掲載:塾ジャーナル2022年11月号

【特別寄稿】
英語学習に「語源革命」を

大学受験アドバイザー 宮崎 貴行


「見たことがあるのに、訳が出てこない……」

このように、多くの受験生が過去問を解いている時、生徒たちは一度暗記したものでも時間の経過とともに、まるで初めて見た単語のような反応をしませんか? 私が今取り組んでいる事は、英単語が覚えられない生徒たちに語源を知ってもらい、意味記憶できるようになってもらいたいということです。

高校での入試対策講座で、「英語が苦手な人ってどれくらいいるのかな?」と質問すると、残念ながら40人中36人くらい(9割)の生徒さんが苦手と答えます。理由は「単語を覚えても忘れてしまうから」。長文が読解できず、苦手意識が強いようです。

私は最初の指導で、まず「“company”の意味を答えてみて」と尋ねます。多くの生徒たちはすぐに「会社!」と元気に答えてくれますが、「他には?」と質問すると、しばらく経ってから小さな声で「仲間……?」と聞こえてきます。ですが、それ以上はなかなか出てきません。

次に、「『I enjoyed your company yesterday.』この英文はどう訳す?」と質問すると、生徒たちは会社や仲間という訳ではしっくりこないことに気づきます。

「みんなはそもそも、“company”をなんで会社と訳したの? カンパニーのどの部分を会社だって思った?」
この質問にはみんなシーン……。
「『カンパニー』という音を会社って紐付けして暗記した?」
みんな深〜く頷きます。

「英語は言語だから語源があって、頭と胴体と尻尾の部分があるんだよ。Companyを分けるとcom(意味:一緒に/接頭辞)、pan(意味:パンを食べる/語根)、y(意味:人、仲間/接尾辞)になっていて、『一緒にパンを食べる仲間』が語源なんだ」と説明すると、「え? そうなの?」とみんな目を見開きます。「あ、それって『同じ釜の飯を食べる』と一緒?」と発言してくれる生徒もいます。そうなれば、もう語源のコツを掴んだと言えます。

これで、ちゃんと意味記憶ができたことになります。一緒にパンを食べる→仲間→会社、同僚、そして同席という意味もあって、さっきの英文は「昨日はあなたと同席できて楽しかったです」。そんな訳が自然なんだと説明すると、ほとんどの生徒がすごく納得した顔で頷いています。

このように、まずは接頭辞・語根・接尾辞を知ってもらい、単語の意味を理解するように指導しています。確かに音読も大変重要な学習方法なのですが、音で訳を暗記するだけではどうしても忘れてしまいます。辞書を引く時も、語源(語義)を飛ばして、日本語訳を暗記する生徒たちが多い印象があります。

語源を勉強する3つのメリット
①英単語が覚えやすくなる。
②知識がつながり面白いと感じる。
③知らない単語でも語源から意味が推測できる。

漢字の場合、部首の意味を知っていれば、漢字を覚えやすくなるのと同じで、語源を知っていれば、接頭語や接尾語などから英単語の意味を推測しやすくなります。例えば、「telescope」「telephone」「telework」「television」に共通する接頭語「tele」は、「遠くの」「遠方の」という意味があります。

接頭辞、語根、接尾辞の3つのパーツ

○接頭辞「ex」には「外に」という意味があります。(ex.「export」)
 例えば「外に」+port「運ぶ」で「輸出」という意味になります。ほかにも接頭語に「ex」を持つ単語は、exit(出口)、extension(拡張、エクステ)、extraordinary(並外れた)などがあります。

○「in」を接頭語に持つ単語は多くあります。(ex.「import」)
 「in(中に)」+「port(運ぶ)」で「輸入する」という意味になります。そのほかにはinstractor(インストラクター)、install(インストール)、impress(印象付ける)などがあります。

○上に「sur」。接頭辞は「上に・超えて」という意味があり、「surplus」は「sur(上に・超えて)」+「plus(加えた)」で「過剰」となります。英単語の例はsurprise(驚かす)、survive(生き残る)、surcharge(追加金)などです。

○「sub」の意味が「下に」であることを知っていると、「submarine」=「潜水艦」であるのが納得できますね。ほかにも、subconscious(潜在的な)、subway(地下鉄)などの単語で「sub」が使われています。

このように、接頭辞を知っていれば、知らない単語もある程度意味を予測できるようになります。

最初に覚えたい語根

最初に覚えたい語根については次の4つを上げます。form(形づくる)、spect(見る)、port(運ぶ)、ject(投げる)です。

①formには「形づくる」という意味があります。
例えば「reform」は「re(再び)」+「form(形づくる)」で「つくり直す」という意味になります。inform(知らせる)、formal(正式に)、uniform(制服)、perform(演じる)、conform(従う)などが例として挙げられます。

語根を覚える際は、「語根(form)」+「覚えやすい代表例1つ(reform)」をセットで覚えていくのがオススメです。

②spectには「見る」という意味があります。
例えば「inspect」は「in(中)」+「spect(見る)」で「調査する」という意味です。ほかにも下記のような英単語に「spect」が使われています。respect(尊敬)、prospect(見込み)、spectacle(光景)。また、「spector(観客)」「spectate(観戦する)」など、接尾辞を変えるだけで別の意味・品詞になる単語も多いのです。

③portには「運ぶ」という意味があります。
「portable」は「port(運ぶ)」+「able(~できる)」で「持ち運び可能な」という意味になります。ほかにも、transport(輸送する)、deport(離れる)、airport(空港)、teleport(転送する)などの関連語があります。

④jectには「投げる」という意味があります。
例えば「project」は「pro(前に)」+「ject(投げる)」で「計画する」という意味になります。その他の関連語にはobject(目的)、reject(拒否する)、inject(注射する)、subject(題目)などがあります。

接尾辞については、「~のような」-ly、「こと」-ment、「~できる」 -able、「~に満ちた」-fulなどが挙げられます。例えば、接尾語に「ment」を持つ単語には以下のようなものがあります。amusement(娯楽)、announcement(声明)、appointment(約束)。また、「available」は「avail(利用する)」+「able(~できる)」で「利用できる」という意味の形容詞になります。

生徒たちには、図1のような語源マップ(雛形)を自分で作成してもらい、図2では辞書で語源(語義)も意識してもらっています。少しでもご参考になれば幸いでございます。


語源マップ(雛形)


語源指導には辞書を活用

プロフィール
大学受験アドバイザー
宮崎 貴行 氏


京都府出身。同志社大学(経済学部)卒。【指導教科】英語/現代文(大学受験指導)。通信制高等学校/進学コース講師(英国を指導)。公立高校で進学対策講座を、大学で公務員試験対策講座(文章理解)を行っている。


◆購読申込に関するお問い合わせはこちら
 https://manavinet.com/subscription/

◆『塾ジャーナル』に関するご意見・ご感想はこちら
 https://forms.gle/FRzDwNE8kTrdAZzK8

◆『塾ジャーナル』目次一覧
 https://manavinet.com/tag/jukujournal_mokuji/