掲載:塾ジャーナル2022年5月号

女の子よ、大志を抱け!—女子校で学ぶことの意義―

教育アドバイザー 鳥居 りんこ


ある集まりで、人気難関男子校のご重鎮が“酒のつまみ的な話”として、このようなことをおっしゃったことがある。

「もし、難関大学の合格実績を上げたいと思うならば、隔年で共学化すればいい」

つまり、今年は男子のみの募集で、翌年は女子のみの募集、以降も隔年。「女子学年に挟まれた男子学年の奮起はドエライことになる!」というご意見に、私は「是非、隗より始めたも~!」と申し上げたのだが、「ウチは(合格実績がすこぶる良いので、やる必要がないから)今後も男子校一筋!」と一蹴された(なんだ、提案だけかいっ!)。

私個人はこの斬新な提案に大笑いしていたのだが、傍にいらした人気難関女子校の偉い先生方には極めて不評で、「女子にとって、男子がいることでいいことはひとつもない!」と言い切られたのだ。

そこから、議論は白熱。その場にいらした女子校、男子校、共学校の先生方のプライドを賭けた熱い教育論に、惚れ惚れしながら聴き入っていた夜があった。

しかし近年、多様性やジェンダーという時代の流れと各校のお家事情が影響し、女子校からの共学化が多く、しかも、そこが受験生の人気を集めているという現象はご承知の通り。「すわ!『女子校氷河期時代』突入か⁉」と思われがちかもしれないが、ドッコイ、女子校も中々に頑張っているのだ。

今回は「女子校だからこそ、生徒を伸ばす教育がある!」ということにフォーカスして「女子校」についての話をしてみたい。

「女子校に向いている子チェック」を
してみよう

私事で恐縮であるが、「なんちゃってYouTuber」としても活動している。そのチャンネルの中で「女子校に向いている子チェック」というものをアップしているのだが、まずはそのチェック項目を見て頂きたい。

①サバサバ系(人は人、自分は自分と割り切れる)
②ノミの心臓の割には面白がりな面があり、楽しいことには首を突っ込みたがる
③決めたからには全力投球
④オタクである
⑤群れるのが嫌いな1匹狼タイプ
⑥連れションする子もしない子も、どっちも受け流せる
⑦天然系
⑧ルールを破ることには抵抗感がある
⑨自分のルックスがめちゃめちゃ気になる
⑩みんなを笑かすことが好き

このうち、チェックが1ポイントでも付けば「あなたのお子さんは女子校向き」としたお母様たち向けお遊び動画である。1ポイントとしたのは、女の子は基本、柔軟性と共感能力に長けているので、どの子であっても共学・女子校ともに楽しめるからだ。あえて、診断してみるならば……程度の話である。

女子校は本来
最先端教育の学び舎なのです

しかし、私は女子校こそが真の「漢」をつくる場所であると思っている。

過去、お嬢様学校で名高い名門女子校の名物先生が、「お嬢様は絶滅しました」という名フレーズで母たちの心を鷲掴みにしていたことがあるが、そもそも、女子校は創設時からして、お嬢様学校でも良妻賢母養成学校でもないのである。

私学は特に“理念ありき”であるが、女子校の黎明期を辿れば、明治時代に宣教師が設立した学校と明治から大正時代の「女性解放運動」と連動して創られた学校に分けられる。「女に教育は要らない」という時代に、「必要です!」と言い切り、設立されていることを忘れてはならない。

布教目的とはいえ、言葉も通じぬ異国に来て「女子にも教育を」と、文字通り命がけであったろう宣教師たち、男尊女卑が色濃く残る中でも、女性の自立を促すために学校を創った先人たち。女子教育は「守り」どころか、常に「攻め」の教育、時代の最先端で、かつ、女性の地位向上、更には恒久平和という未来を見据えるものであったはずだ。

それらを前身とした女子校が今なお、堂々と建っていることに、まずは女子校の先生たち自身が誇りに思って欲しいと願っている。

女子校で育つ醍醐味

「男として、女として」「男らしく、女らしく」という区分けから離れて、まず「人として」どうあるべきなのかを6年かけて、じっくりと考えられる環境こそが女子校の醍醐味。「結局は目立ちたがらぬ共学(出身)女子」という話もよく聞くが、女子校では、男子がいることによる遠慮がなくなり、ジェンダーバイアスから解放されるので、自己肯定感がつきやすいといわれている。

数多くの女子校出身者に取材しているが、彼女たちの多くが「男子がいることによる遠慮がなくなるため、失敗覚悟でとりあえずやってみる!」のだという。

例えば、文化祭などで重い用具を持つ、高いところに登って大工仕事をするなどに向いている“筋肉差”“体力差”は、女子校にいる以上は性差ではなく、個体差になる。

したがって、一人で運べないならば、知恵を働かせ、協力し合わないといけないし、誰かがやらなければならない肉体労働であれば、逃げてばかりもいられない。少なくとも、男子の目を意識することがないので、「これに手を挙げると(男子にも女子にも)変なヤツと思われ、嫌われる要因になるのではないか?」などという余計な心配が薄れ、安心して「やりたいから、やる! それが何か?」と開き直れる利点に優れる面があるのだ。

彼女たちは口々に証言する。そうこうしている内に「『あら? 私でも出来ちゃった⁉』という結果が出るから、それが自信になる」と。

私は自分の特技に「(数校だけだが)出会った女の出身校の嗅ぎ分けができる」を挙げているのだが、その数校の女子校OGたちは特別な芳香を放つことが多い。男子校や共学校出身者には、あまり感じたことがないので、自分でも不思議だ。

これは、口で説明するは難しいのだが、あえて文字にするならば「その学校の理念通りの女が目の前にいる」というイメージ。その多くが「自分の意思で自分の人生を歩んでいる」といった感じなのである。

その女性たちには、仕事や取材、あるいは私的懇談会、あるいはSNSなどの場所で出会っているのだが、実はその数校のOGたちを見て、私はこう思っているのだ。「幸せになる率が高い学校」だなぁ……と。

私なりに分析するに、その理由は主に下記2つの母校の力が影響していると見ている。

女性には出産という役割があるために、生涯を通したキャリアプランを早い時期に意識することは大切なことだ。その女子校の多くが早くから、このことを見据えて本音で、しかし、ゆっくりと「人生、どうしたい?」と考えさせ、さり気なく「何とかなるから、まずはやってごらん」と促している点があること。

さらには、先生方の“寄り添い力”にあるのではないかと推察している。女性は「共感と励まし」を必要とする生き物だ。女子校の教師陣は、さすがにプロ。絶妙のタイミングでこれを行っている瞬間を私自身、過去、何度も目撃しているのだ。

そして、最後にこのことに触れておきたい。
女子校出身者は人間関係に強くなる。

共学だろうが別学だろうが、男女差なく中学生時代は人間関係で揉める時だ。女子校でいえば「あの女はこう言い、この女はこう言う」で自分の意見は1個も通らず、心の中はイライラMAX状態であることが普通だが、それが、アラ不思議、中3あたりで一斉に飽きることが特徴だ。

多分「みんな違って、みんないい」という金子みすゞになるのだと思うが、高校生以降は卒業しても、人間関係を俯瞰で見られるような面があり、ある意味余裕を持って人間関係を潜り抜けていく女性が多いように感じている。特に友人たちとは嫌というほど本性を見せ合いながら、成長していく土壌に溢れているので、結果、生涯の友という絆は強いように思うのだ。

男子との成長のスピードの差、物の感じ方や学び方、取り組み方の差を踏まえ、女子に適した成育環境が整っているということが、女子校の強み。

*****

女子校に特化して語ってきたが、当然ながら、男子校には男子校の良さ、もちろん共学校には共学校の良さがある。冒頭の先生方の議論に戻るが、「これだけ熱い先生がたくさんいる中から、好きな学校を選べるんだもん! 別学だろうが、共学だろうが、中学受験って、やっぱいいなぁ」と思う私である。

プロフィール
教育アドバイザー 鳥居 りんこ 氏

文筆家、教育アドバイザー。「偏差値30からの中学受験」シリーズ(学研)の著者。「湘南オバちゃんクラブ」という主に中学受験生母と中高一貫校生母が集まるサイトを20年に渡り主宰。プレジデントオンライン、ダイヤモンドオンライン、サイゾーウーマン、リソー教育などでコラムを連載中。
■鳥居りんこちゃんねる  https://www.youtube.com/channel/UCaWz4x5eEhDo5ShdMV1cwwQ

■【中学受験】あなたの子ども女子校向き?女子校に向いてる子チェック!【女の子編】
https://www.youtube.com/watch?v=nJvRHfCej3A&t=2s


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