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中学・高校受験:学びネット

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2020/9 塾ジャーナルより一部抜粋

2021年の首都圏中学入試を考える

株式会社エデュケーショナルネットワーク
開発本部情報企画部 データ課 池田 亨

     

コロナ禍がなければ……

 図1の棒グラフは、群馬県を除く関東1都5県(以下同じ)の義務教育学校を含んだ小6児童数の推移、折れ線グラフは私国立中学や公立一貫校に、少なくとも1校は出願し、中学受験に挑戦した児童数の弊社推定である。受 験年度基準で、グラフ右端の2021年は現在の小6を表す。小6の児童数は2018年が最少だったが、2019・2020年と増加、2021年は少し減るが1都3県に限ればまだ増加が続いている。中学受験者数は2015年が底で、2016年からは増加に転じ、特に2016~2018年は児童数の減少にもかかわらず中学受験者数は増加、2020年は最高になった。

 中学受験者数の増加は良質の中高一貫教育への期待が高まったためだ。かつて見られた「ゆとり教育」への不安とは異なり、急速に変化していく社会への対応力を身につけさせたいという保護者の意識が中学受験に結びついて いる。グローバル化への対応、STEM教育、課題発見・解決能力の育成などは高校受験が間に挟まる教育体制では伸ばしにくい。だからこその中学受験である。

 こうした保護者の期待に応えて、2021年度も5校の新設校が誕生する。「広尾学園小石川中学校」「川口市立高等学校附属中学校」「茨城県立水戸第一高等学校附属中学校」「茨城県立土浦第一高等学校附属中学校」「茨城県立勝田中等教育学校」だ。詳しい紹介は他に譲るとして、各校とも現在中高一貫教育に求められる内容を充実させるとしている。

 既存校でも男子校の芝浦工業大学附属と女子校の聖徳大学附属女子が共学化、後者は校名を「光英ヴェリタス(VERITAS)」に変更する。コース制では江戸川女子が国際コースを、佼成学園がグローバルコースを新設、昭和女子大附属昭和は中3からの選択だったスーパーサイエンスコースを中1から別募集にするほか、開智中高一貫部は一貫クラスの募集を止めて全面先端クラス化、その中に新たな4コースを設置する。ほかにも駒込や北鎌倉女子などもコース制を見直す。やはり教育内容を充実させることが目的だ。

 今までなら、上昇している中学受験 志向と、新設校や大きく変わる学校の効果で来年も中学受験生は増加するだろうと申し上げたいところである。しかしコロナ禍という、誰も予想していなかった事態になった。

(図1)小6児童数と中学受験者数(群馬除く1都5県) 受験年度

大手公開模試の受験者数

 図2のグラフは6・7月の「統一合判(首都圏模試センター)」「日能研模試」「合不合判定テスト(四谷大塚)」「サピックスオープン」の4大模試の受験者数の合計である。こうした大手公開模試の受験者数は翌年の中学受験者数のバロメーターとして従来から活用されてきた。

 受験者数はグラフ左端の2001年から横ばいを含みながら増加、2009年以降減少に転じ、2014年からはサピックスオープンが加わったこともあって再び増加、昨年は最高になった。しかし今年は11%減となっていて、2014年を少し下回る受験者数だ。新型コロナウイルス感染症対策で在宅受験に切り替わった模試もあり、在宅で申し込んだものの答案を提出できなかった受験生も現れた。

 小6児童数は2001年が34万3000人、2002年が33万9000人で、この間増減はあったが2021年も33万9000人である。単純に考えれば2002年よりも模試受験者数が多いので、来年の中学受験者数は2002年よりも多いものの、今年よりも11%程度減ってもおかしくない結果である。

 このように書くと、「この20年間に公立一貫校が増えた、グラフの2009年〜2013年のような、模試受験生の減少が翌年の中学受験者数に影響するような状況ではない」というご意見もあると思う。確かに、公立一貫校が第一志望の受験生は、出題形式が違う大手公開模試をあまり受験しないが、7月の首都圏模試センターの適性検査型模試もやはり受験者数が少し減っている。この模試は中学受験界ではまだ小さいが、結果はしっかりと受け止めるべきだろう。来年に向けて途中で中学受験を断念する児童を減らす努力が中学受験関係者に求められている。

(図2)6・7月大手公開模試受験者数推移

中学受験を断念させないために

 受験生が途中で中学受験を断念する理由は主に次の3つである。

①学校見学・説明会参加等が不十分で納得できる受験校を決められない。
②塾等の休講や、オンライン授業は受けていても学習の遅れで志望校に届く自信がない。
③経済状況から今後の家計の状況が不透明で、保護者が学費を払いきれる自信がない。

 ①は保護者に「お子さんに合う良い学校を努力して探してください」とお願いするしかないが、オンラインの説明会だけでは保護者が悩むのは当然だろう。受験関係者は改めて学校案内に目を通し、ご自分でもオンライン説明 会を視聴し、保護者にいくつかの学校を提案していただきたい。今後は感染防止対策を施した見学会や説明会が増える。ぜひ予約して参加するようお勧めしていただきたい。同時に受験相談には積極的、かつ、丁寧に対応していただきたい。

 ②は、もともと多くの進学塾は遅くとも小6の夏期講習までに一通りの範囲を修了するように指導している。今年は学校の夏休みの関係で夏期講習も例年並みの実施は難しかったと思うが、範囲の修了が秋になったとしても焦らずに進めて行きましょう、という立場に立つことが大切だ。中高一貫校も出題にあたってはあまり細かな知識は問わないなどの配慮もある。受験関係者にとってはお手間であることは重々承知だが、生徒一人ひとりの長所や弱点に合った学習プログラムを組んで対応していただきたい。

 ③は受験関係者の努力だけでは難しい。コロナ禍で悪化した景気の回復が遅れれば、せっかく入学しても6年間の学費が払いきれるのか不安を持つ保護者が増える可能性は高い。前出のグラフで2009~2013年の大手公開模試の受験生が減っているが、その理由の一つがリーマン・ショック後の景気の冷え込みで、学費支払いに不安を持つ保護者が増えたことだった。

 入学時点では最近増えている特待生入試などがあり、また祖父母の支援が期待できる家庭も少なくない。保護者が不安になるのは途中で学費が払いきれなくなる事態である。しかし、リーマン・ショック時と現在とでは、就学支援金など高校での行政の学費支援が大きく異なっている。1都3県には国のほかに都県独自の上乗せもあり、北関東各県は国の制度のみで学費が賄える学校が多い。なかにはいったん立て替える必要があるものなど、必ずしも使いやすい制度ではないが、今年からは制度が大幅に拡充された。そうなると高校に内部進学するまでの「つなぎ」がポイントになる。

 声の教育社や旺文社などの学校案内の巻末には私立各校の支援制度が掲載されているが、家計急変に対しては支援期間が1年以内だったり人数制限がある学校も見られる。しかし、問い合わせてみると、例えば工学院大附属や 麹町学園女子などは状況によっては「1年以内」でも延長可能とのことだ。中3まで乗り切れれば高い続けることができるのである。

 私立中高一貫校に強く要望したい。万一のことがあっても学びを止めないために学校が支援する、家計急変は仕方がないことだ、安心して受験するよう呼びかけていただきたい。しかし、学校経営や教職員の待遇に影響するような支援ができないのは当然である。弊社では現在2021年度開始を目標に、OBOGやサポーターなどに広くオンラインで寄付をお願いするWEBサービス「Yellz(エールズ)」を準備している。もともと設備の充実や部活動支援などを目的に準備を始めたが、在校生の支援にも十分活用できる。既存の後援会等だけでなくこうしたものも活用し、学費支援の拡充に努めていただきたい。

入試と学校選択

 公立高校入試では5月13日の文科省通知に基づき、入試の出題範囲を狭める都県が増えている。文科省通知は中学校や小学校も高校入試と同様に配慮するように求めているが、本稿執筆段階では中学の出題範囲について何らか の動きを見せている学校は僅かだ。中学入試では活用型の出題が増えていることもあり、例えば教科書で6年生の後半に出てくる内容を直接知識として問うような出題を避けるような配慮は出るだろう。

 入試の方法では面接のオンライン化は進みそうだ。ペーパーテストのオンライン化も動きはあり、例えば答案をスマホで撮影して指定時間までに専用サイトに送ることなどが検討されているが、信頼性の問題もあって一気に広 がるとは考えにくい。受験生が多い大規模入試校の中には「3密対応」で会場を借り増しする学校もあり、机の配置に余裕を持たせた上で、従来の方式での実施が中心になりそうだ。

 学校選択については、2020年の入試でも首都圏では東京都心志向の学校選択が目立っていた。コロナ禍で受験生の選択がどのように変化するか予測できる段階ではないが、例えば満員電車はコロナ禍の当初、3密」の権化のように言われたものの、高速コンピューターによるシミュレーションをもとに「混んでいても大声で話している人がいないので、消毒に気をつければ大丈夫」といった報道もあり、怖いのは「マスクをしない密状態での会話」という見解も聞かれる。しかし、どの話も現時点で検証できているわけではない。満員電車での通学を過度に怖がる必要はなさそうだが、不安な保護者もいるだろう。ラッシュとは逆方向の学校選択が増える可能性はある。その場合、都心にあればもっと人が上がっただろうに」と受験関係者に言われている学校の人気が上がるのかもしれない。


●池田 亨氏プロフィール

(株)エデュケーショナルネットワーク データ課勤務。信和学園、(旧)富士学院、栄光ゼミナール、TAP進学教室で授業、進路指導等を担当。現在はエデュケーショナルネットワークにて塾内模試の学校偏差値設定、塾・教育関係者向けの資料集・ニュース・レポートの執筆、弊社サイト「スクールポット」の「受験マニアックス」のコーナーを担当。

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