マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年11月号/取材:塾ジャーナル編集部

中高一貫の探究活動で得る「追求する逞しさ」
自ら考え、正しい判断のもと、自ら行動できる人材を育成

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部(大阪府)

9月22日、体育館2階アリーナにて開催された「基礎探究ポスター発表会」


2022年度からの学習指導要領の改訂に伴い、高校1年次に「基礎探究」、2年次に「発展探究」を新設した、東海大学付属大阪仰星高等学校中等部。さらにそれに先行して3年前から、中等部でも探究活動を採り入れてきた。その活動の一環として9月22日、高1生による「基礎探究ポスター発表会」が実施され、中3生も見学した。中高一貫ならではの強みを生かす探究活動を通し、建学の精神に基づく人材育成に注力する同校。その独特な取り組みについて、小寺建仁校長と中等部教務主任の山崎智代先生に話を伺った。


中等部から探究活動を徹底
他教科との連動でより深く

今回発表する高1生は、高校での探究活動導入に先行して、SDGsの課題と向き合う課題解決プログラムを中1から受講してきた1期生である。

中等部では、「課題の設定→情報の収集→整理分析→表現まとめ」の探究サイクルに沿って探究活動を実施。中学2年の時には、「10年後、戻りたくなる枚方のまちづくり」について研究し、商店街への取材を通したフィールドワークを行った。また淀川資料館では治水の歴史、意賀美神社では枚方の歴史について学び、枚方の魅力と課題をシンキングノートにまとめて情報分析。生徒同士で意見を交換し合い、自分たちの考えをまとめたポスター発表会を開催した。

「探究活動で扱ったテーマについては他教科での連動にも取り組んでいます。枚方のまちづくりでいうと、社会科では枚方の古墳時代について学んだり、英語では海外の人々に、SDGsの視点から自国についてアンケートをとったり。その結果を枚方のまちづくりに反映させました。こうして探究活動の深みを増すことができます」と中等部教務主任の山崎智代先生。研修旅行では鹿児島県大崎町へ行き、枚方との比較を勉強した。

「中学3年間を通して、このように学んできた高1生による今回のポスター発表会には、今の中3生も見学にきます。こうして中高一貫の6年間を通して探究活動に取り組んでいます」と山崎先生は語る。


当日は生徒同士で協力し合って分担し発表を行った。グループの前には人だかりが

「SDGs」と「人間の嗜好」から
個性的なテーマが続々と

当日は、同校の体育館2階アリーナにて357人の高1生を3〜4人のグループに分け、3つの時間枠を設けて一斉に発表。探究テーマは「SDGsの必要性について」と「人間の嗜好について」の2つから自由に選べる。見学者は興味のあるグループの前で聞くことができ、評価シートに感想を記入し、発表者に渡す。中3生以外にも保護者や大学関係者、他校の教員などを招き、活況を呈した。

「SDGsをつくることによって世界の問題は改善されているのか」「エコバッグを使っていることで海の豊かさは守られているのか」といったSDGs関連のテーマ以外に、「人によって食の好き嫌いが違うのはなぜか」「人はなぜ見た目で判断するのか」など、多彩なテーマのポスターをボードに貼付。発表が終わるごとにあちこちで拍手が沸き上がり、活発な質疑応答がされた。

あるグループは「SDGsがあるときと、ないときの違いは?」の問いを立てた。まずフィンランドや日本、南スーダンのSDGsの達成度や、SDGsで使われる金額、フィンランドや日本の取り組みなどについて発表。最終的にSDGsについて「もう少し他国との協力も必要なのではないかと思います」との結論を出した。

発表会に参加した行光紗芭さんは「中学で問いや仮設を立てて結論を出すという学びを得たことが発表会で生かせました。高校では外部生の人も入ってくるため、いろんな考えに触れることができました。それに自分の興味があることを調べるのは面白かったです。グループで作業を分担して協力し合い、共有し、新しい考えが生まれることで、チームワーク力とコミュニケーション力がつきました」。

また浅川綾音さんは「中学での経験を外部生の友人に教えたりして、コミュニケーションのきっかけになりました。みんなを引っ張っていけたと思いますし、協力して物事を進める大切さを知りました。中学の探究活動よりもバージョンアップして、より詳しく調査することが楽しかったです」と感想を述べた。


(左)「基礎探究ポスター発表会」に参加した浅川綾音さん[左]と行光紗芭さん[右] (右)多彩なテーマが扱われ、自分たちで情報を集め分析した結果がポスターにまとめられた

他教科でも、探究活動の
追求する力を発揮してほしい

「基礎探究のポスター発表会の意図は、テーマに対してみんなで話し合い一つの結論を導き出すことを経験し、ポスターにまとめる力や発表する力などを養うことです。見学してみて、思った以上にきっちりとまとめ聞き手を意識して発表していると感じました。この日へむけて、グループで協力して準備した発表だと思います」と小寺建仁校長。

中3生にも、高校生の今回の発表を見学して学んだことが、今後の自分たちのクラスなりグループなりの学びの核になってほしいという。このように、中高一貫の6年を通じて探究活動に注力しているのが、同校の教育の魅力である。

「さらに探究活動で学んだ追求する逞しさを、他教科にも生かしてほしいと期待しています」

2019年には、「自主性・行動力を持った人物」「グローカルな視野を持った人物」「課題発見・解決力を持った人物」「多様性を受容できる人物」の育成を標榜。さらにTG10Cs(自分で学ぶチカラ、健やかに生きるチカラ、社会を認識するチカラなど10のチカラ)を設定した。
 「目指すのは、自ら考え、正しい判断のもと、自ら行動できる人材の育成です。TG10Csをさらに明確に具現化することで、このチカラを習得させていきたいです」

「若き日に汝の思想を培え 若き日に体躯を養え 若き日に汝の智能を磨け 若き日に汝の希望を星につなげ」すべてはこの建学の精神につながるという、同校の教育のあり方に大いに心惹かれる取材となった。

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部 https://www.tokai-gyosei.ed.jp/


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