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2017/1 塾ジャーナルより一部抜粋

一般社団法人 グローバル教育研究所 2016年度講演会
第4次産業革命時代にマッチする「日本の教育」
〜グローバル教育を家庭・学校・企業にどう取り入れるか?〜

  2016年10月22日(土)/東京ウィメンズプラザホール(表参道)  
     
 一般社団法人「グローバル教育研究所」は2012年5月設立。理事長の渥美育子氏は、国内外の企業のグローバル戦略を担う人材を育成するエキスパートだ。急激に変化する世界情勢に翻弄される日本を危惧し、未来を生きる子どもたちへのグローバル教育の必要性を強く訴えている。中でも独自に開発した教育プログラム「地球村への10のステップ」は教育関係者から熱い注目を集める。今回の講演会では、根幹をなす思想の解説・模擬授業・教育現場の報告など、プログラムの意義がわかりやすく紹介された。

■基調講演
世界と連動する教育を!

一般社団法人 グローバル教育研究所 理事長 渥美 育子氏

 21世紀、社会は新しい次元(Dimension)に入ろうとしています。世界は流動化、多極化して予測不能の時代へ。ITの急速な発達で、地球はひとつのデジタル化した技術的生態系のようです。日本において、「新しい教育」はどのように実践していくべきか。20世紀のマインドセットをベースに行われる限り、世界とのギャップは広がる一方です。早急に日本は21世紀のマインドセットを育てる教育に切り替えるべきです。目指すのは、壊れつつある「世界の枠組み」を構築する教育、心の目と情報処理で肉眼では見えない世界の「全体」を見ることができる人間の育成です。

 2013年頃ドイツの国家戦略から起こった第4次産業革命、そして翌年、シリコンバレーでIIC(Industrial Internet Consortium米国企業5社によるIoTに関する普及推進団体)が設立。中国もドイツとの規格策定の共同作業に乗り出し、2016年春にはこれらの国がIoTの世界標準作りで合意しました。

 国際標準化をめぐる競争にすでに出遅れている日本は、人間関係とモノづくりを重視しますが、世界は脱人間・モノづくりの次元へと、ものすごい速さで突き進んでいます。日本特有の文化的価値観を新産業革命の中で生かす道を開拓せねばなりません。

 冷戦体制までは「国際化」の時代、90年代半ばに世界のシステムが大きく変化し価値観は大転換。2000年には世界で意識のグローバル化が起こりましたが、当時日本はバブル崩壊を引きずり、国内に目が向いたまま2010年代に突入。「国際理解」時代の延長のまま、言葉だけの「グローバル教育」を始めました。日本は一刻も早く「真のグローバル」の意味を理解し、本物の「グローバル教育」を始めないといけない。それは「21世紀 知識産業の時代」【図1参照】の世界で生きるために必要な新しいルールや原理・原則を、幼いときから身に付けさせる教育です。

世界の枠組みと倫理観を
自分の中に創る

 中3〜高2までに、教育で身に付けさせるべき対策の一つ目は「真のグローバル度を上げる」こと。ドイツの中小企業のグローバル度の高さ、米国IICグループのオープンマインドのベンチャー精神は、第4次産業革命の起爆剤です。二つ目の対策は「世界の枠組み」=世界共通の土俵、を心の中に設定すること。日本文化のエッセンスは「Here&Now」、刹那の美ですが、世界では真逆の価値が同時に内在する。世界共通の時間軸・空間軸を有する「大きな器」を子どもたちの中に創る教育プログラムが必要です。そして、世界共通かつ最大の器の中でソフトパワーを磨いて発揮して戦っていける人材を育成せねばなりません。

 「道徳」は「自分はどうすべきか」と考える人間の内側からの規範ですが、グローバル教育に必須の「倫理教育」は、人類が正常な形で存在するための地球環境には限界がある、この事実を理解して「人間はどうすべきか」と規範すること。人工知能AIが発達し、またISなどテロが世界中で起こる時代に必要なのは倫理教育なのです。

21世紀型マインドセットへ
思考の切り替えが急務

 こうしたグローバル教育のプラットフォームとして、私たちは73億人の多様な価値観をパターン化した「文化の世界地図」を創りました。そこに5000年の時間軸を掛け合わせたのが「地球村への10のステップ」です。21世紀のマインドセットとは、自国から外国を眺めるのではなく、宇宙も含めた世界全体を俯瞰し、世界共通の時間軸・空間軸のもと、理解・発想・発信していくことです。いくら「グローバル」を学んでも、日常に戻れば、年間行事をこなす循環型時間軸のままでは、21世紀の世界も危機も見えません。世界は足し算的に進化してきましたが、21世紀の急速な変化は、指数関数的な進化だと気付ける観点がほしいのです。

 日本人の思考は小さい枠組みをたくさん持つが大きな器ではない。周囲に合わせるので自分の「軸」も無い、もしくは「人間力」と称する軸が一本だけ。こうした大人が、21世紀を生きる子どもにグローバル教育をしても無駄です。21世紀の思考形態は「マトリックス思考」。対立二項を設定し、両方の価値の良さを最大限に引き出し「全体最適」を生み出す。アクティブラーニングが目指すところも同様です。

 第四次産業革命は、グローバル化に出遅れた日本には非常に挑戦的な時代の到来。21世紀型マインドセットに変わる良いチャンスです。今こそ企業も教育界も新しい次元へ進みましょう。

■模擬授業レポート
「地球村への10のステップ」
− アクティブラーニングによるグローバル人材教育 −

 はじめに、渥美育子氏制作の中高生を主対象とする教育プログラム「地球村への10のステップ」の認定講師・阪田浩子氏(オフィスしょくの達人代表)から概要が説明された。

 地球の子どもに世界共通教育を行う必要性から作られた同プログラムでは、4つの文化コードに分けた世界地図を元に、価値観のパターンを知り、歴史上の人物に会いに行くタイムトリップ的な授業が展開される。地球や自然への畏敬から確かな倫理性が生まれ、「子どもでも世界を変えられる」積極的な平和構築の姿勢が育まれる。終盤は先人が作ったルール・憲法を学び、子どもたち自身で、未来を創る「全体最適」のルールを導き出す。

 今回の模擬授業はプログラム冒頭のイントロの回を凝縮したもの。参加したのは10名の大学生。認定講師・井上創太氏の「世界とどういうスタンスで向き合うべきと思いますか?」という問いかけから授業は始まる。続々と繰り出される質問に、学生は一人で考え、また複数で話し合い、自由闊達に意見を出し合う。

 「いま世界で起きている、日本にも影響を及ぼす危機とは?」の問いに学生たちは、地球温暖化・移民問題・核開発の是非・食糧問題・資源の枯渇・他国からの軍事的脅威などを挙げた。「では、グローバル発想に切り替えるエクササイズをしましょう」と井上氏。解決すべき問題を見極めて「優先順位を付ける力」、相反する価値観の軸を見出し、双方の目的を達成できる全体最適を考える「マトリックス思考」などを体験していく。1992年地球環境サミット本会議でのセヴァン・スズキ(当時12歳)のスピーチから、易しい言葉で最大の説得力を発揮するポイント、グローバルマインドに必要な思考パターンや行動力を学んでいく。

 最後の質問「グローバル人材とはどんな人?」に学生たちからは「多様な立場に自分を置き換えられる人」、「所有する富をシェアできる人」、「環境の持続性を考える人」という意見が出る。井上氏は「心がけ次第で、皆さんの人生は素晴らしいものになっていく。続きのプログラムでグローバル人材に近づいてくれると嬉しい」と参加した学生たちに伝えた。

■パネル討論
家庭、学校、企業に一貫した
グローバル教育をどう導入するのか?

〈パネリスト〉
麗澤大学経済学部教授・筑波大学名誉教授 徳永 澄憲氏
森村学園 理事長 松本 茂氏
岐阜県議会議員 伊藤 秀光氏
模擬授業を受講した大学生2人
〈司会〉
クロスメディア・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役 雨宮 和弘氏

大学や中学校・高校で
広がりつつある〈地球村〉

雨宮 麗澤大学では平成28年に経済学部に「グローバル人材育成専攻」を新設。「グローバル概論」の授業では「地球村への10のステップ(以下・地球村)」の大学版を導入、実施していますね。

徳永 経済学部・グローバル人材育成専攻では、「グローバル概論」は全員必修です。〈地球村〉プログラム体験後は、学生のモチベーションが格段に上がります。模擬国連に参加する学生も現れました。

雨宮 森村学園では、夏期マルタ島研修の直前に高校生15名が〈地球村〉プログラムを体験。短期間でも生徒の変化が顕著だったと聞きました。

松本 グローバル研修として今夏初めて実施しました。渥美先生が提唱されるグローバル人材育成を見据えて、まず英語力を、そして自分の考えをきちんと相手に伝える意味をしっかり学ぼう、と取り組んでいる最中です。

雨宮 伊藤さんは知事と米国教育視察を終えたばかりとのこと。岐阜県にグローバル教育を導入したいと強いお気持ちに臨んでいらっしゃいます。

伊藤 私自身、〈地球村〉のプログラムを体験し、衝撃を受けました。「これはホンモノだ」と。岐阜県にもスーパー・グローバル・ハイスクールが何校かありますが、ぜひ〈地球村〉プログラムを、と動き始めています。

雨宮 多様性や本質を理解するうえで気を付けていることはありますか。

徳永 ホンモノに触れることですね。「グローバル概論」では国際機関の現職の方から、現場の苦労話を直接聞きます。短期留学でも語学だけでなく企業研修や実習などを取り込んでいます。

模擬授業に参加した男子学生 本物を見る、知ることの大切さは僕も実感しました。ブラジルの貧困層の虐げられた子どもたちがさぞ暗い顔をしているかと想像して行ったら、意外や状況を楽しみながら、たくましく生き抜いている。

雨宮 予測不能な未来を子どもたちはワクワクしているようにも感じます。我々大人は、不安が否めないのですが。

松本 まず親御さんたちに、グローバル時代を生きる子どもたちに相応しい応援をしてほしいと理解を促し、その上で「学校はいろいろな体験を用意しているよ」と子どもたちに伝えています。

グローバル時代に
真に必要なスキルとは

伊藤 大人でも大勢の前で質問するのはためらいますよね。「質問しないことが恥ずかしい」のが欧米の感覚。まず質問できる雰囲気を全体でつくること。自分の考えをハッキリ大きな声で述べる態度を身に付けることですね。

模擬授業に参加した女子学生 必要なスキル=英語、が一般的ですが、母語の力は英語以上に必要だと感じます。森村学園さんの「言語技術教育プログラム」には大変興味があります。

松本 マルタ研修に参加した高2生は高1から言語技術教育プログラムを受けています。他国のような主語や結論を文頭に置く話し方を、日本語でも身に付ける。それはグローバルな思考の仕方を理解することに繋がります。
会場からの質問 グローバルに対応した教育体系をゼロから作るとしたら、どんな科目が必要だと思いますか。

徳永 基礎学力を構築するためにも現在の科目群は必要だと思います。科目ではないかもしれませんが、ぜひ「プレゼンテーション」を加えたい。

伊藤 渥美先生の著書にもある「心の目(心眼)」や「日本人のアイデンティティ、DNA」を育てるような科目が生まれると良いですね。

雨宮 皆さん、本日はありがとうございました。

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