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2018/7 塾ジャーナルより一部抜粋

社会貢献する「育」の企業として、
さらなる高みをめざし経営体制を強化

     

株式会社成学社
代表取締役会長 太田 明弘さん

 関西を中心に「開成教育セミナー」や「個別指導学院フリーステップ」を展開する成学社は今年6月、新たな経営体制をスタートさせた。太田明弘代表取締役社長が代表取締役会長に就き、1982年の創業時より共に歩んできた永井博さんが専務取締役から代表取締役社長に就任した。

 成学社は、少子化による市場縮小の状況下においても着実に業績を伸ばし、2011年に東京での教室展開を開始。2015年には保育事業に進出して急成長を遂げている。

 株式会社成学社の今年の3月期決算は連結で112億円の売上高を計上し、学習塾の在籍者数は2万7千名に届こうとしている。「育(Grow)」の分野で社会貢献をめざす」と語る太田会長に新体制移行の目的と今後の方向性を伺った。

役割分担で経営環境の変化に迅速に対応

―― 新体制では代表取締役が会長と社長のお二人になられます。その一番の目的はどこにあるのでしょうか。

太田 基本的な狙いは役割分担です。

 私が「開成教育セミナー」を開塾した36年前の15歳人口は全国で182万人でした。しかし、昨年は116万人。36%も減っています。経営環境が変化し学習塾の市場が縮小するなかで、拡大至上主義には自ずと限界があり、社会貢献という観点からどのような企業であるべきかという問いかけが必要になりました。

 そこで立ち上げたのが保育事業と日本語学校です。また昨年7月にはフィリピンのセブ島に日本人のための英語研修校「Kaisei English Academy(KEA)」を開校しました。当社はすでに学習塾を専業とする教育企業ではなく、0歳から18歳までの学びと成長を応援し、さらに留学生や社会人を対象に教育と情報を提供する企業へと変化しています。この多岐にわたる事業体を健全経営という観点から導いていくには、社長1人のリーダーシップだけでは限界があります。

 会長と社長が役割分担し、開成丸という舟を大海の荒波に負けず進めて行きたい。これが今回の体制を選んだ理由です。

―― どのように役割を分担されるのですか。

太田 学習塾や保育事業などの既存事業の維持は永井社長に任せ、私は新規事業とM&A、情報交換といった役割を主に担います。感度の高いアンテナを張り巡らせて新しい情報をキャッチする。水面下での折衝など突発的に発生する可能性もあります。私がルーチンワークを持ってしまうと動きが鈍くなってしまので役割分担が必要なのです。

―― 永井専務の社長就任は以前から決められていたのですか。

太田 もう10年前から予定していました。社員も承知していたことなので、何のサプライズでもありません(笑)。

 一般的に、会長になると新社長のやり方に不満を覚えるケースが多いようです。が、その点に関しては全く心配していません。新社長も同じだと思います。彼は創業時から一緒に仕事に励んできた叩き上げのプロパーです。当時彼は京都工芸繊維大学の学生でしたが、自転車の整理や教材の作成作業などの庶務を一手に引き受けてくれました。貧しい創業時代から今日までずっと二人三脚で歩んできました。これからも変わることはありません。会長と社長が車の両輪となって会社を牽引していくモデルになりたいと考えています。

―― 事業承継についてはどのようにお考えですか。

太田 学習塾業界は創業者世代の高齢化が進んでいますから、事業承継は切実な課題です。しかし、業界自体がパワーダウンしている状況で、意気軒昂に事業承継という成功例はあまりないように感じています。

 円滑な事業承継のためのひとつの鍵は資本と経営の分離です。健全な企業であっても資本の扱いに失敗すると他社の傘下に入らざるを得なくなることもあります。

 弊社の場合は10年前の8月にジャスダックに上場しました。私個人である程度の株を所有しています。ニューウェーブという資産管理会社も立ち上げました。そして私個人だけでなくニューウェーブでも、最大の目標は成学社の今後を支えることです。私が会長職を辞した後に株を売却して利益を上げたり、ニューウェーブが成学社と対立関係になるなど、現役の経営陣に迷惑をかけることは断じてあってはならない。事業承継においても、塾業界のモデルとなるように頑張っていこうと永井社長をはじめ、役員と固い決意で臨んでいます。

関西から首都圏へ、フリーステップを全国ブランドに

―― 永井新社長にとって太田会長の存在が力強い支えですね。

太田 社内的には何の心配もありません。心配は、市場とどう向き合っていくかということです。それほど子どもを対象とする企業は大変な状況です。

―― そのなかにあっても着実に売上や塾生数を伸ばしてこられたのでは?

太田 塾生数はここ4年ほど2万5千人前後で膠着状態が続いていましたから、なんとかこの壁を乗り越えようと呻吟してきました。今春の募集状況では幸いにクラス指導、個別指導合わせて昨年より入塾数が8%ほど伸びています。今年11月のピーク時には保育園や日本語学校を含めてグループ在籍数が2万7千人に到達する見込みです。FCの生徒を合わせると、そろそろ3万人体制に入りつつあります。

 しかし、やはりクラス指導部が受けるアゲンストの風は相当強いですね。若い先生を増やし、研修にも十分力を入れるなど教務の充実を図り、その効果が去年あたりから出てきています。100教室程の体制を維持しながら、地域満足度ナンバーワンのいぶし銀のような集団指導塾でありたいと考えています。

―― 個別指導の「フリーステップ」は順調ですね。 

太田 成学社の大きな成長エンジンです。私たちの個別指導には他にはない特長がいくつもあります。

 まず、徹底したエビデンス主義。指導効果、つまり定期テストで何点アップしたかを生徒名と学校名と一緒にチラシに掲載しています。それができるのは入塾すると確実に成績が上がるシステムを持っているからです。弊社の教育技術研究所で学校のテストを分析しながら、教材やカリキュラムなどのシステムを構築してきました。

 講師の質にも自信があります。優秀な学生を選別し研修を実施しています。

―― いまどこでも人手不足が深刻ですが…

太田 講師は十二分に確保できています。それは講師を大切にしているからです。全国学習塾協会の「安心塾バイト認証」も率先して取得しました。

 日本経済新聞の4月14日付夕刊で、大阪大学の大学院生がアルバイト先に「フリーステップ」を選んだ経緯が紹介されています。

 学生講師に支持されることは、ある意味では生徒を増やすことより値打ちがあるかもしれません。なぜなら教える人の質とやる気が教育の品質を決めるからです。

 そして「フリーステップ」の大きな特長は何と言っても大学受験に強いこと。関関同立の合格者数は予備校にも負けていません。ですから、高校生の塾生が半数近くを占めています。

―― 「フリーステップ」の今後の課題は何でしょうか。

太田 東京でいかに生徒数を拡大するかです。東京では関関同立ではなくGMARCH。実績を上げるまでに少し時間がかかります。しかし、実績を上げられるようになれば「フリーステップ」が全国ブランドに成長できると信じています。東京に本部を移す意気込みで取り組んでいきます。

―― 本部を東京に移されるのですか。

太田 具体的な計画があるわけではありません。私は大阪の人間ですから関西が好きです。しかし、関西のマーケットは今後2年間で教室展開できる場所がなくなるでしょう。一方、首都圏はマーケットは大きいけれど備長炭みたいになかなか火がついてくれません。でも火がつけば継続効果は高いと思います。あと100教室は増やしたいですね。

事業家としての締めくくりに向けて

―― 今回の新体制移行に伴って組織変更も予定されていますか。

太田 ひとつは保育事業です。事業開始から2年間で急成長し、正社員が140名近くに上っています。塾とは就業形態が異なりますから、将来的には分社化しなければならないでしょう。

―― 新体制で永井新社長に期待することを教えてください。

太田 教育がどうあるべきかということとは別に、当社の経営者として2つの経営指針を守っていくことを伝えています。

 まず、世の中に必要とされる仕事だけをする。次に、それは「育(Grow)」の分野であること。文字通り、成長分野で成長することが私たちの基本戦略です。

―― それが学習塾、保育、日本語学校ですね。

太田 いま学習塾はどこも塾生が思い通りに集まらず苦労しています。競争が厳しくなってくると塾生を増やすために、実績をごまかしたり他塾の教員を引き抜いたりといった品格に欠ける行動も出てくる。そうしたことで文科省や経産省からお叱りをいただくことがないようにしたいものです。競争の結果は市場の判断に委ね、理性を失わない、互いに敬意の持てる塾業界であってほしいと願っています。

 自分を見失わずに、自塾にしか提供できないサービスや価値があると信じてやっていけば、マーケットにおけるポジションはなくなることはありません。ですから社会貢献していこう、社会に必要とされる仕事だけをしていこうと決めました。

 保育事業を始めたのは世の中に必要とされているからです。日本語教育もベトナムを中心に、アジアからの留学生が増えつつあることを受けて始めました。

―― 最後に、太田会長の会長としての目標を教えてください。

太田 何年かかるか分かりませんが、東証一部昇格です。社会貢献とは異なりますが、事業家としての締めくくりにしたいと考えています。

 しかし、そのためには、自分たちの独自のノウハウだけでは足りない部分を埋めていく必要があります。事業提携や資本提携そして海外進出も視野に入れています。

―― そこに会長として手腕を発揮されていかれるのですね。本日はどうもありがとうございました。

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