づいたことを実行する意識は高くなりました」と橋本さん。藤岡教頭も「“Be Leaders”の活動を通し、消極的な生徒も発言してアイディアを出すなど積極的になりました。教員は小さな種をまき、それが大木になるように、将来は生徒たちが社会に貢献できる人材に育ってほしいです」と語ってくれた。


(左)昨年の「“届けよう、服のチカラ” プロジェクト」の様子。661枚の子ども服が集まった
(右)株式会社姫路環境開発の協力で播磨灘沖で底引き網漁を行ない、海のゴミを調査

探究型学習のできる
図書館メディアセンター竣工

同校では、今年迎えた創立70周年を目処に、理科室やコンピュータルーム、クラブ棟等の改修を着々と進めている。なかでも注目なのが、図書館メディアセンターの竣工である。これは図書館を改修したもので以前よりも約3倍広く、ただ読書をするだけでなく、プレゼンや調べ学習、授業、情報収集もできる探究型学習の行なえるスペースとなった。

学習面においてはP.Laboが実現。希望者には放課後に個別型、質問型の校内予備校の実施が昨秋からスタート。従来の補習に+αするかたちで学校での学習時間を取り、しっかりフォローできるようになった。

「できることを自分で考え、自分で行動し、自分で発信できる女性になってほしいという思いで、70年の伝統を守り、そして新しい時代にも対応しながら、本校はその素材づくりをしています」と藤岡教頭。
70年の時を経て今なお、その教育の根底には「燈台の光のような人に」との理念が脈々と流れている。


ユニクロ出張授業
「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」に有志の生徒たちが聞き入る


(左)安本 早希さん・(右)松田 彩花さん

昨年に引き続き、今年もまた、「“届けよう、服のチカラ” プロジェクト」に参加するため、ユニクロの社員の方を招いての出張授業を依頼。SDGsに対するユニクロの取り組みや、SDGsの概要、リサイクルの意義、服の持つチカラ、回収した服の活用法等について、写真や動画を用いたお話があった。

当日は、有志である数十名の生徒が参加してスタート。まずは社員の方から、着なくなったダウンジャケットを再生してつくられたリサイクルジャケットの開発意義についての紹介があった。

続いて、SDGsの12番の「つくる責任 つかう責任」についての説明があり、さらに動画で「つかう側にできることは何があるか」という問いかけが。着なくなった服を捨てるか、しまい込むか、あげるのかを生徒たちに選択してもらい、服のチカラを生かすには「あげる」ことが一番いいことを主張した。この服のチカラとは何かを生徒たちに考えてもらうことに。隣同士で和気あいあいと意見を出し合い、「ファッションを楽しむため」「身を守るため」という発表が生徒たちからあった。

その後、難民についてのレクチャーがあった。約8000万人いる難民の約半分が18歳未満の子どもであること。難民の人々は自分たちと何ら変わらない人々であり、避難するために多くの服を持っていけないことなどが伝えられた。難民の人々のために、着なくなった子ども服を届けてほしいというお願いがあり、何度も頷く生徒たちも。

最後に、服を受け取った難民の子どもたちの笑顔の動画が流れ、食い入るように見つめる生徒たちの姿が印象的だった。

授業に出席した松田彩花さんは、「服にいろんなチカラがあることを知り、それが難民の方々に届いて皆さんの笑顔の映像を観ることができたのが良かったです」と語ってくれた。また、安本早希さんは、「遠い存在だと思っていた難民の方々が身近に感じられ、この活動に参加できることに喜びを感じます」と感想を述べてくれた。
 
 
 

賢明女子学院中学校・高等学校  https://www.himejikenmei.ac.jp