次世代を担う塾長たち 掲載:塾ジャーナル2021年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

身体づくりと学習指導を通じて健全な成長をサポートする
岐阜県のユニークな教育施設

学習塾ですが、球速5キロ上げます。できなければ全額返金!!

スポーツトレーナーで接骨院院長でもある小山圭介氏が、2019年に野球アカデミーとして開校。野球インストラクターで高校教員免許を持つ川村将輝氏が塾生の学習指導も担当するように。その後、民間学童保育、学習塾の部門を設けGIFU SPORTS FORESTに発展。現在は野球以外の競技をする生徒も受け入れている。運動と学習の指導を通じて、スポーツに打ち込む小中学生の進学や共働き家庭の子育てをサポートするユニークな教室の軌跡と今後の展望を聞いた。


運動と学習の指導と学童保育の
複合型教育サービス施設

岐阜市の北隣、羽島郡岐南町の住宅街の一角。ガレージのような外観の施設で子どもたちが反復横跳びや腿上げスキップのトレーニングをしている。学習塾らしからぬ雰囲気のGIFU SPORTS FORESTは小中学生を対象に運動教室と学習指導、学童保育などの部門を併せ持つ、子どもが健やかに成長するために集う場所だ。

始まりは2019年、接骨院院長でもある小山圭介代表が開いた野球アカデミーだった。小山代表もバドミントン選手として活躍してきたスポーツマン。接骨院で部活動で故障した小中学生たちを診ていると、基礎的な身体づくりをしないまま技術優先の指導を受けているためにケガをしたと思われるケースが多いのが気がかりだった。

身体を守りながら強くなってほしいと考え、最初は野球少年を対象に、技術と身体能力の向上、そしてケガをしないためのトレーニングをする教室として開校。「レギュラーになりたい」「野球強豪校に進学したい」という小中学生が集まってきた。

翌年、この野球アカデミーにインストラクターとして加わったのが川村将輝塾長だ。小学校から野球に打ち込み、大学では数学と情報の高校教員免許を取得。卒業後は企業勤めをしながら「指導者として生涯、野球に関わりたい」という夢を持ち続けていたところ、縁あってGIFU SPORTS FORESTに。

やがて保護者から「うちの子は野球に夢中で、学校の成績がふるわなくて困っている」という声を聞くように。そこで教員免許を持つ川村塾長が「学校の宿題を見よう」とトレーニング前に学習タイムを設けることにした。

学校の教科書と教材のみで指導
まずは学習習慣を身につける

「野球アカデミーに通う中学生の多くは強豪校に進学を希望していますが、スポーツ推薦といっても一定の学力が問われます。とはいえ受験専門の進学塾のペースや熱量には馴染めない子が多い。野球に集中する時間を確保しながら、推薦入学に必要な学力を伸ばしてあげたいと無料で始めたんです」と川村塾長は振り返る。

宿題や提出物はこの時間に済ませてしまい、テストが近づけば弱点強化に取り組ませる。もともとスポーツで鍛えた集中力のある子たちなので、学習のやり方を教えて持続できるように見守ることで、ほとんどは成績がアップした。それが口コミで広まり、野球をしない生徒の学習指導も頼まれるように。「地域の家庭に喜んでもらえるなら」と2020年に学習塾部門、フォレストスタディを開設することにした。

学習指導は毎回、5分間のカウンセリングから始まる。学校授業で学習したこと、つまずいているところはないか、定期テストや小テストの結果はどうだったか。その上で上位校進学を狙うための学習塾ではなく、学習習慣のない子に寄り添うところから始めたことなので教科書理解と宿題に取り組ませるのが中心だ。新たに教材を購入することがないので費用を抑えることができ、保護者に喜ばれている。

成績や進路についての保護者をまじえての面談はいつでも応じる。また無料で定期的に行っている学力診断テストは塾生でなくても受けることができ、それをきっかけに入塾する生徒もいる。

運動部門、学習部門を拡大
プログラミング教室も新設

さらに学童保育部門もスタートし、小学校低学年の子どもたちを放課後、預かるように。ここでも学習指導のできる講師が宿題を見ている。また、学習指導要領に新しく加わった科目、プログラミングを教える教室も昨年度末に開講した。人気ゲーム「マインクラフト」を使うICT教材を導入し、小学校低学年からプログラミング学習指導をしている。

一方、野球以外の競技に打ち込んでいる小中学生からも「基礎的なトレーニングに参加したい」という希望があるため運動教室を新設し、バドミントン部やバレーボール部で活動している生徒を受け入れることにした。現在は学習スタッフ5人、トレーニングスタッフ4人で野球アカデミー、運動教室、学童保育、フォレストスタディ、プログラミング教室を運営している。

スタッフと子どもたちの距離は近く、兄や姉のような間柄だ。また、どの教室も学年別に分けていないので年長者がリーダシップをとって気遣い、励ますムードができあがっていくという。
保護者とも密なコミュニケーションを心がけている。保護者からよく聞くのは「家にいると何時間もゲームばかりしている。ガミガミ言いたくないけれど子どもと喧嘩になってしまう」という悩みだ。チャイルドカウンセラーと家庭療法士の資格を持つ川村塾長は、そんな親子の仲を取り持つ時もある。

「子どもには『楽しいことを先にやるのではなく、やるべきことを済ませてからにしよう』と約束してもらいます。親御さんには『お子さんに勉強しなさいと言いながら大人が隣の部屋でテレビを見ていたりしませんか』と確認します。勉強しやすい環境ができていないケースがありますから」と川村塾長。

また、小山代表は医療からの専門性を生かし、部活動で故障を抱えた塾生のケアを担当。メンタルとフィジカルの両面から塾生たちの成長を支えている。

生徒の成長をサポートし
スポーツ推薦で合格実績

創設から3年。野球アカデミーからスポーツ推薦で強豪校への合格実績を出してきたことでGIFU SPORTS FORESTの認知度が高まり、入塾希望者や学童保育への応募が増えつつある。また、昨年の夏休み期間には崩れがちな学習習慣と生活リズムを維持できるよう、フォレストスタディで10日間の「学習預かり」を実施し、特に共働き家庭の保護者に喜ばれた。

川村塾長は今後の展望について「スポーツは得意だけれど学習習慣を確立するのが苦手だった子の勉強をサポートしてきたノウハウで、学校に行きたくない子たちにも対応できるかも知れません。いろいろな子が夢をかなえられるように応援していきたいです」と語る。
子どもたちが好きなことに打ち込みながら成長できる場所として、地域の信頼がさらに増していきそうだ。

GIFU SPORTS FOREST  https://www.gifuspo.com/