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2018/9 塾ジャーナルより一部抜粋

新専門医制度から見た 受験校の選び方について 第8回

 

私立・国公立大学医学部に入ろう.com 平野 晃康

 
     

 教育業界にあって新専門医制度 という単語に聞き覚えのある方は あまりいないと思います。新専門 医制度とは2018年より始まっ た、医師の研修制度のことです。

 最初に、卒業直後から始まる医 師の研修制度について説明しよう と思います。医学部を卒業し、医 師国家試験に合格すると医師免許 を取得できますが、この時点では まだ診察の場に立つことはできま せん。卒業後すぐに始まる2年間 の初期臨床研修を修了しないとい けないのです。この初期臨床研修 は大学病院などの臨床研修病院で 行われるものです。どの病院で初 期臨床研修を受けるかの希望は医 学部6年生の時に学生が厚生労働 省へ届け出ます。この際、研修病 院の側からもどの学生に来てほし いかを届け出るので、厚生労働省 は学生と研修病院の意志ができる だけ合致するようにマッチングを 行います。

 このように、最終的には厚生労 働省が決定するとはいえ、学生が 自由に病院を決められるのが現在 のシステムです。

 この初期臨床研修に引き続きて 行われるのが後期研修です。後期 研修は3年または4年間行われ、 これを終えると専門医の資格試験 を受験することができるようにな ります。医師は、専門医の資格を 取ることで診療科の技術と知識を 深め、さらに専門的な資格に挑戦 することができるようになるので す。現在、約7割の医師が専門医 資格を取得しているといわれてい ます。

 後期研修を行う病院の数は新専 門医制度が始まるまでは非常に多 く、専門医資格も102種類があ るなど林立している状態でした。 そのため、医師は後期研修病院を 自由に選ぶことができる状態だっ たのです。

 しかし、2018年の新専門医 制度では、専門医資格を48種類に 減らし、さらにそれを19の基本領 域(初めて専門医資格を取る医師 が取得するもの)と29のサブスペ シャリティ領域に仕分けを行いま した。そして、研修プログラムの 認可の条件を引き上げることによ り、後期研修の行える病院を大学 病院とその関連病院に事実上限定 したのです。

 さて、前置きがかなり長くなり ましたが、この結果、どのような ことが起こると予想されるかとい うと、多くの人が卒業した大学の 大学病院で後期研修を行うことに なるということです。選択先が多 数あれば、自分に合ったプログラ ムと指導医のいる研修病院を選ぶ ことができたはずですが、その数 が限られてしまい、しかもそれが 大学病院であるなら、その大学の 卒業生が集中してしまい、外部か らはいりにくくなってしまうから です。

 筆者の地元である愛知県では、 卒業後、初期臨床研修から後期研 修をほぼ連続して行うため、名古 屋大学の学生は名古屋大学附属病 院又はその関連病院へ、名市大の 学生は名市大附属病院へという流 れができつつあり、今後、昔の医 局制度のような状態になっていく のではないかと予想されます。

 ここで、研修にすぎないのだか ら、どこで受けても変わらないの ではないかと思われる方もいらっ しゃると思います。しかし、卒業 時に24歳以上で、研修期間は最低 5年間ですから、ストレートでも ほぼ30歳で、それまでの期間に身 に着けた能力と人脈はその後の人 生の基盤と言っても過言ではあり ません。地元を遠く離れてしまっ た場合、あるいは地方大学に入学 した場合、戻ってこれるか、都市 部で活躍できるかどうかは時の運 ということになりかねないのです。

 こうしたことから、偏差値が足 りないから、あるいは受験しやす いからというだけの理由で簡単に 地方大学を受験してしまうと、卒 業後に思わぬ足かせをされてしま う可能性もあるのです。

 さて、本稿ではやや文字数が余 っていますので、次号予告もかね て2019年度入試の動向をお話 ししようと思います。

 この原稿執筆時点では2019 年度入試においては、募集定数は ほぼ変わららない一方、地域医療 を意識した変更と、優秀な学生を 確保したいという思惑を感じさせ る変更がありました。

①地域医療を意識した変更(1) 福島県立医科大学 福島県立医科大学では、 2019年度入試から卒業後福島 県にとどまって医師として従事す ることを前提とする推薦入試の出 願要件から、評定平均値の制限を 撤廃しました。

 福島県立医科大学では2012 年度以降、一度も推薦入試の合格 者が募集定数に達していません。 この変更は受験者数を増やし、よ り多くの学生を募集することを目 的としたものと考えられます。

  • 2018年度
    37名合格/40名募集
  • 2017年度
    35名合格/40名募集
  • 2016年度
    32名合格/40名募集
  • 2015年度
    34名合格/40名募集

②地域医療を意識した変更(2)

 埼玉医科大学
 埼玉医科大学では、2018年 度まで1 0名だった推薦入試(一般 公募・指定校)を拡充して、一般 推薦枠1 0名、埼玉県地域枠1 8名を 募集します。埼玉県地域枠は、月 額2 0万円の奨学金(総額1440 万円)が支給される制度で、卒後 9年間、埼玉県内の医療機関に従 事することが義務付けられていま す。

 原稿執筆時点では公表されてい ませんが、前期あるいは後期試験 の募集人数から1 8名が削減される 可能性が高いでしょう。

③優秀な学生を確保することを意 識した変更:愛知医科大学

 愛知医科大学では、センター利 用入試(後期試験)を新しく実施 します。これは、国公立と同じ、 英語、数学、理科(2科目)、国語 (現・古・漢)・社会による試験で、 二次試験として面接が課されます。 私立大学医学部のセンター利用入 試は出願がセンター試験前日まで ですが、愛知医科大学のセンター 利用後期試験は、国公立二次試験 の初日の2月2 5日まで出願可能で す。国公立をあきらめた、優秀な 学生を集めることを目的とした制 度だと考えられます。

 このように、福島や埼玉のよう な地方都市では地域医療を強く意 識した入試改革が行われているの に対して、名古屋大、名古屋市立 大、愛知医科大、藤田保健衛生大 の4校が医学部医学科を持ち、電 車で1時間以内の距離に岐阜大、 三重大、浜松医大の3校が集まる 愛知県では、医師不足はまだ深刻 ではなく、優秀な学生を集めるた めの入試改革が行われています。 このような流れは、医大の格差を 生み出すことになるでしょう。

 次回は2019年度入試の変更 点とそこからみる医学部の今後、 そして、医学部受験校の選び方の 注意点についてお話ししようと思 います。


平野 晃康 プロフィール

 名古屋セミナーグループ 医進サクセス室長を経て、 現在は私立・国公立大 学医学部に入ろう.com 代表。医学部受験の指 導と正しい入試情報の 普及に努める。入試情 報誌「私大医学部入学 試験を斬る2013」(名古 屋セミナー出版)を編集・ 執筆、医療系データブッ ク(大学通信)にコラムを 寄稿。

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