マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

過去最多の国公立大学合格者数は生徒たちの自走が要因
2050年の世界で活躍する人材を育成する教育を

常翔啓光学園中学校・高等学校(大阪府)


学校法人啓光学園・啓光学園中学校として1957年に誕生、2013年には今年創立100周年を迎えた学校法人常翔学園と法人合併し、常翔啓光学園中学校・高等学校として新スタートを切った同校。「世のため、人のため、地域のため、理論に裏付けられた実践的技術をもち、現場で活躍できる専門職業人を育成する。」を建学の精神とし、21世紀型教育やキャリアデザイン教育にいち早く力を注いできた。今年度過去最多の国公立大学合格実績を叩き出した同校、その要因や取り組みについて、山田長正校長にお話を伺った。


花開いたキャリアデザイン教育
望む未来から逆算して今をつくる

建学の精神を実現するべく、さまざまなアプローチで教育を実践してきた同校。今年度は徳島大学医学部医学科はじめ、国公立大学現役合格者が過去最多の49人となった。また私立大学も関関同立73人、MARCH3人、医歯薬系学部にも多くの生徒が合格し、難関を突破した。

その一因として、中高通して実践しているキャリアデザイン教育が浸透してきたと考えられる。その中の一つ、同校の伝統とも言える「みらいマップ」は、将来何になりたいかを想像し、高校の時に何をしなければならないかを探求するためのプログラムだ。中学では同一法人内にある3大学との連携のもと、看護学部や薬学部をはじめ多くの学部を体験するなど、中学の頃から進路選択や職業観の醸成に役立つプログラムを取り入れている。

また「企業探究」は企業のインターンシップに近い内容で、企業から出される課題(ミッション)をグループで考え、まとめ、プレゼンテーションする。プレゼンテーションのスキルもどんどん上がっているという。

加えて、近年のコロナ禍の影響でオンラインでの活動が増え、全国の大学がオンラインガイダンスを行うようになった。生徒も1人1台タブレットPCを持ち、情報もすぐに入手できる上、オンラインなら遠方の大学のガイダンスにも参加できる。結果、生徒自身が行きたい大学を見つけることができるようになった。

今年は特進コースだけではなく、進学コースからも国公立大学合学者が出ている。近年自己推薦型の入試枠が広がっており、大学で何を学びたいか、高校生の間にそれに関わるどんな活動をしたかをプレゼンテーションできれば、合格は限りなく近くなる。キャリアデザインでの体験が、大いに生きる入試だ。そしてそんな生徒たちをサポートする進路指導部のアプローチも、さらにきめ細やかになっているという。


一流企業のサポートのもと、働くことの意義や経済活動を学ぶ企業探究

SDGsを取り入れた21世紀型教育
グローバルに未来を見据える

同校独特の「21世紀型教育」として一番特徴的なのは、SDGs教室を含めた探究の活動だ。SDGsカードゲームは生徒全員が体験しており、SDGs公認ファシリテーターの先生が3人いる。高校1年では『ENAGEED』という教材を使い、コミュニケーション能力を磨きながら課題解決型探究学習を行う。また、20年前から行われている3分間スピーチコンテストも、自分の考えをまとめて皆の前で発表するというスキルが身についていくという。

「先生が生徒を指導しようと思ったら、探究活動はできない」という山田校長。生徒たちが自分たちで自走できる場をつくれば、学習にも意欲を持つと考え、実践している。生徒たちの発表を見ると、彼らはどんどん新しいものをつくっていこうとし、その柔軟性に驚くという。

「心が動けば体が動く。いかに心を動かす教育ができるか、それが大事だと思っています。そのため、勉強と同じくらい行事も大事にしています。『本物』を見せることによって心が動くことがありますから」


(左)課題を見つけ、チームで解決への取り組みを行うSDGs教室
(右)新しい価値観を理解しグローバル感覚を養うエンパワーメントプログラム

またグローバル教育は、生きた英語に接する時間を増やすことが一番の意図。中学の未来探求コースでは、ネイティブの先生がオールイングリッシュで終礼を行う。中高それぞれ週1回オンライン英会話を行うコースもあり、英会話への苦手意識が薄まると同時に、英語4技能の成績がかなり上がったという。高校1年で行われるエンパワーメントプログラムや、留学制度も充実している。

「英語はあくまでコミュニケーションのツール。私の方針として、『2050年の世界で活躍する人材を育成する』と先生方に言っています。2050年は今在籍する中学生が40歳半ば。社会で中心になって活躍している時です。あの時、常翔啓光学園で学んだことが生きているな、と思えるような教育をしよう、と」

山田校長の目は、ずっと先の未来を見据えている。

特筆すべき学び舎の充実
今年人工芝グラウンドも完成

今年7月、同校では学校法人常翔学園創立100周年記念として、人工芝グラウンドがオープン。記者が取材に伺ったちょうど翌日が、人工芝グラウンドの使用開始日だった。青々とした人工芝には、ラグビー、サッカー、野球のラインが引かれ、生徒たちもとても楽しみにしていたという。

「生徒がどんどん増えていく中、体育施設の充実を図りたかった。少々雨が降ってもすぐ使えるようになる人工芝は、クラブ活動の充実や周辺環境に優しいということから、100周年記念と合わせて6年前から準備を始め、この2月から着工し、いよいよ明日から使用開始となりました」

山田校長の声も弾む。生徒たちにとっても日々明るいグリーンのグラウンドを使用できるのは、気持ちの面でも充足感があるに違いない。


水はけが良い人工芝で、体育の授業や屋外行事がより充実

「学校というところは“伸ばす”という言葉が好きです。成績を伸ばす、学力を伸ばす、と言いますが、私は子どもが一番成長するのは、短所を克服した時だと思うんです。だからしんどいなと思っても、チャレンジできる子がいい。チャレンジした後には必ず心の成長が生まれます。なんかやってみよう!という強いハートを持った子が来てくれると嬉しいですね」

山田校長のいるこの学校で、生徒たちは間違いなくどんどん伸びていく。そして入試でも、また2050年の未来でも結果を出し続けるに違いない。

常翔啓光学園中学校・高等学校 https://www.keiko.josho.ac.jp/


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