マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

目標に沿った3コースと豊富な指定校推薦枠で幅広く進路を保証
毎日の祈りを通じ、他者のために力を尽くす人間を形成

賢明学院中学高等学校(大阪府)


フランス革命のさなか、子どもの教育機会創出に尽力した聖マリー・リヴィエ。賢明学院は、彼女の精神を継承するシスター4人が日本からの招へいに応え、戦後まもない大阪府堺市に開設したカトリック系ミッションスクールだ。「祈る・学ぶ・奉仕する」を校訓に、すべてに最上を目指し、最善の努力を尽くす教育を実践している。2019年、同じくミッションスクールで、関西私大の雄である関西学院大学の系属校となった。来春は、同大学理系4学部に“直結”するコース1期生がいよいよ羽ばたき、「特進エグゼコース」新設など、話題が目白押しだ。


豊かな高校生活を送れる
関学理系“直結”のサイエンスコース

「これからの時代、サイエンスはどの仕事でも必要となるでしょう。まずは関西学院大学特進サイエンスコース1期生にしっかり力をつけてもらい、合格につなげたいですね」と語るのは、今年4月に就任した石森圭一校長。もともと化学の教員で、昨年まで勤務していた関西学院高等部で部長を務めていた経験を買われ、白羽の矢が立った。「高等部から関学への推薦制度に38年間携わったノウハウを賢明で生かし、関学側にも提携メリットを感じてもらえる生徒を育てたい」と今後を見据える。

同コースは、関学の理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の理系4学部への進学を前提に、2020年度から募集を開始。①英検2級合格②数検2級程度の学力③評定の3つの独自基準をクリアすれば、内部進学に近い形で秋には内定し、面接を経て1月中旬に合格が決まる。受験がないため、精神的にゆとりを持てることもさることながら、最後まで好きな勉強とクラブ活動を両立でき、豊かな高校生活を送ることができる。

高校2~3年の2年間をかけて、大学での研究活動を“予行演習”する「AP科目」が、同コースカリキュラムの最大の特長で、今年度は4つの研究室が進行中だ。

「先日、建築学研究室を覗くと、3Dプリンターを用いて耐久性を高める橋の形を研究していたり、効率的な換気が行える窓の位置を検討したりと、教科書に載っていないことばかりしていて、とても面白そうでしたよ」(石森校長)

基本的に同校教員がグループワークを指導するが、関学の先生も協力。数ヵ月に一度、中間発表会を開いて議論しながら研究を深める。最終的に、論文にまとめて卒業という流れは大学と同じだ。

「とても良い探究活動となっています。関関同立クラスの大学を狙う生徒なら、高3後半にそんなことに費やす時間は普通ありませんよね」と、広報募集部長の前七奈先生。また、石森校長は「合格後の残りの高校生活は大学への準備に充てることができ、将来に差がつく良いスタートダッシュがきれます」と言い、“直結”の副産物は大きい。

目下、来春巣立つ注目の1期生が、基準クリアに向けラストパートをかけている。


(左)大学の研究室を疑似体験できる関西学院大学特進サイエンスコースの「AP科目」。今年度開設している4つの研究室のひとつ「建築学研究室」の様子
(右)新しい入試に必要な力を育てる高校の土曜講座(写真はフラダンス)。外部講師を招き、各種年10回実施。毎年希望を募って実施講座を決定し、保護者も参加できる

来春「特進エグゼコース」を新設
コース変更もより柔軟に

関学の理系に進みたいという意思が早くからあれば、中学の「関西学院理数コース」から高校の「関西学院大学特進サイエンスコース」に優先入学できる道を用意する同校だが、多くの生徒は高校1年時でも、めざすべき進路がまだ定まっていないものだ。

そのため、高校では前述の「関西学院大学特進サイエンスコース」、国公立大学および関学の文系を含む難関私立大学をめざす「特進エグゼコース」、有名私立大学をめざす「特進コース」の3コースを設定するが、高1は全コース同じカリキュラムにしている。一人ひとりに寄り添った進路指導で方向性を固める中で、2年進級時に、特進から特進エグゼ、またはその逆のコース変更が可能。2023年度からは、基準を満たせば、他コースからサイエンスコースにも進めるようにした。

来年度新設する特進エグゼコースは、「サイエンスコース同様、文系でも難関大をめざすコースを」という要望に応えたもの。入試に必要な5教科をハイレベルに、バランスよく履修し、実力を身につける。定員は50人。

一方、文系・理系学部のほか、看護医療系学部にも対応する特進コースでは、入試に必要な科目にしぼって学力を伸ばす。「選択科目がかなり多くなり、個別対応的な授業を展開しています」(前先生)

また、留学制度も見直し、来年度から新しいプログラムが始まる。社会情勢を踏まえ、行き先は治安が良く、感染症対策も万全なニュージーランドに。長期留学が難しいサイエンスコースでは、米スタンフォード大学をはじめとする世界トップ大学で学ぶ、4~6週間の短期研究留学を設けた。


(左)2023年度から新しい留学プログラムが始動
(右)授業に欠かせなくなったタブレット。コロナ禍では音楽や体育などのオンライン授業もスムーズに行えたという

歴史と伝統が積み上げた
「117大学291学部以上」の指定校推薦枠

最近では、関学の理系4学部との連携による70人の推薦枠が加わり、同校は現在、117大学291学部以上の指定校推薦枠を誇る。「この数字は、本校の歴史と伝統が積み上げてきた進路保証です」と前先生は胸を張る。

カトリック系ミッションスクールである同校には、上智大学、南山大学でカトリック推薦枠、女子校で長い歴史を持つことから、日本女子大学や神戸女学院など多数の女子校推薦枠がある。さらに、時代とともに追加した推薦枠は近畿圏のみならず、関東や中部にもおよび、偏差値帯も幅広い。

「各生徒の希望をかなえられるよう、1校でも増やす努力を今後も重ねていきます」

ただ、「本校は、大学に入ることを目標にしている学校ではありません」と前先生はキッパリ。「建学の精神である『他者のために自分の力を尽くす』人間形成が学校の大きな目標です。誰のことも受け入れ、大切にし、奉仕することは、女子校時代からの校風で、日常的に浸透しています。来校いただければ、その空気感をご理解いただけると思います」

朝の祈りで1日が始まり、終礼の祈りで1日が終わる。自分のことを祈りながら他者のために祈ることを6年間、毎日継続。そのなかで、賢明イズムが育まれていく。


賢明イズムを育む朝の祈り

関西学院大学系属校 賢明学院中学高等学校 https://kenmei.jp/


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