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2018/3 塾ジャーナルより一部抜粋

「LINEの光と影!」 特集
塾での利用価値は

 

株式会社リアル・パートナーズ代表 安多 秀司

 
     
 私たちが運営する学習塾に通う中高生にとって欠かせないコミュニケーションアプリ「LINE」。スマホ保持者のほとんどが「LINE」アプリをインストールし、連絡ツールとして活用しているのではないか。すっかり生活の一部に浸透し、使用していて当然の前提で社会が成り立ちつつあるほどだ。しかしその便利さの反面、弊害もある。今回は、中高生がLINEを使用することのメリット・デメリットをふまえつつ、学習塾でのLINEの活用法を考えてみたい。

ケータイメールに取って替わる存在

 爆発的に進化を見せるLINE。私が経営する学習塾「個別教育フォレスト(兵庫県宝塚市)に通塾する中高生たちにおいても、休憩時間中にLINEでやりとりしている姿を頻繁に見かける。それもそのはず、13歳〜19歳のスマートフォン保持者が2016年で81・4%(総務省・情報通信白書)、10代のLINE使用率が79・3%(総務省・情報通信白書)というデータからも納得だ。かつてはキャリアメール(携帯メール)がその役目を果たしていたが、実質上LINEにとって替わられた格好である。

 開発・運営はNHN Japan株式会社(2013年よりLINE株式会社に商号変更)。韓国最大のインターネットサービス会社・NAVERの子会社として同社が設立されたことから「LINEは韓国製」と見る向きもあるが、実際には純然たる日本のプロダクトである。

手軽で気軽なやり取りが魅力

 そんなLINEだが、その歴史は意外に短い。サービスが開始されたのは2011年6月のことである。 きっかけになったのは、東日本大震災だ。地震直後に起こった大パニックで、電話回線はほぼパンク状態。ツイッターやフェイスブックで安否を確認するほうが確実だったとも言われている。それをふまえ、災害時でも簡単に連絡を取り合い、安否を確認できるアプリを開発するのが目標だった。

 リリース後は若者を中心に火がつき、運用開始3ヵ月後には100万ダウンロード、半年後には1000万ダウンロードを突破。2013年には1億ダウンロードという大台を越えた。日本のみならず、世界にも徐々に普及・拡大している。現在では国内ユーザーが7000万人以上。4年前は3100万人だったから、たった4年でユーザーが倍以上になった格好だが、ここまでユーザーを増やしている原因は、最大のメリットでもある手軽さにあると考える。

 私も一人のユーザーとしてLINEをよく使うが、まず、やり取りがスピーディであり、対面で会話しているかのような臨場感がある。短文で細かいやり取りが主となるため、話題を素早く進めることもできる。電子メールなどと比べ、より「対話的」であると言えよう。トーク(チャット)は1対1がメイン機能となるが、送信したメッセージを相手が開封すると「既読」という表示が出るため、着実に相手に伝わっているかどうかが分かり、伝達ミスも防ぎやすい。グループトークという機能もあり、最大200人まで一気にメッセージを送ることが可能だ。学習塾においても、社員と講師でグループを作り、伝達事項を一斉配信している例もある。

 また、ユーザーを虜にしたとも言えるスタンプ機能も忘れてはいけない。文章で表現することが難しかったり恥ずかしかったりする際に、様々な種類の中から選んだスタンプを添えることで、ソフトタッチで気軽に相手に感情を伝えることができる。従来の電子メールでも顔文字を使って感情表現はできたが、これがイラスト(スタンプ)となったことで、よりバリエーションに富んだコミュニケーションが可能になった。

 さらに無料電話も大きなメリットとも言える。携帯電話番号が分からずとも、LINEユーザー同士であれば、世界中のどの場所でも無料通話が可能となる。もはや「電話代」を気にする時代ではなくなったのだ。

LINEに生活を支配される人たち

 一方でデメリットをあげてみよう。先述の「既読」機能がかえってユーザーを縛ることがある。「既読になったのに返信がない」と責められたり、「早く返信しないと」と、強迫観念に襲われたりする人もいるのだ。特に若者の間では、メッセージを読んですぐに返信しない「既読無視」は、自分が軽んじられていると受け取られるようで、非難の対象になりやすい。

 そこから派生して「LINEいじめ」という現象も起こっている。グループから強制的に退会させる「LINE外し」や、グループ内のメンバーから集中攻撃を受け、不登校や自殺に追い込まれるケースがある。人によっては外される不安感から、やりとりが長時間にも及び、「LINE疲れ」で寝不足に陥る中高生がいる。生活リズムや行動がLINE(とそこで繋がっている他人)に支配されてしまうのだ。こうしたSNS上という〝密室〞で行われるいじめは、大人が気付いてやることが難しく、非常に陰湿でタチが悪いとも言える。

 もう一つ大きな問題は「依存」だ。スマホを持っていないと不安になったり、通知を知らせるバイブレーションが気になり集中できない状態に陥ったりすることも多い。弊塾の生徒たちを見ていてもそれは感じる。弊塾では授業や自習の時間帯はスマホ使用を禁止しており、授業の合間に10分間の休憩時間を取っているが、休憩時間になると生徒はすぐにカバンからスマホを取り出し、LINEのチェックに走る。まあ塾内にいる間は、ある程度メリハリがつけることができるが、自宅にいる場合はそうはいかない。自制できる中高生は少数派だろう。自宅ではスマホを一時も離さず、ながらスマホ状態で嘆く保護者も多い。

塾におけるLINEの活用

 便利さの反面危うさも含むLINEだが、ひとつの連絡ツールとしてみたとき、学習塾における利用効果は高い。例えば、自然災害時やそれにおける休講などの緊急連絡も、タイムラグなく、しかも一斉に配信できる。既読機能を生かせば、着実に伝達できたかどうかも確認ができる(ただし、誰が未読なのかは判別できないのでそれは別途対応が必要)。このように、教室と保護者・生徒との連絡を、電話からLINEに移行することで、電話対応する時間が減り、その分教務力強化や業務効率を上げることができる。内部充実向上とともに、紹介の問い合わせが増えることも考えられるだろう。

 「繋がり方」のパターンとしては、基本的には①社員と講師、②社員と生徒・保護者、③講師と生徒、④社長と社員というケースが想定できるが、一つずつメリット・デメリットを考えてみよう。

①社員と講師

 メリットとしては、連絡事項の報告や、当日の授業の状況を事前に伝えることに使える。所属講師をグループ化しておけば、全員に連絡事項が伝わり、業務効率も上がる。また、既読がつくことで連絡の不徹底を防ぐこともできる。一方で、やはりこの既読機能が講師にプレッシャーを与えることもある。業務時間外であってもすぐに返信しないといけない思いが生じかねないからだ。そのため、弊塾ではLINEによる配信は行わず、各自のメールアドレスへの配信にしている。

②社員と生徒・保護者

 やはり生徒・保護者に気軽に直接連絡を取れることは大きなメリットだ。「明日、補講をする○時に教室にくること」「明日は授業ありますか?」など、教室で伝え忘れたこともLINEですぐに伝えることが可能だ。生徒の自宅学習時など、思い立った時に勉強の質問ができる。距離感が近くなるので、教室にいる感覚でやりとりできることがメリットである。

 しかし、これでリアルなコミュニケーションの代わりが果たせると思ってはいけない。基本的に文章でのやりとりになるため、表現によっては誤解が生じることもある。こちらが励ましたつもりでも「一方的に怒られた」と受け取られる場合だってあるのだ。またその内容はアプリ内に残るので、ネット上にアップされ炎上の原因になる可能性を秘めている。対面であれば相手の表情などから察してすぐにフォローもできようが、LINEではそうはいかないのだ。

 また、いつでもやりとりできる気軽さが、職場のブラック化を招く危険性もある。昼夜を問わず生徒や保護者からメッセージが届いては、社員も正直たまらない。自分一人がすべてを取り仕切るような個人塾の塾長であれば、トコトン付き合うのも方法であろう。しかし、社員の場合は異なる。社員と生徒・保護者間でLINEのやりとりをするとしても、内容の初期段階で止めておき、あとは電話連絡や教室で直接といった方法にすることをお勧めする。

③講師と生徒

 個人的には、講師と生徒がLINEで繋がることは好ましくないと考えている。生徒のことを想い、LINE上で問題解説を行うのはありがたいが、それが人生相談、恋愛相談に変わっていき、最悪の場合、隠れて外部での接触を行ったり、恋愛関係に発展してしまったりした場合、塾の責任を問われることは必至だ。中小塾なら、廃業にまで追い込まれかねない大きなリスクがある。弊塾では、講師と生徒・保護者とのLINEのやりとりはもちろん、メールアドレスの交換、外部での接触を禁じている。「判明した時点で即時解雇」と契約書も取り交わしている。

④社長と社員

 社長側からすると気軽に連絡でき、既読が確認できるので非常に便利なツールであるが、慎重に運用したいところだ。やはり「既読」機能の問題で、休日にも返信義務を課せられるような状態は避けたい。「休みの日はL I N E しない」「緊急時のみLINEを送る」といった意識で運用する必要がある。私自身、社員や講師に連絡を取る際は、LINEではなくメールで連絡を取るようにしている。

「個」と「公」の線引きにLINE@

 LINEは基本的に個人のアカウントで使用するため、生徒や保護者、社員と繋がった場合、自分のプライベートを知られる部分も注意が必要である。その問題を解決するツールとして「LINE@(ラインアット)」がある。LINE@は、企業や店舗と個人をつなぐアプリで、内容や機能はLINEとほとんど同じである。簡単に言えば、塾の公式アカウントとして運用するということだ。

 このLINE@で自塾のアカウントを作っておき、保護者や生徒に登録しておいてもらうことで、自塾のお知らせを一斉配信することができる。弊塾では、連絡事項やお知らせがある際、事前に保護者から登録してもらったメールアドレスに配信すると同時に、LINE@でも同内容を配信している。メールだと、迷惑メールに振り分けられたり、届いたことに気付かず読まれていなかったりといったリスクがあるが、LINE@だとブロックされない限り必ず届く。ただし、LINE@に誰が登録しているかを発信者側が知ることはできないので、普段から保護者・生徒への登録告知が必要である。

 また、LINE同様、1対1モードの機能もあるので、生徒・保護者との1対1のやりとりも可能である。先述したような塾外での学習サポートや個別の連絡にも活用できよう。実際、LINE及びLINE@の利用で、教室での電話の数が減り、授業業務に集中できるようになったという塾もある。加えて、入塾前のご家庭に対し、自塾での取り組みや案内をお知らせする広告ツールとしての利用も可能だ。ホームページ上で自塾のLINE@を登録できるようにしておけば、実際の教室の状況を定期的に受け取ることができ、中長期的な新規開拓に繋がっていくであろう。

 総じて、LINEは学習塾にとって非常に便利なツールであると私は考える。ただ、あくまでもツールだ。最終的には人と人とが直接向き合うことが、学習塾にとって何よりも重要であることを最後にお伝えしておきたい。LINEに使われるのではなく、使うのだという意識を忘れずに。

 


安多 秀司氏プロフィール

大学卒業後、京都を中心に教室展開する「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。最年少教室長として3年間務めた後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の新規展開を行う。その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヵ月で35名の入会があり、わずか1ヵ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの個別指導塾として、地域に根付いた運営を行っている。

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