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2016/3 塾ジャーナルより一部抜粋

大学入試改革
学習塾にとっても大きな変革期

  PS・コンサルティング・システム 代表 小林 弘典  
     
 大学入試が大きく変わろうとしています。明治の学制発布以来の大改革という声もありますが、そこまではいかないにしても、少なくとも1979年の共通一次試験発足に比するにたる、また見方によっては戦後教育改革に比するにたる大改革であることは間違いないでしょう。われわれ学習塾は「入試」とともに生きてきました。入試が大きく変われば、われわれもまた大きく変わらなければ生きていくことができません。どこをどう変えればよろしいのか。逆からいうと、どこを変えなくてもよいのか。いまだ先行きが判然としない改革ではありますが、これまでにわかっている内容を材料に、改革の概要とわれわれの対応策について考えてみたいと思います。

大学入試改革の概要

 まずは入試改革の概要をみていくことにしましょう。

 大学入試はこれまで、大学入学を希望する高校3年生と既卒者を対象に、AO入試、推薦入試、一般入試(大学入試センター試験+各大学の二次試験/センター試験を利用しない大学は個別の学力試験)の3種類に分けて行われてきました。今次の改革は、こうした区分をなくして、新設される2つのテストすなわち「高等学校基礎学力テスト(仮称:以下、基礎学力テスト)」または「大学入学希望者学力評価テスト(同:以下、学力評価テスト)」のどちらかと、学力試験を伴わない個々の大学の「個別選抜」とで合格者を決めようという改革です。これに伴い、センター試験は廃止されることになっています。

 2つのテストと個別選抜について、決まっていること、推測できることをまとめておきましょう【表1〜3参照】

(1)基礎学力テスト

@19年度から実施予定。受検対象者はほぼすべての高2生と高3生(既卒生)。学校単位で授業中に受検することも想定。

A19年度〜22年度は試行実施期間とし、大学入学者選抜には活用しない。

B高2生時点での成績は原則として大学入学者選抜には活用しない(活用されるのは高3生のときの成績)。

C22年度まで出題科目は「国語総合」「数学T」「コミュニケーション英語T」。23年度以降(23年度の高2生は現在=15年度の小3生)は新学習指導要領の導入に伴い、必修科目すべてに拡大の可能性大(選択受検可)。なお、英語は民間の資格・検定試験を採用の可能性あり。

D実施回数は原則、夏から秋にかけての2回。ただし、全国一斉に同一日程で実施することはしない。

E試験時間は1科50分〜60分。

F評価は10段階以上の得点段階別表示。

G出題内容は「基礎的な知識・技能」を問う問題中心。

(2)学力評価テスト

@20年度から実施予定。受検対象者は大学入学を希望する、原則として高3生(既卒生)。

A出題科目は、現行学習指導要領下で実施される23年度までおそらく現行センター試験と同じ。24年度以降(同年度の高3生は現小3生)は新指導要領の導入に伴い、合教科の「数理探究」や「情報」「歴史総合」「公共」などが新設。英語は民間の資格・検定試験を採用の可能性大。

B実施回数は原則、年複数回。ただし、当面は冬に1回?。

C評価は得点段階別表示(段階数は未定)。

D24年度からCBT-IRTの導入を検討中。

E記述式問題が含まれる。

F出題内容は、基礎的な知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な「思考力・判断力・表現力等の能力」の程度を計る問題が中心。

(3)個別選抜

@受検対象者はおそらく、個々の大学が求める「学力評価テスト」または「基礎学力テスト」での応募要件を満たした高3生(既卒生)。

A評価方法は、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明する資料など。

B評価内容は、主体性を持って多様な人間と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)の多寡。

実施が伸びる
可能性も…

 決まっていること、推測されることは今のところ、こんなところじゃないでしょうか。

 ただ、注意しておかなければならないことがいくつかあります。1つは実施の時期の点で、基礎学力テストは19年度から、学力評価テストは20年度からとされていますが、かなり厳しいスケジュールですので、予定通りにスタートできるかどうか。就任早々の馳浩文科相が昨年11月、日経新聞のインタビューに答えて、「大学や高校、保護者らの意見を踏まえ、できる限りの合意を得て進める。スケジュールありきでよいのか…」と延期を示唆したことは皆さんご存じの通りです。

 2つ目は、この入試改革は本来、国立大学の改革であって、私立大学や公立大学とは直接かかわりのない改革だということです。審議会の答申や有識者会議の報告書のどこを読んでも、私立大学や公立大学を含むという明確な記述はありません。とはいえ、のちにわかりますが、国立だけでなく、私立や公立も含めた全高等教育機関を巻き込まない限り、改革を行う意味がなくなってしまいます。政府・文科省は法的規制(例えば大学認証評価制度)や財政面での影響力などすべてを総動員して、かなり短い期間内に「右へならい」という形に持っていくものと考えてよいでしょう。

 3つ目は基礎学力テストに関するもので、同テストは23年度から出題科目が新学習指導要領下の必修科目に拡大され、同時に入試に活用とされていますが、23年度の高3生は現行の指導要領下の生徒です。かれらの成績を入試に活用するのは、少々無理があるのではないでしょうか。さらに、23年度の高2生は新指導要領下の生徒ではあっても、高2のときの成績は選抜には活用しないとされています。矛盾を感じるのですが…。

なぜ、変えなければ
ならないのか?

 入試改革の大枠をみてきました。次はわれわれの側の対応策、特に2つのテストと個別選抜への準備態勢の構築についてですが、その前に、なぜ「大学入試」を変えなければならなくなったのか、そこから考えていくことにしましょう。遠回りに感じられるかもしれませんが、ここをしっかり押さえておかないと、変化のどこにどう対応すべきなのか、みえにくくなってしまう危険があります。お付き合いをお願いしたいと思います。

 初めに【グラフ1】をご覧いただきましょう。世界の名目GDPに占める日本のシェアの推移です(国連統計)。90年代には最大17.4%(94年)あったものが、14年には5.9%へと大きく減ってしまっています。20年の間に3分の1になってしまいました(14年のトップはアメリカで22・2%、2位は中国13.4%、3位が日本、4位はドイツ5.0%、5位はイギリス3.8%、6位はフランス3.6%、7位はブラジル3.0%)。

 シェアだけではありません。【グラフ2】をご覧ください。こちらはIMFのデータによる、国民1人当たりGDPの世界ランキングの推移です。同じく90年代にはトップ5の常連だった日本が、直近の12年には17位、13年には25位、14年には27位にまで落ちています。ちなみに14年の1位〜5位はルクセンブルク、ノルウェー、カタール、スイス、オーストラリアで、アメリカは11位、ドイツは17位、イギリスは19位、韓国は30位です。

 このデータをご覧になって、皆さんはどのように思われたでしょう。このままでいけば日本はたちまち貧乏国へと転落する、ついこの間まで「経済大国」と大きな顔をしていた日本は、一体どこへ行ってしまったのか…。

 政府も経済界も思うことは同じです。なんとかして凋落を食い止めなければならない。ではどうすれば…。

 GDPは1人当たりのGDPと人口との掛け算ですから、この先、人口の減っていく日本で大きく増加させるのは難しい。とすれば、残るのは1人当たりのGDPの増加しかありません。そのためには国民1人当たりの生産性の向上を図るしかありません。

 そこで、政府・経済界が目をつけたのが「科学技術イノベーション大国」への道です。要するに世界の最先端をいく高品質の科学技術を開発して、それを海外に高価格で輸出することで日本経済を強くしていこう、国民1人当たりのGDPを大きくしようという戦略です。

 余談になりますが昨年8月、鹿児島の川内原発1号機が再稼働し、原発ゼロ状態が終了しました。さらに先ごろ、福井の高浜原発も稼働を再開しました。安倍政権がこの「再稼働」に異常なほど執着しているのはご存じでしょう。国民の58.2%が反対しているにもかかわらずです(賛成37.3%/15年9月20日付東京新聞)。理由は間違いなく「原発は海外に売れるから」でしょう。すでに安倍首相は13年10月、トップセールスでトルコに原発4基を売ってきました。建設費だけで250億ドル(3兆円弱)のビジネスです。また、この1月、イギリスの原発4基の建設に関連して、1兆円余りを日本企業が受注することが決まりました(1月25日テレビ朝日)。他国へ売るのに、本家が「ヤーメタ!」というわけにはいきません。固執するのも当然でしょう。新幹線の10倍もの電気を使いながら、東京−大阪間で1時間しか時間短縮されないリニアモーターカーの開発を進めるのも、同じく将来「海外に売れる」という思惑からでしょう。また何十年来の憲法解釈を無視してまで集団的自衛権をゴリ押しした理由の1つも、高価な最先端機器を搭載した武器の輸出が今よりずっと容易になると考えたからでしょう。

凋落を止めるには
人材が必要なのだ!

 ところで、科学技術イノベーション大国への道を進めるためには、とにもかくにもヒト、人材が必要になってきます。どういう人材が必要になるかというと、

一、世界水準を超える優れた研究を行う人材や卓越した技術を開発する人材
二、産み出された社会的価値を国際展開する交渉力(売りまくる力)を持った人材
三、製品化を下支えする人材(下請けの技術者)
四、こうした人々が平穏な社会生活を送れるよう、地域ニーズに応える人材

 といったところでしょうか。

 では、そうした人材をどこから持ってくるのか、どこで作り出すのか。目の前にあったのが高等教育機関の存在です。

 【グラフ3】にみるように、現時点で日本の18歳人口のほぼ8割は大学、短大、高専(4年次)、専修学校専門課程(専門学校)のどこかで学んでいます。ならば、これらの学校を再編成して、必要な人材の供給源にすればよい。発想としては当然でしょう。では、どのように再編するか ──。

 文科省が昨年8月末、来年度予算の概算要求を提出するに際し、同省高等教育局から次のような新規予算の請求があったのをご存じでしょうか。

 【機能強化の方向性に応じた重点支援】
404億円(新規)

 各大学の機能強化の方向性に応じた取り組みをきめ細かく支援するため、国立大学法人運営費交付金の中に3つの重点支援の枠組みを新設。

 内容を説明する文書には、「国立大学法人運営費交付金における3つの重点支援枠について」というタイトルのもと次の文言が並んでいます。

【重点支援@】 主として、地域に貢献する取り組みとともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界・全国的な教育研究を推進する取り組みを中核とする国立大学を支援(55大学/大学名略、【表4参照】

【重点支援A】 主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界・全国的な教育研究を推進する取り組みを中核とする国立大学を支援(15大学、うち4大学は大学院大学/同)

【重点支援B】 主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に卓越した教育研究、社会実装を推進する取り組みを中核とする国立大学を支援(16大学/同)

高等教育機関は
5つのカテゴリーに

 一昨年の10月でしたか、「第1回実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」という長い名前の文科省の会合で、経済界出身の委員の1人が、大学を「L大学」と「G大学」とに分けたらいかがかと提案して、論争を引き起こしたのを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。一部のトップ大学を世界に通用するグローバル大学(=G大学)に、残りの大半の大学を地域(ローカル)に貢献する職業訓練校(=L大学)に! 乱暴な言い方をすればこういう趣旨の発言でしたが、そこではGとLとの2区分だったものが、ここでは3つに区分され、現実的な予算の形になって姿を現してきています(どの区分に入るかは文科省の指定ではなく、それぞれの大学が自発的に申し出たもの)。

 おそらくは国立大学のこの3区分が再編成の基本型であり、いずれ公私の大学や短大もこの基本型の中に組み入れられることになるでしょう。さらに目下、中教審で専門学校の1条校化が議論されています。昨年4月、当時の下村文科相から諮問されたもので、順調にいけばこの秋には「専門職大学」あるいは「専門職業大学」という名称の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の誕生が決定するはずです。そうなれば高等教育機関は、上記3区分に加えて専門職大学と従来の専門学校の2区分の、合計5区分まで広がっていくことになります。

 なお、念のために付け加えておきますと、専門職大学と専門学校はともかくとして上記3区分が当面、ハッキリとした法律など公的な形で線引きされることはないだろうと思われます。とはいえ昨今、文科省が大学側に求めているアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)の開示要求はますます厳しくなっていくでしょうから、それらをみれば一目瞭然、誰でも自然とわかるようになるのではないでしょうか。

 整理をしておきましょう。

@卓越世界水準型大学… 国際的スタンダードの下、全学的に世界最高水準の教育研究を目指す大学(以下、ここではA大学と称する)

A特定専門分野型大学… 特定の分野で世界的、全国的な教育研究を目指す大学(B大学)

B地域貢献型大学… 地域活性化の中核となりつつ、全国的な教育研究を目指す大学。短大の一部はここに入る?(C大学)

C専門職(業)大学… 地域のニーズに貢献する職業人養成を目指す大学。専門学校の一部と、私立大学・短大の一部が移行?(D大学)

D専門学校… 地域のニーズに貢献する職業人養成を目指す学校(E学校)

 高等教育機関はこのように5つのカテゴリーに分けられ、科学技術イノベーション大国づくりに必要な人材ということで言えば、上記「一」と「二」の人材は主にA大学と分野によってはB大学から、「三」の人材は主にB大学とC大学から、「四」の人材はC大学とD大学とE学校から、安定して調達することができるようになるわけです。

適材を適所に
はめ込んで…

 先に、なぜ「大学入試」を変えなければならなくなったのか、と申し上げました。ヒトコトで言ってしまえば、このように高等教育機関をカテゴライズしたうえで適材を適所にはめ込み、必要な教育を施して必要な人材に仕立て上げるには、現行の入試制度では無理があるから、というのが答えでしょう。

 改革を推進する側に言わせれば、現行の制度には2つの大きな欠点があります。1つは、知識量の多寡を1点刻みで評価して合否が決まる現行の制度では、学力が上位であるというだけの理由で、例えば医師になる意志も覚悟もないまま医学部に入ったりするケースも少なくなく、適材と適所とのマッチングが行われにくいこと。もう1つは、大学全入時代の進行に伴い、いわば「学力不問」のまま、願書を提出さえすれば入学が許可されるケースも多くなってきていること。

 一方、改革案では、「基礎学力テスト」または「学力評価テスト」を必須化することにより、少なくとも最低限の「学力」の有無は担保されることになります。さらに、個々の大学の、学力検査を伴わない「個別選抜」の強化により、受験生の資質や適性も評価されたうえで合否が決まることになります。

 少し具体的に申し上げておきましょう。【表5】をご覧ください。例えば特定専門分野型大学にカテゴライズされている、理系の○○大学△△学部への入学を希望する生徒A君がいるとします。大学が指定している応募要件は表の通りですから、A君はまず「学力評価テスト」を受検し、国語でS1レベル以上、社会2科目でAレベル以上、数学2科目でS2以上、理科2科目で同じくS2レベル以上、別枠の英語でCEFR換算B2以上の成績を収めなければなりません。それ以下の成績では受験資格さえ与えられません。こうして○○大学△△学部で学ぶに際しての、必要な最低限の学力が担保されます。A君が頑張って応募要件をクリアした場合、A君は次の「個別選抜」に臨むことになります。ここで、応募した受験生全員とともに意志や資質や適性の強弱有無を判断されて、合否決定にいたるということになるわけです。適材を適所にはめ込むには、かなり効率的な制度といってよいのではないでしょうか。

顧客の希望と
学力に応じた指導

 さて、そこでわれわれの対応策です。

 大学を含めた高等教育機関の入試は、おそらく次のような形になるものと思われます。

@A大学… 「学力評価テスト」+非常に厳しい「個別選抜」

AB大学… 「学力評価テスト」+厳しい「個別選抜」

BC大学… 「学力評価テストまたは基礎学力テスト」+易しい「個別選抜」

CD大学… 「基礎学力テスト」+易しい「個別選抜」

DE学校… 「基礎学力テスト」+かなり易しい「個別選抜」

 われわれの仕事は顧客を合格させることですから、まずは顧客の希望と学力に応じた塾作りをしていかなければならないでしょう。

 基礎学力テスト+個別選抜で受験するD大学、E学校への希望者が多い塾ではこれまで通り、高校の授業についていけるよう指導すれば十分だと思われます。

 少々横道にそれますが、文科省の標榜している「教育の目的」が「生きる力の育成」であり、この「生きる力」が「豊かな人間性」、「健康・体力」、「確かな学力」の3つで構成されていることはご存じでしょう。

 このうち、入試にかかわるのはもっぱら「確かな学力」ですが、これもまた、

@ 基礎的な知識・技能

A 基礎的な知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力

B 主体性を持って多様な人間と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)

 の3つで構成されています。

 基礎学力テストで出題される内容は、この@の「基礎的な知識・技能を問う問題が中心」であるうえ、当面は高1で学習する範囲からの出題ですので、とにもかくにも教科書に出てくる基礎的な知識の理解・習得をしっかりと、が原則になるでしょう。なお、「個別選抜」については「調査書」と高校入試の面接程度で済むだろうと思われます。

 C大学には、上は中堅以上の国公立大学から下は現状「学問不問」の大学まで含まれるとともに、上記Aの学力を測る問題中心の「学力評価テスト」の受検を求める大学と、基礎学力テストの受検で足りる大学との双方がありますから、全く同一の指導というわけにはいきません。とはいえ、やはり基本は教科書レベルの「基礎的な知識・技能」の習得でしょう。

 毎年春、全国の小6生と中3生を対象に「全国学力・学習状況調査」が行われています。同調査で出題される問題のうち「A問題」は上記「確かな学力」の@を問う問題、「B問題」はAを問う問題として有名ですが、昨春の調査によると、両者の相関係数は小6の国語が0・703、算数が0・714、中3の国語が0・714、数学が0・815でした。両者の間には統計学的にみて、かなりの相関関係がある、基礎ができれば活用の7、8割はOK、ということになります。そうしてみると、とりあえずは高2までの教科書内容を確実に、ということでしょう。「個別選抜」の難易にもバラツキが予想されますので、特に難関大学を受験する生徒には相応の指導が必要でしょう。

 B大学とA大学を希望する生徒の多い塾では、「個別選抜」の指導が欠かせません。「学力評価テスト」の指導ももちろん大切ですが、こちらでは各科目、得点順に上から何人までがS1段階と決められるわけではなく、文字通りの絶対評価、つまりは得点○○点以上以下で段階分けされますので、従来のセンター試験や個々の大学の二次試験よりは多少とも易しくなると思われます。重箱の隅を突っつくような勉強は不要になるのではないでしょうか。

 問題は「個別選抜」です。応募要件次第とはいうものの、大学や学部、学科によってはかなりの数の受験生が集中するでしょう。こちらは上記Bの「主体性を持って多様な人間と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」が問われますので、さきに触れた大学側の3ポリシー(アドミッション、カリキュラム、ディプロマ)を十分把握しておくよう指導するとともに、当該大学で何を学びなにを得て社会に出ていきたいのか、自らの意志をしっかりと固める指導をする必要があろうかと思います。

 なお、突飛なようですが、「個別選抜」は「就職試験」に似ています。今次の改革は、経済界出身の委員が多数を占める有識者会議や審議会で議論され決定されたものですから、当然と言えば当然でしょう。われわれとしては、これまでのAO入試や推薦入試における選抜課程を検討するとともに、大企業の「入社試験」での選抜課程の研究をしておく必要がありそうです。

 以上、極めて大雑把にではありますが、今次の大学入試改革の概要とわれわれ塾の対応策についてみてきました。周知の通り、文科省は今次の改革を「入試改革」とは呼ばずに「高大接続システム改革」と呼んでいます。まさにその通りの改革で、これが実現されれば大学入試だけでなく、高校入試が変わり、さらには私立と中高一貫校を含めた公立中学の入試が変わっていくことになるでしょう。すでに高校入試と中学入試については、新学習指導要領の導入(小学校20年度、中学校21年度)を待たずに、昨年あたりから大きく変わり始めています。われわれにとっても大きな変革期だといって間違いありません。ITの進行ともどもその変容を注視しておきたいものです。なお、本稿では、外部の資格・検定試験活用が確実化されている「英語」の問題と、昨今、急に話題に上りつつあるアクティブ・ラーニングについては触れることができませんでした。いずれ折をみてお話しさせていただきたいと思っています。

小林 弘典氏プロフィール
PS・コンサルティング・システムの代表を務める学習塾経営コンサルタント。学習塾の個別コンサルティングを主業務とするかたわら、講演・執筆活動の他、塾経営者の勉強会「千樹会」「伍泉会」なども主宰している。塾ジャーナルでは「塾長のマンスリー・スケジュール」を連載中。

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