中学の定員増加で
多様な生徒を受け入れる
2017年度の中学受験から定員を70名から90名に増やした静岡学園中学校・高等学校。石田邦明校長は「これまで以上に多様な生徒を受け入れたいという思いがありました」と語る。
グローバル社会において必要とされる「多様性(ダイバーシティ)」「協働性(コラボレーション)」「コミュニケーション」という3つの力を養うためには、さまざまな経歴や個性を持った生徒が集まり、一緒に学ぶことが大切。そうした生徒を幅広く受け入れたい狙いがあった。
こうした同校の教育理念に共感し、この春、入学した新入生は96名。クラス数も2クラスから3クラスに増えた。この中には帰国子女や外国人子女も含まれている。
「社会習慣も文化も違う子どもたちが集まっており、切磋琢磨させていきたい」と石田校長は意気込む。
これまでも「中高一貫生は個性豊かな生徒が多かった」と石田校長。個性と個性がぶつかることもあるが、自分とは考え方が違う人間を受け入れることで、協調性が芽生える。そうした経験がリーダーシップに目覚めるキッカケになると言う。
「一貫生は社会に貢献しようという気持ちが強い。生徒会のメンバーとしても中心となって活動しています。静岡学園イズムを身に付けてくれていると思いますね」と石田校長は嬉しそうに話す。
新大学入試対策に
「教養科学の樹」と英語を強化
新しい大学入試制度に向けた取り組みも着実に進んでいる。特に手応えを感じているのが探究プログラム「教養科学の樹」だ。毎週1回、興味を持った新聞記事を元に自分の意見をまとめるもので、「生徒の関心の幅が広がっているのを感じています」と石田校長。
このプログラムでは、まずわからない語句を調べることから始め、記事を要約する。さらに記事に書かれている問題を自分ならどう解決するかまで、文章で表現する。このことが「問題解決に必要な力を付ける基礎となる」と石田校長は話す。
「これからの大学入試は、自分の考えを言葉にできなければ対応できません。3年間自分の考えをまとめたノートはきっと生徒たちの財産になると考えています」
生徒の学びをさらにバックアップしようと、昨年から取り組んでいるのが「静学メソッド」というアクティブラーニングのデータベース化だ。各教員のアクティブラーニングの授業記録を集約。29年度からは自由に閲覧できるようにしている。自分の教科以外の授業でもさまざまなヒントがある。そうしたアイデアを共有することで、指導力をさらに高めたい考えだ。
石田校長は「学力を向上させるために大切なことは意欲・関心です。これを高めるのは楽しさや感動を与えるのが一番。意欲が高まれば生徒たちは自ら学ぶようになります。そこに集中力や学習習慣が伴えば、必ず学力は向上します。このメソッドを活用して、意欲・関心を引き出す工夫をしてもらいたいと考えています」と話す。
全英語の授業がスタート
中3ではハワイ海外研修
英語のコミュニケーション力を高める取り組みとして、27年度から中学生の英検全員受験がスタートした。昨年度の中3生は72名のうち7名が2級、28名が準2級を取得している。夏休みに校内で行う「イングリッシュキャンプ」(希望者)も好評だ。5人程度の少人数のグループに分かれ、グループごとに1人のALTが付き、一緒にゲームや料理を通じて英語を学んでいく。 |
さらに今年度からケンブリッジ大学出版のテキストを使ったオールイングリッシュの授業もスタートさせる。対象は中1・中2全員で、年間30コマ。1クラスを2つに分け、生徒が活発に英語で発言できるような授業を展開する。
加えて、中3の修学旅行はハワイへ行く。この海外研修では三つの大きな柱を設けている。一つは平和学習で、生徒は真珠湾の戦艦ミズーリのハイライトツアーに参加する。もう一つは班別行動による自由研修。班に分かれて博物館などを回りながら、与えられたミッションをクリアする企画を計画中。現地で生きた英会話を体験する。
もう一つの目玉はハワイ大学の大学生との交流だ。6〜7名のグループに分かれて自己紹介から始め、お互いの文化や習慣についても英語で会話する予定。
鳴嶋吉彦中学教頭は「海外で仕事をする機会も多い時代ですから、将来の自分の姿を想像するキッカケにもしていきたいと考えています」と話す。
特別プログラム「SGT」
棚田で自然農法を体験
同校の教養教育の代名詞と言える特別プログラム「SGT(SHIZUGAKU GOLDEN TIME)」。陶芸やかるた等の日本の伝統的なゲームの体験の他、大学や企業の専門家を招いての講義も企画。生徒の知的好奇心を刺激する多彩なプログラムを用意している。
今年から棚田で無農薬・無肥料の自然農法を実践している「清沢塾」の農業体験講座も設けた。気負わず遊びながら農業とは何かを学べるもので、塾長である中井弘和静岡大学名誉教授が来校して行った3月の事前講座には、多くの中・高生が参加した。
「この講義の隣では、最先端のAIを使った自動走行についてのプログラミング講座が実施され、実際に走行実験まで行っていました。最先端の科学技術と、原初的な自然農法という対象的なテーマが同時に開講されることが非常に印象的でした。この幅の広さがSGTの魅力だと思います」と石田校長は笑顔で話す。
|