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中学・高校受験:学びネット

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2017/9 塾ジャーナルより一部抜粋

〜永遠に未完の塾学〜

第20回 よき「日本」の終焉と、再復興への道

俊英塾 代表 鳥枝 義則(とりえだ よしのり)
1953年生まれ、山口県出身。
京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。
塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』(10,000PV/日)には、多くの受験生
や保護者から「ありがとう」のコメントが。
成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。

 今年春から始まったNHKの朝ドラ『ひよっこ』だが、私は毎日見ながら、そのテンポの悪さ、古臭さに、妻に文句ばかり言っていた。

 しかし、不思議になぜか泣けてしまう。出稼ぎに行って帰らない父、家族のために集団就職列車で東京に旅立つ主人公、貧しく、しかし、未来への希望だけは皆が持っていた時代のなんということもない風景が、私の生い立ちに重なるのか、気がつけば頬を涙が伝わっている。

 そのわけが、最近やっとわかった。脚本の岡田惠和氏の意図が理解できたからだ。このドラマは、今、この平成29年に私たちの手から完全に失われようとしている、よき「昭和」的なものに対する、岡田氏の鎮魂歌だったのだ。

ファーウェイ
千葉新工場建設の衝撃

 6月29日、スマートフォン生産で急成長している中国企業ファーウェイが、千葉の森精機の跡地に大型工場(製造プロセス研究ラボ)を新設するというニュースが、驚きをもって報じられた。

 さらに注目を集めたのが、その給料の高さだ。ファーウェイ・ジャパンの求人広告によると、初任給は月給40万1千円。我が国の大卒初任給の平均20万円の実に倍額である。今や中国企業が日本人の若者を安く雇用すべく日本に進出する時代がやってきたのだ。

 10年以上も前のことだが週刊誌で、「遠くない将来、来日する富んだ中国人に、日本人が嬌声をあげて群がる時代がやって来る。」という記事を読んで立腹した記憶がある。まさにそんな時代が既に到来しつつある。

我ら老いた塾人は若者に
何を残せるのか

 キャリア官僚も我が国の置かれた状況には強い危機感をもっているようで、今年の5月に経済産業省の若手官僚グループが『不安な個人、立ちすくむ国家』なる資料を公開して話題になった。

 その内容は具体策に欠けるが、要するに「高齢者が社会を支える側に回れ」という提言である。しかし、数で圧倒し、選挙での高い影響力を保持する高齢者が、例えば、自分たちの年金を削って若者の教育費無料化にまわしてくれるであろうか?

 若者はだれにも頼らず、苦境の中で自分だけの力で強く這い上がっていくしか道はない。

 そして我ら塾は、全身全霊を傾けて若者を強く鍛えるしかない。一人ひとりが雄々しく自分の力でこの世界に立ち向かう強靭な人間に成長するように、そのための手助けをすることこそが塾の存在理由となる。

単一市場としての日本語圏の崩壊と
塾教育に必要なもの

 我が国はこれまで、日本語という一つの言語で一つのマーケットが成り立つ、極めて特殊例外の存在であった。しかし、少子化と人口減で、その存立基盤は完全に崩れつつある。もはや若者は世界に目を向け、世界を相手に仕事をするしか、生きる道はない。

 そのために必要な武器は、確かな読解力に支えられた知識や語彙力と、英語力を含めた自己表現力だと、私は思う。

塾で読解力を鍛える

 経済協力開発機構の「生徒の学習到達度調査(PISA)」を意識した今の教科書だと、機械的な詰込み学習では定期テストすら得点できなくなってきている。

 そして、テストの得点力と文章読解力は比例する。

 ただ、家庭で本を読ませることは、以前よりずっと難しくなってきている。街から多くの書店が消えて久しい。以前なら、新聞を読みなさいと言えたが、今や新聞を購読している家庭のほうが少ない。塾で文章を読ませる方策を考えるべきだ。

 もちろん、塾の国語テキスト自体が文を読む訓練になってはいるが、それでは足らない。私の塾では、某新聞社の中学生や小学生向けの新聞を購入して、許可を得て塾生が興味を持ちそうな記事を配布し、それをもとに話をしたり作文を書かせたりしている。

 また、スマートフォンなどのIT機器を使って良質な文章を読む方法を指導することも、時代の趨勢に合ったものであろう。

塾で知識と語彙力を増やす

 長年指導をしていて気づいたことだが、国語が苦手な塾生に対して、国語という教科の勉強をさせてもあまり効果がない。ところが、テスト勉強が上手になってきて、5教科、特に理科と社会科の成績が上がってくると、知らぬ間に国語の得点も高くなっている。

 早目にテスト勉強にとりかかり、しておかないといけないテスト対策をした後に、テスト範囲の教科書を細かいところまで隅から隅まで目を通すことができるようになると、自然に読解力がつき、知識、語彙も増えている。

 人間は、言葉によってものを覚え、言葉によって考えている、だから「賢くなる」ということは「言葉を知る」ということなのだということを、全教科にわたって強調している。

塾で表現力を伸ばす

 これまで、作文指導は多くの塾でオプション扱いだったのではないだろうか。しかし、これからの入試では、作文指導を含めた表現力の養成が最重要になってくる。

 外国、特にアメリカに留学した人の多数が、多くの文献を読むことと作文を徹底して鍛えられたと述べている。そして、英文による文章表現法には、いわゆる「定石」、「マニュアル」が存在する。ところがわが国では、文章作成は各自の個人技に任され、文章の構成の仕方をきちんと明示したものはあまり見かけない。

 そろそろ各塾で、文章はこういう構成、つくりで書くべしという実効力のある作文構想の基準を明確にし、それを競う時期に来ており、それができた塾が、新しい時代の覇者になるであろう。

塾の英語の指導法を一新する

 先日、今までの英語の教え方は、実は漢文のレ点や一二点の訓読法と同じだったのではないかと気づいた。

 遣唐使が持ち帰った文献を日本語流に読めればそれで新しい知識を修得できた。中国人と話す必要はなかった。英語も同じ。新知識を日本語に翻訳したら用は足りたから、「まず主語を訳し、あとは後ろから訳しなさい。」で済ませてきた。まさに漢文の読み方と同じで、これだと英語が「聞き取れない」「話せない」のは当たり前だ。

 突然「英語の4技能」が言われ始めたのも、日本の若者が世界と直接向かい合わないといけない時代が来たからに他ならない。

 では塾での英語指導法はどのように変わらないといけないのか?

 英語指導の達人の著書を読むと、全員が「日本語を介在させない英語力の習得」をめざせとおっしゃっている。私もそれしかないと思っている。

 具体的には、「暗唱」であろう。今までの文法指導、読解指導に加えて、いかに暗唱力をつけるかが英語力強化の成否を分けると思われる。

 若者に強さを求める以上、私たち塾も頑張って、「強い指導法」を探究し続けないといけない時代がやってきたのだ。

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