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中学・高校受験:学びネット

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2017/1 塾ジャーナルより一部抜粋

個別指導から小中高一貫教育へ
市場の枠組み変える成長戦略

  進学プラザグループ 株式会社 仙台進学プラザ
代表取締役 阿部 孝治さん
 
     
 東北地方を中心に全国10道県に230教室を展開する進学プラザグループは、宮城県塩釜市の集会所から始まった。開塾から8年後の1993年、集団指導全盛時に、「塾なのに家庭教師」をキャッチフレーズに仙台個別指導学院を開設。新たなビジネスモデルである「1対2の個別指導」は時代のニーズに見事にマッチ。宮城県内にとどまらず、福島、山形、青森など県外へも進出し、急成長を遂げた。その後も2011年の東日本大震災を乗り越えて教室展開を加速。個別指導塾の競争が激化する中、小中高一貫教育により新たなマーケットを開拓し、右肩上がりの成長を続けている。

個別指導で急成長
県外進出へ

── 2015年に創業30周年を迎えられました。振り返ってみて、節目と思われる出来事を教えてください。

阿部 32歳のときにサラリーマンを辞めて、仲間とたまたま塾を始めました。しかし、塾の経験がなかったため、「できる子を集めて、合格実績を出す」という成功法則も知らず、来てくれた子どもをただ一生懸命教えるだけでした。世の中はバブル景気でしたが、そんなことにも気付いていなかった(笑)。

 周りの塾はどんどん大きくなっていくのに、こちらは勉強のできない子ばかりが増えて、夜中の1時2時まで補習。これは厳しいと思いました。

 そこで始めたのが個別指導です。当時の集団指導塾は成績上位層ばかりを集めていましたから、下位層は行くところがなかった。勉強のできない子には「家庭教師をつけてください」という時代でした。

 当社の個別指導学院では、塾なのに家庭教師のように教えてもらえる。これがニーズにぴったり当てはまった。早い時期に「1対2の個別指導」というビジネスモデルを確立したことが第1の節目。成長の一番の要因です。

── そこから一気に急成長ですね。

阿部 実は、伸びた要因にはもうひとつあって、数字を管理するようになったことです。

 サラリーマン時代は営業だったので、常に数字に追われていました。それゆえ自分たちは数字に追われない楽しい会社にしようというこだわりがありました。しかし、それでは会社は伸びないし、自分たちの生活も楽にならない。数値目標を設定するようになって、生徒数が毎年700名ずつ増えていき、1998年には3,000名を突破。仙台でトップレベルの塾へと成長しました。このあたりから県外進出を考え始めました。

── どの地域ですか。

阿部 2000年に福島県と山形県に教室を出したところ、まだ個別指導がなかった時代なので競争相手もおらず、すぐに生徒が集まりました。2004年に青森県、2005年に茨城県進出。次々に教室を展開していき、2005年には生徒数が1万人を超えました。

── まさに快進撃ですね。なぜ短期間のうちにそれほど多く教室展開できたのですか?

阿部 福島県と山形県は自前で教室展開しましたが、青森県と茨城県はM&Aです。教室を展開したくても人材には限りがあります。そこで、良い先生がいる塾との提携を考えました。

M&Aによる拡大戦略を成功させ
震災を乗り越えて
生徒数2万3,000人を達成

── 北海道や千葉県、滋賀県などにも教室を展開されています。これらもM&Aによるものですか。

阿部 そうですね。他県に進出するときはまず、肌合いの合う塾を探してアプローチするところから始めます。生徒数は当てになりませんが、良い先生がいれば生徒数は増やせます。人材を確保するためのひとつの手段としてM&Aを始めました。

── M&Aを成功させるポイントを教えてください。

阿部 成功だけでなく失敗もいろいろありますよ。行ってみたら生徒がいなかったり、潰れそうな会社で、照明ひとつ直していなかったり、期待していた先生が退職していたり…。そもそもオーナーが「これ以上、成長余力がない」と判断して売却するのですから、簡単にはいきません。企業文化も違うので、受け入れられずに辞める人も出てくる。とにかくこちらが一生懸命になり、本社から出来る社員を出して、相手と融合しなければうまくいきません。しかし、合併によるシナジー効果により、売り上げや利益が上がれば待遇も良くなります。

── どのようにして売り上げを伸ばすのですか?

阿部 私たちのノウハウを導入して、付加価値を高めます。例えば、集団指導であれば、個別指導を始めるとかですね。短期間で売り上げを倍ほどにしないと成功とは言えません。

 2005年にグループ企業となった茨城県の思学舎は、当初の売り上げは7億円で生徒数は2,000人でした。現在は、売り上げが23〜24億円で、利益は2〜3億円と3倍以上です。この成功が次の成長へのきっかけとなり、茨城県に続き、千葉県、滋賀県、福井県、埼玉県にも進出。生徒数を伸ばしてきました。

── 2011年の東日本大震災も乗り越えられましたね。

阿部 被害を受けた教室が多かったし、福島県では原発事故の影響で閉めざるを得なかった教室もかなりありました。非常に厳しい状況でしたが、嬉しかったのは予想外に多くの生徒が戻ってきてくれたことです。子どもたちから「普通の生活をして勉強していることがどれほど大事なことかがわかった」と言われ、教育は思っていた以上に強いということと、何が起きるかわからないから、今やりたいことは今やるべきだと痛感しました。そこで、福島から撤退した代わりに、客観的には大変だと思われていた札幌に進出しました。

 震災の翌年の2012年にはグループ全体で170教室でしたが、今は230教室。生徒数も2万3,000名を超えています。

小学生からの一貫教育で
東大現役合格

── 創業から順調に成長を遂げてこられました。現在の少子化と競争激化の中での成長戦略を教えてください。

阿部 個別指導で伸びてきた当社ですが、個別指導塾が増えて、競争が激しくなり、ダンピングが始まっています。震災の2〜3年前から生徒数がピークを打ち、厳しい状況になってきました。モデルチェンジする必要が出てきたのです。

 そこで、今までのように「とにかく生徒を集めよう」ではなく、合格実績を出すことを中心に考えました。そのためには、小学生からきちんと指導して、学力のある生徒に育て上げなければなりません。

 当時、仙台では私立中学受験はなかったのですが、たまたま公立中高一貫校の二華中学校が2010年に開校することになりました。その前年にナガセが全国統一小学生テストを実施したところ、予想外に多くの子どもが受験しました。その保護者の中から「東北で四谷大塚を教えている塾がないからつくってほしい」という強い要望が出てきたのです。

── それで「俊英四谷大塚」を始められたのですか。

阿部 生徒が来るか疑問でしたが、始めたところ30人集まり、その中から開成中学に合格した生徒が出ました。また、なかには東京から盛岡に転勤したお父さんを盛岡に残して、お母さんと子どもだけが塾に通うために仙台に移ってきた家庭もありました。裕福で意識の高い人たちです。

 それまで仙台では考えられなかった世界を知り、「これから公立中高一貫の二華中もできることだし、こういう子どもたちを中心にしっかり中学受験させて、中学・高校と上にあげていけば市場は広がる」と考えました。個別指導から小中高一貫教育へのモデルチェンジです。

── 中学受験だけでなく、小中高一貫教育ですか?

阿部 二華中の初年度の定員は80名でした。1,000人くらい受験したので、ほとんどの子どもが不合格です。大事なのは、その子どもたちにもう一度しっかり勉強させて、公立トップ校の仙台一高、仙台二高に上位で合格させることです。そのためのコースが選抜制の「難関TOPPA」コース。子どもたちに、「本番は大学受験だから、もう一度塾に来て頑張ろう」と声をかけてモチベーションを持続させました。そして、高校入学後は、東進衛星予備校です。

 2016年3月に二華中の第1期生が高校を卒業しました。仙台一高や仙台二高に進学した生徒も合わせて、宮城から5名が東大に現役合格を果たしました。その中には小学5年生から8年間通って来てくれた生徒もいます。8年前から取り組んだ小中高一貫教育の結果がようやく出始めたというところです。

── 新しいビジネスモデルですね。

阿部 今では二華中合格者の6割が四谷大塚コースの子どもたちで占められています。小学校4・5年生から入塾する生徒も増えてきました。リピーターではなく、長く通ってもらう。この戦略は成功と言えます。

── 他の地域でも同じ戦略を展開されていくのですか。

阿部 札幌では札幌開成、千葉では東葛飾というように、新設の公立中高一貫校をターゲットに展開しています。時間はかかってもこれからの塾を考えると必要な取り組みです。

 2020年の大学入試改革に対応するには、自分で考えて表現する力が必要です。これは高校生になってからでは間に合わない。小学生のときからきちんと訓練しなければ身に付かない基本の力です。小学生のときから中高一貫校受験を目指して勉強することは、2020年対策につながります。

人材獲得の成否が
塾の盛衰を決める

── 時代のニーズに合わせて戦略を成功させてこられました。その基本的な経営方針を教えてください。

阿部 今、うまくいっているときに、次の手を打つことです。個別指導が順調だった10年前に小学生部門を始めました。余裕があるうちに、他がすぐに真似できない新しい芽をしっかり育てていくことです。

 そして、戦略や戦術の前にまず人材です。人材さえ確保できれば、塾はまだまだ伸びます。しかし、簡単にはいきません。

── 昨年は何人ぐらい採用されたのですか。

阿部 昨年度は新卒40人と中途採用20人を採用できました。

── 多いですね。採用の秘訣は何でしょうか?

阿部 採用担当者の魅力にかかっていると思います。以前は、人事総務が担当していましたが、今は現場の教室長など、若くて仕事ができる人を登用しています。採用活動は法人ごとに各地域で行います。仙台だと、東北大や山形大、福島大。東京では筑波大などの学生が多いですね。

── 研修はどのようにされているのですか。

阿部 新卒の場合は内定後の8月から翌年3月の入社まで、毎月1泊2日の日程で地域ごとに実施しています。適性を見極めるために、私も必ず出席します。

── 全地域の研修に出席されるのですか。

阿部 塾の盛衰は人材獲得にかかっていると考えていますので、採用時も全員を面接しますし、研修も出席します。

── 評価・給与システムについて教えてください。

阿部 M&Aをしていますから、地域ごとに異なります。しかし、どの地域においても、同業者よりも高く設定しています。

── 最後に新春を迎えて、今年の抱負をお聞かせください。

阿部 生徒の能力を開発して成長させると同時に社員も共に成長し、会社を大きくしていく。人材成長企業でありたいと思っています。厳しい競争の中で生き残るためには、より高い目標を掲げてクリアしていくしかありません。新しい市場を開拓していけば、塾にはもっと可能性があると考えています。

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