マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

95年の伝統を誇る女子校、今年度から共学へ
地域に望まれる学校を目指し、大きな一歩

京都西山高等学校(京都府)

今年度より男女共学に舵を切った京都西山高等学校。これから新たな歴史と校風を紡いでゆく


95年にわたる女子校の歴史に幕を閉じ、今年度より共学化、男子生徒を受け入れた京都西山高等学校。それとともに学びのコースは2コースとシンプルになり、コース内で生徒の歩みに合わせてより柔軟に対応できるようになった。教育目標のひとつである「これからの社会で生き抜く力を持った人間を育てる」に添い、今の時代により求められる教育を目指す。今回の改革について、昨年校長に就任した森川弘仁校長にお話を伺った。


社会の変化に応じて必要な教育を
男子生徒の受け入れスタート

森川校長は長年同校で教員を務めたのち、新校長に就任。この数十年の教育現場の様子をよく知る存在だ。95年もの歴史を誇る同校の創立当時は、情操教育および女子教育の必要性を強く感じた創立者がその問題に尽力、社会に貢献できる人材を輩出するという役割を果たしてきた。そして今、時代も教育に求められることも大きく変化している。

「これからの社会、何が求められるのかと考えた時に、『広く地域に愛される学校』として共学の形が望ましいのではないかと、準備を進めてきました。本校は仏教の『報恩感謝』の精神を建学の基盤として人を育てていくことが使命ですので、たとえ長い歴史があろうとそこに留まらず、常に社会の変化に応じて、必要性のある教育を提供することが大切だと思っています」

今年度の入学者数282名のうち、男子生徒は約4分の1の73名。在校生の上級生は、女子校として入学してきたため、その思いも大切にしながら共学化を進めていきたいという教師全員の強い思いがあるという。入学してきた男子生徒たちは、同校の落ち着いた風土に共感している生徒が多く、現在はお互いに協調しながら日々の学校生活を送っている。

「私たちとしては、この変化の激しい時代の中で、自己の可能性を信じて主体的に生きていける力をつけることができる学校でありたい。でも一番は、生徒が幸せな人生を今後も歩めるように、『基礎の力』を身につけて卒業を迎えてほしいということ。この建学の精神は、共学になってもずっと生きています」

2005年には通信単位制の課程も立ち上げている同校。それも社会の要請に応えた教育機関としてのあり方を考えた結果だった。今回の共学化も、周囲から見れば大改革だが、学校にとってはごく自然な流れだったという。


1人1台のタブレット、校内Wi-Fiなど充実のICT環境で学びを深める

学びをシンプルな2コースに凝縮
自学自習を目指す支援プログラムも

同校では共学化を機に、従来の5コースから「特進コース」と「総合進学コース」の2コース制になった。特進コースは国公立・難関大学および、看護・教育系の大学を目指す。

「とにかく伸ばす」を掲げ、探究学習や各種セミナーなど充実の学習内容で、不得意分野の偏差値さえも伸ばすことに特化。2年次には進路に合わせて国公立文系、国公立理系、文理融合系の3種から選択、得意分野に集中して難関校への突破口を開く。

また、総合進学コースは「夢の実現」を掲げ、2年次より保育系・キャリア系・スポーツ系の3つの分野でそれぞれの学びを深め、一人ひとりに合った進路を実現。特進コース文理融合系への変更も可能なため、選択の幅は広い。

「この2コースにしたのは、これから先、社会がどう変化するかわからない中、中学3年生の時点で特化されたコースを選ぶということが難しくなってきていると考えたからです。元々、小さい時から進む道がはっきり決まっている生徒さんは非常に少ない。高校に入って1年間過ごした中で、自分の進む道を2年次から選択していける形にしました」

さらに新しい取り組みとして、自学自習の習慣づけを目指す「放課後学習支援プログラム」が今年5月からスタート。メンターとしての教育を受けた現役大学生たちが企業から派遣され、学校に常駐。教員との連携のもと、放課後の生徒たちの学習サポートを行うというプログラムだ。

「現在12名の現役大学生に来てもらっていますが、3分の2は京都大学、3分の1は同志社大学の学生さんです。いろいろな学部の学生さんがおられ、生徒のロールモデルになってくれる。特に男子生徒は先輩がいませんから、良き相談相手になっています」

勉強を教える学内塾の講師としてではなく、あくまで生徒たちが自分で考えて学習していく道筋をアドバイスし、見守る存在としての位置付けだという。これはコースに関係なく、誰でも参加は可能だ。現在は、メンターと話をしたり友達と対話をしながら学習を進めていく部屋、面談をする部屋、一人で黙って集中する部屋という2タイプの部屋がある。16〜19時の間はそれらの部屋を自由に使うことができ、現時点で30〜50名が参加。生徒の評判は高いという。


年の近いメンターたちは良き先輩として自学自習へと導いてくれる

インターハイ常連の強豪多数
サッカーなど男子の部活動も新設

少林寺拳法はじめ、インターハイ出場の常連としても知られる同校。特に女子ソフトボール部はオリンピック選手も輩出している。今年度からは共学化に合わせて、男子サッカー部、男子バスケットボール部を新設、さらに従来の多くの部活動で男子生徒の参加が可能となった。

今年は女子ソフトボール部・少林寺拳法部・陸上競技部の3クラブがインターハイ出場を決めているが、実は森川校長、もと少林寺拳法の世界チャンピオンであり、20年間同部活の顧問を務めてきた。現在は後進に任せているものの、男子の指導は行い、その生徒の中のひとりが、今年いきなりインターハイ出場を決めた。さすがの指導力と唸らざるを得ない。

部活動の充実も、日々の学びも、すべて「生徒が自分で幸せを見つけられる力を育むためのもの」と森川校長は語る。今回の共学化に関し、女子校として入学してきた上級生たちを何度も気遣う言葉からも、森川校長の思いが伝わる。時代の流れをしっかり見据えて、変化を辞さない京都西山高校は、新しい風の中でさらに前へと進んでいく。


インターハイ常連の少林寺拳法部で文武両道を極めながら夢もかなえていく


今年度より男子サッカー部、男子バスケットボール部が新設

京都西山高等学校 https://kyotonishiyama.ed.jp/