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中学・高校受験:学びネット

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2017/11 塾ジャーナルより一部抜粋

具体化する大学入試改革
そのとき中高や塾はどうする?

  株式会社 大学通信 常務取締役 情報調査・編集部
ゼネラルマネージャー 安田 賢治
 
     

改革元年入試を受ける1期生が
来春、高校入学

 改革元年の入試を受ける今の中学3年生が、来年は高校に進学する。高校も塾や予備校も対策は待ったなしになってきた。

 7月に文部科学省は「高大接続改革の実施方針等の策定について」を公表した。それによると、現在の大学入試センター試験(以下、センター試験)が廃止され、代わりに大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が実施される。共通テストは、センター試験と同じ1月中旬1回限りの実施だ。この他にも「高校生のための学びの基礎診断」テストが実施される。これは主に高校での学びの到達度を測る試験だ。2023年までは試行期間で、大学入試などには活用できない。

 この改革で国公立大入試は、共通テストの成績と各大学の独自試験で合否が決まることになった。私立大は独自の入試を行っているが、センター試験利用入試も実施している。これはセンター試験の成績だけで合否が決まる方式がほとんどで、私立大延べ志願者のおよそ3割を占める人気の方式だ。出願さえすれば結果がわかり、わざわざ大学まで受験に出向かなくてもよく、国公立大第一志望の受験生は、私立大入試対策をしなくてもよいので重宝されている。その上、受験料が一般入試の半額程度の大学が多く、コスパのいい方式だ。大学にとっては受験料収入、受験生にとっては受験機会が増える、双方に大きなメリットがあり、私立大の共通テスト利用入試は存続すると見られる。

 センター試験の志願者は、2017年は57万5,967人。少子化が進んでいるとはいえ、学費が安く、人気の国公立大を受けるのに必須とあれば、共通テストに代わっても志願者はそう大きくは減らないと見られる。

国語と数学で記述試験
英語の試験で外部試験を活用

 センター試験はすべてマークシート方式の試験だ。共通テストは、このマーク式の試験に加えて、記述式試験が数学と国語で課される。数学は「数学T」からの出題。マーク式と記述式が混在する問題になり、試験時間も現行の60分から70分に延びる。解答だけを記入する方式のため、採点にそれほどの混乱はないと見られる。

 一方、国語は「国語総合」(古文・漢文を除く)から出題される。新たに大問を設け、80〜120字で解答する問題を3問ほど出題する。試験時間も現行の80分から100分に延びる。しかも点数ではなく、3〜5段階評価になる。

 採点方法は、まず受験生が記述した解答をデータ化する。条件付きの出題になるため、条件を満たしていない解答を除外して、残りの解答を複数の採点者が見て評価する。ただ、今年のセンター試験で国語を受けたのは約52万人。採点が公正、公平に行われるのか不安視されている。解答をデータ化するに当たっては、高校生の悪筆をどれほど考慮しているのか、予想以上に時間がかかるのではないかとの見方もある。受験生にとっては、読みやすい字で書くことは最低限必要ということになる。

 すでに5月に記述式のモデル問題が公表されている。数学の出題傾向は、これまでのセンター試験にそったものだ。国語はかなり違っている。問題例1では「景観保護ガイドラインについての親子の会話」、例2では「駐車場賃貸に関する契約書」が問題文だった。例1については40字以内、35字以内、20字以内、80〜120字の4問が出題され、例2では40字以内、120字以内、50字以内の3問が出題されている。正答例や採点基準も細かく公表されている。

 ただ、大学が記述式問題の成績を使うかどうかが不透明だ。得点ではないため、マーク式の得点に加算ができない。大学独自に段階評価を得点に読み変えない限り、無理ということになる。別の評価とするのか、どう扱っていくのかは今後の各大学の対応次第だ。

 一方、英語の試験も変わる。日本のグローバル化が進み、共通テストも英語の4技能(読む、聞く、書く、話す)を問う試験になる。センター試験はマーク式の「読む」と「聞く」の試験で、これは残るが、新たに「書く」「話す」の試験を行う。試験実施が難しいこの2技能について、民間の外部試験の成績を活用することになった【表1参照 文科省資料】。どの外部試験を用いるのかは、まだ決まっていない。学習指導要領にそった出題が条件だ。高校3年の4〜12月に2回まで受けられ、その高得点のほうの成績を6段階で評価する。

 現在のセンター試験では、「読む」の筆記テストが55問200点満点で、言ってみれば55段階評価、「聞く」のリスニングテストが25問50点満点で、言ってみれば25段階評価だ。それに比べ「書く」「話す」が6段階評価ではあまりにも少なく、受験生の成績にあまり差がつかないことになりそうだ。英語が得意な受験生にとっては、少々不利な評価方法ともいえよう。

 それだけではなく、実施までにはさまざまな問題がある。試験会場もそのひとつ。47都道府県での実施を求めているが、それでもやはり、離島部などの受験生は経済的負担が大きくなってしまう。さらに、外部試験は受験料が高く、TOEFL iBTは230ドルもする。センター試験の受験料は3教科以上で1万8,000円だ。英語の2技能の試験だけで、この金額を軽く上回ってしまう。しかも2回となると負担は大きい。これをいくらまで値下げされたのかにも注目が集まる。これ以外にも、各試験の運営会社が自らの試験の対策講座を設けたりすると、参加、不参加で差がつく懸念もある。

 いずれも難しい問題だが、すべての受験生が公平になるよう、解決していくしかない。

共通テスト実施で
大学入試はどう変わっていくのか

 共通テストでは記述式問題が増え、英語の外部試験の成績が必要になる。文科省は「学力の3要素」として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」をあげている。マーク式の問題でも、今までの知識を聞く問題ばかりでなく、思考力・判断力・表現力を求める問題が増えると見られる。どう考えても難化しそうだ。

 多面的に受験生を評価する観点から、東大が推薦入試、京大が特色入試などを実施している。これにより、国立大の後期試験の実施校が減少している。こういった流れはすでに起こっていることだが、今後、さらに拡大していきそうだ。そうなると国立大一般入試では、前期試験だけの1校受験によりいっそう近づくことになる。

 対策をとって共通テストを受けても、国立大を1校しか受験できないのなら、あまりメリットがない。そう考え、大学入学共通テストそのものを受けない受験生が増えることも考えられる。その結果、国公立大離れが進む可能性もある。ただ、現在のような経済格差が続く限り、理系志望者の国公立大志向は、あまり衰えないと見られる。私立大の理系学部の平均学費は国公立大の倍以上で、医学部に至っては9倍にもなるからだ。やはり学費の格差が少ない文系での国公立大離れが起き、私立大人気が高まる可能性もある。これはあくまでも初年度のことであり、2年目以降は対策も立てられることで、志願者が増えると見られる。センター試験も2年目には、前年に比べ5.9%志願者が増えた。

 また、2020年の入試改革にあわせ、入試の名称が変わる。今までの一般入試は「一般選抜」に、AO入試は「総合型選抜」に、推薦入試は「学校推薦型選抜」になる。しかもAO・推薦入試では、今まで以上に学力を問う試験になる。現在は一般入試が学力重視の試験、逆に学力以外を重視するAO・推薦入試とおおまかに大別されているが、どちらの試験でも学力を求め、学力以外の高校時代の活動を評価する試験になる。

 AO・推薦入試では小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績などが問われ、あるいは共通テストの成績を活用することを文科省は求めている。また、調査書を見直し、細かく生徒の特徴を記入して作成するようになるため、一般入試でも調査書を活用するよう勧めている。高校の教員の負担が増えることは間違いない。

 この他でも評定平均値と言われる各教科の5段階評価の成績は「学習成績の状況」に名称が変わる。現状では評定平均値は、推薦入試の出願条件となっている。大学が指定する評定平均値を超えていないと出願できないような使い方だ。この名称変更を含め、学力重視に傾く選抜を、多面的評価に変えようとの狙いが見えてくる。時間をかけた丁寧な選抜に変わっていく。

このような改革に
中高や塾はどう対応していけばいいか

 すでに中学受験や高校受験では大学付属校人気が上がっている。共通テストを受けずに大学に進学できるからと見られる。もちろん、私立大は今まで通りの入試になりそうなので、それほど大きくは変わらないのだが、やはり不安が大きいのだろう。

 大学入試改革は2段階になる。2020年の後、今の小学校5年生が受験する2024年だ。2024年には学習指導要領が変わるため、新課程入試になる。そのときの共通テストでは、地歴、公民、理科でも記述式問題が出題される予定だ。文科省が記述式試験実施に力を入れているため、国公立大の独自試験でも記述式問題が増えるのではないかと見られる。大手私立大でも記述式問題の入試が実施される可能性もある。今まで以上に、国語力が求められることになる。

 中高一貫校ではすでに卒業論文を書かせ、生徒の文章力を磨いている学校もあるが、公立高でも身に付けさせる必要が出てくる。ひとつの方法として学校の定期試験などで記述式の出題を多くし、早くから慣れさせる方法がある。塾としても記述式対策が求められるし、論述能力の向上が求められよう。国語力向上がカギになってくる。

 一方、英語では今までの対策の他に、外部試験対策が必要になってくる。昨年、駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社で進学高にアンケート調査を実施した。883校から回答があり、「外部英語試験対策を行っているか?」の問いに、「行っている」は78.1%だった。8割近い学校ですでに対策を行っている。「対策を行っている試験は?」の問いに、【表2】にあるように、トップは英検の57.2%、次いでGTEC for Studentsの42.7%、それ以外は10%を切った。実際、どの試験が共通テストに採用されるかで変わってくる。

 ただ、どうなろうと、授業の中で「書く」「話す」能力の向上が求められることは間違いない。外部試験は過去の成績は使えず、高校3年生での成績になる。2回しか受けられないことから、高校2年生から受けておくことも必要になってくる。そうなると、高校の早い段階から対策が求められ、塾などで対策をとるようになると見られる。

 AOや推薦入試でも学力が求められるため、これまで以上に高校での学びが重要になってくる。それをサポートする塾への期待も大きくなる。高校では今まで以上にアクティブラーニングが導入され、こちらの対策も求められよう。入試対策は重要ではあるが、根本的に学力をつけておくことは変わらない。授業の理解力を高めることが、ますます大切になっていきそうだ。

安田 賢治氏 プロフィール
1956年兵庫県生まれ。灘中高、早稲田大卒業後、大学通信入社。現在、常務取締役で出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。サンデー毎日、東洋経済など記事執筆多数。大正大学人間学部で非常勤講師も務める。
著書に「中学受験のひみつ」(朝日出版)、「笑うに笑えない大学の惨状」「教育費破産」(祥伝社)がある。

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