脳研究の成果を活かした
新しい教育手法
ウィザスが中学受験に本格的に取り組み出したのは、今から16〜17年前。関西でも後発組だ。現在は、大阪府内に拠点集約型の「第一ゼミパシード」を7校展開するほか、関西圏と広島の第一ゼミナールに「パシードコース」を開講している。
「特定の学校に特化せず、第一志望合格を目標に指導していますので、進学先は多岐にわたっています」と原統括部長。ここ数年は、灘、東大寺、西大和学園など超難関校合格者が増えてきている。
パシードの特長は、脳科学研究の知見を生かした独自の意欲喚起教育、「EMS」にある。これは同社の堀川一晃会長が20年前から研究してきたもので、脳科学の専門家の指導も受けながら、「セルフコーチプログラム」を開発。7〜8年前から試験的に取り入れ始め、5年前に正式に導入した。授業の導入から興味関心を引き出す工夫を行い、子どもたちの参画度を高めていく。単元の説明はもちろん、質問の仕方まで細かく練り上げ、子どもの能動的な学習姿勢を維持し、学習効果を高めていくことで、成績向上・志望校合格へと導いていく。
しかし原統括部長は、「合格は必要条件だが十分条件ではない」という。
社会で活躍できる人となるために、EMSに基づいた人間形成教育に力を入れ、授業中の態度、人としての考え方、基本的な礼儀など授業を通じて子どもに判断させ、考えさせる。
さらに年4回の特別講座では、「算数が苦手」というような思いこみや、自己に対するマイナスイメージを白紙化するプログラムを実施。独自の製作された映像教材もEMSの理解を深めるための一助を担っている。
「メンタル面から開拓しなければ、勉強が苦しくなり、途中でつぶれることもあります」
EMS導入により子どもが学習に前向きになり、明らかに進学実績が伸びた。同時に退塾も減った。
また、子どもの可能性を広げるという観点から、サッカーやバレー、ピアノなどの習い事と受験勉強を両立できるように補講を設けるなど、できる限りフォローしている。
徹底した研修で
教育者として育成
EMS教育には高いスキルが必要だ。そのため研修に時間をかけている。
特に新卒社員の初期研修は厳しい。本部で授業の練習を重ね、教務の責任者やベテラン教員のチェックを受ける。模擬授業が基準をクリアするまで、現場に出られない。なかには1年以上かかるケースもある。
「勉強を教えるだけでなく、教育者として、子どもの将来に責任を持てる人でなければなりません。場合によっては、考え方そのものを変えてもらう必要があります」
パシード全体では毎週2回、全員が集まってST(Study & Training)研修を行う。スキルや考え方、モチベーションを統一し、どの教室においても同じサービスを提供するためだ。特に教務関係は、模擬授業、上位生指導、入試分析、教材開発などテーマごとに年間計画を立てて実施。また、保護者懇談や入会説明会のロープレを行い、ホスピタリティ向上に努めている。
新しい形の中学受験専門塾
「SUR(シュール)」中学受験合格指導会の可能性
パシードが一般的な集団授業であるのに対して、新しい形の中学受験専門塾が「SUR中学受験合格指導会」だ。灘や大阪星光学院など、最難関中学を目指す小学1年生から6年生を対象に2012年夏、大阪・京橋に開校した。
子どもの生活環境や学習スタイルに合わせて、「完全1対1の個別指導」やICTを活用した「ネットライブ難関校対策講座」と「算数過去問徹底解説講座」、さらに低学年から算数脳をつくる「算数オリンピック数理教室アルゴクラブ」を開設している。
なかでもネットライブ授業は、ウィザスが独自に開発して特許を取得しているWEB学習システムだ。先生と生徒が双方向で授業を進めるので、生徒の反応を見ながら声がけできる。個別指導と集団授業のどちらも可能だ。すでに東北から九州まで、日本各地の子どもたちが一緒に授業を受けている。授業はすべて録画しているので、反復学習もできる。
「5年後にはネットライブ授業が主流になるかもしれません。家庭だけでなく、地方の学習塾でも受講できるので、中学受験専門の講師を抱えていなくても、子どもたちは最難関中学を目指せます」と原統括部長は、ネットライブ授業の可能性に期待する。
昨年12月、ウィザスは浜学園との業務提携を発表した。ICT活用など新規事業の共同出資会社を立ち上げる予定だ。また、浜学園の低学年用の教材をパシードで使用するなど、教材やノウハウを共有する。
常に時代の先を目指すウィザスの、中学受験指導の可能性もさらに広がりそうだ。
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