マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

今年創立120周年 「自立・共生」できる人間を育成し
教員一丸で「未来プロジェクト」に取り組む

京都橘中学校・高等学校(京都府)

全日本マーチングコンテストで金賞受賞や、アメリカの「ローズパレード」にアジア代表として参加経験のある吹奏楽部


京都橘中学校・高等学校は、近代化が急務であった明治時代中期に、女性の社会的自立を目的に「京都女子手芸学校」として開学し、今年創立120周年を迎えた。そのDNAは脈々と継承され、伝統的にさまざまな分野で活躍する人材を輩出してきた。共学化した2000年に掲げた「自立・共生」の教育理念のもと、常に新しい教育課題に柔軟に取り組んでおり、現在進行中の「未来プロジェクト」でめざす教育改革を、安田文彦校長に聞いた。


自立促す「選べる放課後」スタート
進学講座は中高一貫6年システムに

JR、近鉄、京阪の各最寄り駅から徒歩圏でありながら、明治天皇が眠る伏見桃山陵の豊かな緑を臨める、恵まれた環境にある同校。120年前の開学当初から「自立した人間育成」を実践し、生徒一人ひとりの希望する進路実現に注力する。

「いろいろな進路がある中で、親身になって“出口”を保障するのは私学の大切な責務です」と安田文彦校長。常に時代に即した対応を図っており、現在は2025年をゴールとする「未来プロジェクト」に取り組んでいる。

①独自の大学進学プログラム「ASTM(アスティム)(=After School Tachibana Method)」 ②探究教育③グローバル教育④ICT教育、そして、今年度からは「選べる放課後」を加え、5本柱とした。

「従来、コースによって終業時刻等に違いがありましたが、全コース、月曜日から金曜日まで45分授業の7限にそろえることにより、放課後と土曜日の活動の自由度を高めました。生徒自身が“なりたい自分”の実現に向け、クラブ活動、『ASTM』、探究活動などのメニューから必要な学びを自発的にコーディネートできる環境を提供し、『自立』を促します」

2019年に導入し、4年目に入った「ASTM」は、予備校などで活躍する外部講師と同校教員がタッグを組む「TSゼミ(放課後進学講座)」「土曜ゼミ(土曜学習講座)」と、常駐する学習アドバイザーや同校卒業生等が生徒の疑問点解消や勉強方法などをアドバイスする「スタディルーム(自習教室)」の3つで構成。通常授業以外の時間を活用し、苦手科目の克服から得意科目の伸長、さらには第一志望校対策まで、きめ細かく、手厚くサポートする。

導入前と比較し、志望校への合格率が飛躍的に伸びたといい、2022年度の大学入試では、京大への現役合格2名を含む国公立大に61名、私立大は3年連続で1,000名以上が合格した。

最善を尽くすことを念頭に、毎年アップデートを重ねている同校。今年度は「TSゼミ」の中学生版「TSゼミジュニア」をスタートさせ、中高一貫の6年システムとした。


(左)伏見桃山陵の緑豊かな自然を臨むキャンパス
(右)同校フェスティバルホールで高校1年生時に実施する探究学習の発表会

探究教育を兼ねた研修旅行
グローバル教育に「ターム留学」追加
最新設備完備のICT教育

その他の柱も、それぞれアップデートを図っている。

「社会の中での体験をもっと充実させたい」との思いが強い探究教育。新しい試みとして、高校1年生時に実施する研修旅行は、今年度から探究教育を兼ねることにした。3月の学年末考査を終えてすぐ、沖縄に行く予定。地域の企業、旅行会社、同校が三位一体となって企画し、事前学習、現地での体験を踏まえ、2年生に進級後、振り返りを行う。

「地域の課題について、生徒も一緒になって解決に向けアイデアを出し、社会とつながりながら、将来を考えるきっかけづくりを行います。今回は沖縄県ですが、他県についても今後検討していきたいと思っています」

グローバル教育では、コロナ禍で休止していた高校での留学プログラムを再開する。従来の短期(夏休みの3週間)、中期(夏休み全期間)、長期(1年間)に加え、3ヵ月間の「ターム留学」を来年1~3月に実施する。要望が高い中学生での実施も模索中という。普段の授業でも「受験対応」も大切にしながら、「使える英語」に注力していく。

ICT教育では、全教室に最新のプロジェクターとホワイトボード、Wi‐Fi環境をすでに完備し、校内フェスティバルホールには巨大スクリーンも。これらの設備と全生徒が所有するiPadを用い、プレゼンテーション機会を数多く設けている。

iPadは、学習支援システム「Classi」により、日々の学習時間や内容を計画・記録したり、保護者とのコミュニケーションツールとしても活用。今年度からAI教材「atama+(アタマプラス)」も導入し、さらなる充実を図る。

また、来年度の募集要項も変更。現在の3コースを「選抜類型」「総合類型」の2類型へとシンプルにする。2年進級時に、①難関国公立大学②国公立および難関私立大学③指定校推薦や京都橘大学内部進学など、3つの進路別クラスを柔軟に選択できる。


(左)ニュージーランド中期語学研修の様子。異文化交流やホームステイを通して国際感覚を養う
(右)iPadは生徒全員が所有。今年度からAI教材「atama+(アタマプラス)」も導入した

全国レベルのクラブ活動多数
今春、新スタジアム完成

「文武不岐」でクラブ活動も盛んな同校。とくに、男子サッカー部、女子バレーボール部、陸上競技部、吹奏楽部、太鼓部は全国に名を馳せ、これらの道に進む生徒も少なくない。

今年3月には、創立120周年記念事業の一環として、人工芝のサッカーコートに、フットサルコート、テニスコート、ビーチスポーツコート、クラブハウスから成る新たなスポーツ発信拠点「KYOTO TACHIBANA スタジアム」がグランドオープンした。

選手の動きを分析・解析するAIカメラなど最新鋭の設備も導入し、生徒たちのモチベーション向上もさることながら、地域の小学生からも「中学に入って、こんなグラウンドでプレーしたい」と熱い視線が注がれている。


(左)2013年に日本一に輝いた太鼓部。全国高等学校総合文化祭には20年連続出場中
(右)今年3月にグランドオープンした「KYOTO TACHIBANA スタジアム」(AIカメラも導入)

言われたことをこなすだけではなく、自分で課題を発見し、多様性を受け入れながら、解決に向けて行動する力、まさしく同校の教育理念である「自立・共生」した人間育成が今、求められている。

「新型コロナ、ウクライナと暗いニュースが続いていますが、学校は生徒が将来に希望を持てる『灯(ともしび)』のような存在でありたいと思っています。生徒が心から『楽しい!』と思い、自分が創造する明るい未来に向かって生きいきと過ごせる学校をめざしています。それには教職員の熱量が不可欠です」と安田校長。今回のプロジェクトに当たっては、「どんな学校にしたいか」を教職員に尋ねたアンケートをベースに、思いを一つにしたという。

京都橘中学校・高等学校 https://www.tachibana-hs.jp/
*京都橘の生徒の活動を発信する「橘の風」や各種SNSを更新中


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/west/kyoto-tachibana/