マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

学習、クラブ活動、学校行事に全力投球
規律ある学校生活が高い進学実績に結実

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校(京都府)

名刹、東寺(教王護国寺)の境内に建つ学校法人真言宗洛南学園のルーツは「綜藝種智院」。およそ1,200年前、真言宗の開祖・弘法大師が庶民にも門戸を開いた日本初の私立学校だ。仏教の「三帰依(仏法僧)」を現代の言葉に置き換えた「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」を校訓とし、能力を磨き、それを生かして社会に貢献できる人材育成に取り組んでいる。京大、東大を筆頭に難関大学への進学実績は高く、スポーツ、学術、クラシック音楽界で活躍する卒業生も多い。多彩な才能を開花させる教育について聞いた。


挨拶と掃除、学祖を偲ぶ「御影供」を尊び
進学第一主義ではなく心を育てる学園

古刹・名刹が数多い京都でも、世界遺産の境内が通学路という学校は洛南学園だけだろう。生徒たちは国宝・五重塔をのぞむ東寺の境内を通い、日々、仏教の教えにふれる恵まれた環境の中で、洛南生としての心と教養を培っていく。

「本校の進学実績を信頼していただけるのはありがたいですが、それはあくまでも結果です。私たちが第一にめざすのは挨拶や掃除のできる人間を育てることです」と北川辰雄校長は言う。登校時、校内に入る前にまず一礼する「校門一礼」で一日を始め、清掃活動で学び舎を拭き清める。

挨拶をするのは互いを認め、尊重すること。掃除が行き届いていれば自分も学友も気持ちいい。日常の雑事も心をこめて取り組めば、他者を気遣い、自分を高め、仏教の教えを実践することになるという考え方だ。同校が掲げる4つの実践項目、「規律正しく、清潔につとめ、情操豊かに、勉学に励む」もまた、生活に根ざした行いばかりだ。

北川校長は「進学実績という花を咲かせるには根を育てないとなりません。それは生活を整え、自己管理ができるように導くことです」と考えている。

また、学祖・弘法大師の月命日である21日に全校で行う法要、「御影供」の日は授業もクラブ活動もなく、講堂に集まって学校長の講話を聞き、吹奏楽部が献奏する。心を鎮めて自分を見つめ直し、感じたことや反省を作文にしたためる日だ。週1時間の「宗教の時間」では宗教の先生の話の後、感想や考えをノートに書く。

「自分を客観視し、文章にすることを自己の確立につなげてほしいのです。そこに悩みが表れていれば、教職員がフォローするきっかけになります」と北川校長は話す。


(左)毎月21日の「御影供」は無言で自分を見つめ直す大切な日だ
(右)環境が心をつくる。自分のまわりの環境を整えるのは自分だけでなく友達のためでもある。そうした気遣いを掃除を通して身につけていく

高校「空」コースを実力別に再編
「海」コースは五輪選手を多数輩出

学習カリキュラムは中高一貫ならではの先取り学習で1学年先の課程を学び、高校3年では受験対策に専念する。高校は2コース制で、最難関国公立大学・学部をねらう「空パラダイム」と、適性・希望に応じた進路を実現する「海パラダイム」に分かれる。空と海の名称は、弘法大師がたどり着いた悟りの境地「我が心空のごとく、我が心海のごとく」から名づけた。

昨年度、「空パラダイム」からは東京大学8名、京都大学56名、また国公立大学医学部医学科に42名が現役合格した。生徒の構成は附属小中学校からの進学組が6クラス、高校からの入学組が1クラスだ。渉外部長の中村信吾先生は「高校入試を突破して入学した生徒たちよりも、附属小中学校から育ててきた生徒たちの方が長丁場となるため実力差が出がちで、昨年から指導の見直しに取り組み始めました」と率直に話す。

弱点克服や学び直しが必要な生徒のために「空の総合探求」クラスを設け、外部から講演講師を招いて意欲を高めたり、学習計画を見直させたりしている。中村先生は「もともと馬力のあるエンジンを積んでいる生徒たちですから、学習習慣を見直し、自習力を鍛えれば3年間で大きく伸びてくれると思います」と期待している。

「海パラダイム」には、主に高校入学の生徒がじっくり実力をつけて難関大学をめざす「αプログラム」と、クラブ活動に打ち込みながら進路を実現する「βプログラム」がある。「βプログラム」は多くのトップアスリートを輩出しており、その活躍は在校生の励みになっている。

海パラダイムと改称する前にはなるが、100m走で日本人初の9秒台を記録した桐生祥秀選手や、今年の国内男子プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)チャンピオンシップで優勝し、MVPに輝いた宇都宮の比江島慎選手、バレーボール日本代表の大塚達宣選手も卒業生だ。

競技とともに学習にも打ち込み、強豪チームのある大学や有名コーチのいる大学、また国公立大学に進学する生徒もいる。北川校長は「近代スポーツは瞬時に状況判断できる知性が必要です。将来、指導者になるためにも進学して教養を深めてほしい」と言う。


(左)中学・高校の縦割りで3チームに分かれて競う体育祭
(右)運動系・文化系クラブともに多くの実績を残す同校・勉強にもクラブにも全力で取り組む

団結し、全力で取り組む体育祭が
受験のラストスパートを加速させる

同校は学校行事が盛んだ。高校では弘法大師が開いた聖地、高野山での合宿を体験する。学習尽くしの1週間。清掃や配膳にも励み、受験に向けて自覚と生活リズムを確立する。

伝統の体育祭は大いに盛り上がる。中学・高校の縦割りのチーム編成でパラダイムや学年を超えて団結し、インターハイ出場選手も進学クラスの生徒もハンデなしで競う。また、体育祭の華、応援合戦ではチームごとに華麗な背景画を制作し、創作パフォーマンスを披露する。この時期は高校3年生も受験勉強より体育祭の準備を優先。一緒に体育祭を創りあげた感動と絆が、受験を乗り越えるパワーになるという。

北川校長は以前「御影供」で、「てっぺんをめざせ」という講話をした。

「ただ単に集団の中で1位を目指すということではなく、てっぺんを目指すというのは自己ベストを出すこと。自分に打ち勝ち、進路を実現したら、その能力を人のために生かしてほしい。それが校訓の一つ『社会に献身せよ』につながります」

生活のすみずみに自己を高める機会を見出し、勉強、クラブ活動、学校行事に全力で取り組む。そうした学校生活を通して、自分らしい社会貢献の仕方を追求し、実現できる洛南人が育っていくのだ。

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校 https://www.rakunan-h.ed.jp


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