サイト内検索:
 
中学・高校受験:学びネット

 学びネットは、中学、高校受験のための情報ページです。学校紹介や塾経営にお役立て下さい。

今月号の紹介 学校散策 塾長のためのマンスリースケジュール 購読案内 会社案内
特集・スペシャル
   
2020/7 塾ジャーナルより一部抜粋

「伝えたい」を育てる
最大の英語教育

 

ベリタスアカデミー 宮崎 貴行氏

 

「自己紹介」から見る
日本の英語教育の弱点

 私は20代の7年間、旅行会社で海外教育旅行の営業開発そして添乗員として、高校生の短期留学のコーディネートをしておりました。渡航先は、アメリカ(ボストン)、サンフランシスコ、カナダ(バンクーバー)、ビクトリア、オーストラリア(メルボルン、アデレード)、ニュージーランド(オークランド、クライストチャーチ)を中心に、2週間~3ヵ月の短期留学を高校様へ企画・ご提案し、合計50回以上の教育旅行の添乗経験がございます。

 『海外で感じた日本の英語教育の弱点』についてお話ししたいと思います。高校1・2年生を対象にした短期留学をコーディネートしていたのですが、海外の高校に日本の高校生を受け入れていただく『国際交流』を目的としておりました。

 私自身も現地の高校の先生宅にホームステイさせていただきながら、毎日職員会議に出席していたのです。日本の高校の職員会議には出席したことはありませんが、引率されていた日本の高校の先生方は、「朝の職員会議でみんなコーヒーを飲みながら、ジョークを交え、笑いが絶えない光景は見たことがない」と驚いていらっしゃいました。

 そして海外で感じた日本の英語教育の弱点について、現地の高校の先生から、このように指摘されたのです。

 「日本の高校生たちは、自己紹介はできるが、趣味や好きな食べ物、得意なスポーツのことしか話さないのはどうしてなの?」

 「私たちの生徒たちは、将来のビジョンや夢、principle(信条)を話します」

 海外ではこの『principle(信条)』を持つことがすごく大切なことだとお聞きし、これは日本の英語教育の弱点かもしれないと大きなショックを受けたことを鮮明に覚えています。

 そして現地の先生たちが、短期留学にきている日本の高校生たちに「将来、大学で何を学びたいのですか?」と聞くと黙ってしまう。「将来どんな仕事をしたいの?」と聞くと「○○になりたいです」という答えは返ってきますが、「○○になってどんなことがしたいの?」と聞くと、何も答えられない。だから我々もどう対応すればいいか悩んでいます。

 私は、現地の先生のこの言葉を聞いたことが、日本の英語教育に貢献しようと思った決め手になったのです。なぜかと申しますと、ヨーロッパやアメリカ、カナダ、オセアニアだけでなく、アジア(シンガポール)、韓国などへ高校生の教育旅行で添乗した際にも、現地の先生から同じような指摘を受け続けたのです。

 私は、日本の高校生たちの「真面目さ」「勤勉さ」は、海外の同世代の子たちには決して負けていないと思っていました。足りないのは、英語でのコミュニケーションのスキルではなくて、実は『伝えたいものを持っていない』ことだと感じたのです。

英単語の読み方のルール
「フォニックス」

 ただ、日本の英語教育の実践的な課題をお話しすると、日本の高校生は、当時は中学1年生から英語を習うわけですが、まずアルファベットの大文字・小文字を習いますね。A・B・C『エイ、ビー、シー』と習い、中間テストで点数がつきます。そして、ある瞬間から、「I like cat」が登場します。「Cat(キャット)って習ったけど、Cは『シー』ではないの?」「なんでcaが『キャ』に?」

 その他にも、Gは『ジー』と習いますが、G e t は『ゲット』になる。「『ジー』の読み方はどこにいったの?」というようなハテナが、子どもたちにはどんどん蓄積していきます。要領の良い子たちは、テストで点数を取るためには、それで覚えればいいと多少の違和感は無視しながら覚えてしまいます。

 私が塾長時代の極端な例ですが、英語の単語の小テストで野球『baseball』と書けていた、英語がとても苦手なある生徒に「えらいな、よく書けたやん。たくさん練習したの?」と聞いた時、『衝撃の答え』が返ってきたのです。「先生、英単語を覚えるにはコツがあるんよ。野球はな、『ば・せ・ば・じゅういち』って、覚えればいいや」

 しばらく沈黙しながら、確かにこれで野球の単語テストで○はもらえる!でも根本的に何か違う……。そのとき私は、指導者として申し訳ない気持ちになりました。どうにかして点数をとろうとする生徒たちの気持ちに応えるには、ちゃんとした英語の読み方を指導しようと決めたのです。

 そうです、英語の読み方にはルール『phonics(フォニックス)』が存在します。

 技術的には、このフォニックスを身につければ、英語は音読しやすくなります。『例:umbrella』これを正確に音読できない中学生は多くいると思いますが、海外の子どもたちは、普通に「アンブレラ」と音読できます。

 日本語に例えると、「訓読み」「音読み」の英語の『音読み』を習っていないため、アルファベットが連なって『単語の集まり』になると急に音読みできなくなるわけです。

 Umbrella はフォニックスの音に分けると、『ァ・ン・ブル・エ・ル・ル・ア』という読みになります。確かにUを『ユー』ではなくて、音読の『ァ』と認識できるできないで、大きな差が出てきますね。海外(アジア含む)では、小学1年生から英語のフォニックスの授業が学校で取り入れられています。この点も、子どもたちが英語が読めなくて嫌いになってしまう原因の一つだと考えています。

「好きになったら勝ち」
『気持ち』を育てる英語教育

 コミュニケーション能力を育てる英語教育についてお話しします。

 まず『コミュニケーション』の意味について、辞書で調べると「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる」とあります。つまり、「意思」や「感情」、「思考」があって、初めて子どもたちは英語を使って自分の『考え』や『気持ち』を伝えようとします。実際に英語で話す機会を持つことがいちばんの近道です。

 こんなエピソードがあります。私が添乗員としてオーストラリア(メルボルン)郊外の高校に、日本から約20人の高校生を3週間のプログラムで随行していた時に、ある男子生徒がいました。

 彼は、英語の成績は5段階でずっと2しかとったことがなく、「本当はオーストラリアに来たくなかった」と最初は言っていました。土曜日にホストファミリーに預ける際に、とても不安な表情をしていました。そして週明けの月曜日に高校にやって来た時、彼は笑顔でバディ(ホームステイ先の兄弟)と登校してきたのです。

 昼休みにその子と現地の子たちがワイワイしているのを見ていた時に、ハッと気づきました。彼は、全く言葉を話さないで、すべて『身振りだけ』でコミュニケーションをとっていたのです。「子どもの適応力って凄い!」と驚いたものです。

 そして3週間後、彼は現地の友達と楽しそうに会話できるようになっていました。つまり、伝えようとする『気持ち』をどれだけ育てることができるかが重要ではないでしょうか?

 帰国する時に、彼に「今回の短期留学はどうだった?」と聞くと、「今まで生きてきた中で一番良かった」と嬉しそうに話していました。

 彼はすでに英語を好きになっていたのです。この英語を『好き』になる気持ちを育てることが、最大の英語教育であると私は考えます。

 私の『principle』(信条)は、なんでも「好きになったら勝ち」という思いがございま。英語を上達したいと思う気持ちも、最初は、『like』→『love』→『desire』(欲求/そうなろうと強く思う)と、だんだん強くなります。英語で人とコミュニケーションをとる機会の創出が必要だと強く感じています。

「伝える手段としての英語力」の育成
学校の取り組み例

 素晴らしいお取り組みをされていると感じる学校様は、【香里ヌヴェール学院中学校・高等学校】様です。中学校からの『英語イマージョン教育』では、英語以外の科目でも英語力を伸ばせるように、美術・音楽・学級活動・総合時間の授業でもネイティブの先生と日本人の先生のダブルティーチングで授業が実施されていて、普段の学生生活の中で、英語で思考し、話す環境があることが本当に素晴らしいと感じます。

 そして『グローバルゼミ』では、ディベート、ドラマ、ディスカッションなどのゼミもあり、英語を楽しみながら身につけることができるのではないでしょうか?

 また『ヌヴェール科』で実践される論理的、客観的、創造的な思考力を育てる『高次思考』の育成を目指されていることも、先ほど述べた『伝えたいこと』を育てる素晴らしいチャレンジをされていると思います。
http://www.seibo.ed.jp/nevers-hs/senior/sec/

ICTの発達に伴う
学習指導の変化

 『受験英語』と呼ばれる点数で競う英語学習では、4技能である「読む・書く・聞く・話す」の中では、「読む・書く・(聞く)」に重点が置かれてきました。今の受験世代にも、その傾向は続いており、受験英語(長文読解力とリスニング力)と英語学習(会話力)という『二重学習』の側面があるのが現実です。

 これからは、ICTの発達により、学習効率の高いデジタル教材(映像教材/AI教材)、オンラインでの英会話が主流になりそうです。今後は対面の授業とともに、Zoomなどでのオンライン指導もその指導内容の『質(何を?)』を高めていく必要がありそうです。

20年後の子どもたちを
『国際人』に育てていくために

 まず、学習塾に対して保護者様や生徒さんが期待することは、短期的には「目前の定期テストの点数アップによる内申点を上げてもらいたい」、長期的には「希望する高校・大学に合格させて欲しい」ということになります。

 塾にやってくる生徒さんで、英語が大好きで通知表がいつも5という生徒さんは、正直少ないと思います。まずは、彼らの英語学習の『何が課題』なのか、解決法は何か、ゴール(定期テスト・入試)までの『設計図』を一緒につくり上げることが重要になってきます。

 そして、英語が嫌いだと思っている生徒さんに対しては、まずは、英語での『小さな成功体験』(単語テストなど)を褒めてあげることが、英語嫌いを解消する最初の一歩となります。その先に、英語は『言語』であることを理解してもらって、世界中でコミュニケーションを取るために一番使われている手段(言語)であることを、どうか伝えていただきたいと思います。

 英語を学習する『マインド(何のために?)』を育てることが子どもたちを「能動的」に英語学習に向かわせる方法だと思います。今は、便利なツール、映像教材、AI教材、オンライン英会話ソフト、学習管理アプリなどが揃ってきています。英語が全然読めない生徒さんには、中学生・高校生にもフォニックスを指導してあげることも良い機会になるはずです。(無料のアプリも多数揃っています)

 20年後の日本を支える子どもたちを「英語を使いこなせる人材」に育てていくのが我々大人の役目でございますね。皆様とご一緒に、子どもたちを立派な『国際人』に育てていけますようこれからもよろしくお願い申し上げます。


●宮崎 貴行 氏プロフィール
50歳、京都府出身。同志社大学(経済学部卒)体育会アメフト部。20代で旅行社の海外教育旅行(短期留学)の新規営業開発に携わり、海外添乗も多数。その後、大手進学塾で英会話事業部の立ち上げとマネジメント業務を行う。40代で全国の塾に映像教材(ベリタスアカデミー)の提案、高等部の拡充(再構築)、募集企画など運営をサポート。現在は塾の運営コンサルタントとして、入塾面談研修、高校生募集企画、生徒の学習相談までサポートしている。また、公立高校を中心に、『大学進学ガイダンス』の講師も行っている。(兵庫・大阪・京都中心)

特集一覧

 

 
  ページの先頭へ戻る
manavinet」運営 / 「塾ジャーナル」 編集・発行
株式会社ルックデータ出版
TEL: 06-4790-8630 / E-mail:info@manavinet.com
Copyright© 2004-2003 manavinet. all rights reserved.