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中学・高校受験:学びネット

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2015/1 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く109
教育ソリューション事業のフロンティア
グループ連携で多様な教育支援を創出

     

株式会社学研塾ホールディングス
代表取締役社長 福住 一彦さん

 戦後復興の礎となる「教育」を育む信念のもと創立された「学習研究社」は、21世紀に入り、教室・塾事業を積極的に展開。「(株)学研ホールディングス」へと移行した翌2010年、教室・塾事業「学研塾ホールディングス」(以下「学研塾HD」)・出版事業「学研出版ホールディングス」を設立、次世代の総合教育ソリューション事業界を翔る両翼を揃えた。学研塾HDは、今年度9月期の全学研グループ売り上げ900億円のうち3分の1(前期比15.8%増・275億円)を担う。グループ中核事業の代表取締役に今年8月就任した福住一彦氏に、「学研だからできる」新たな教育、静かに燃え続ける「塾への思い」を聞く。

「良い塾」の連合体が
日本の教育を変える!

── 全国展開の学研エデュケーショナル各教室と、各地域のグループ塾を併せて現在10社。強健な地盤を形成なさっていますが、統括する塾HDの立場・役目とは。

福住 良い塾を連合した運命共同体として、教務力や顧客満足の向上を共に追求し、日本の教育を変えていこうという姿勢でおります。成功・失敗事例も1社より10社の蓄積から、それぞれの塾の背景に合うものを取捨選択していくほうが、進化論的にも成功確率は高い。また、それぞれの伝統と企業文化を大事にしたいので、指導理念や指導方針を無理矢理に一本化することは考えておりません。

── 今後も学研教室やグループ塾の名称は統一する予定はないと。

福住 指導システムが全然違うのに、表面上は名称でくくって合格実績などを共有しても、保護者や子どもたちには何の意味もありません。ただこの先、ICTを中心に効果的な新しい教育システムが生まれたら、指導システムの共有が可能になるかもしれません。

── 共有という点では学研・塾グループの小・中学生対象の進学塾の全講師が受検する※「学研・塾講師検定」を実施されていますね。

福住 研修・検定内容を策定する教務研修強化委員会は、グループ塾から選出されたメンバーで構成されています。それぞれの塾が胸襟を開いて、良いものや意見を出し合い、討議を通して、皆が納得できる親和性の高いマニュアルや研修教材へと仕上げていきました。最高位SS級を取得した講師たちの実際の授業の映像配信も始めたところです。人気・実力ある講師の立ち居振る舞い「指導者のコンピテンシー」もリソースの一つとして共有していきます。教務力をいかに上げていくかは、すべての塾の共通の課題。連合によって、その効果をさらに高めていきたいですね。

── Webで展開している管理職対象の人事・労務・財務などを学べる「ネット研修」も斬新です。

福住 塾経営の効率化や、より顧客満足度の高いシステムなど、長い間熱い志で塾を営んできた方々に満足していただけるように、さまざまなリソースを提供していかねばならない役目を感じています。

※「学研・塾講師検定」4回目となる今年は過去最多2,417人が受検。1年間をかけて研修が行われ、学力テスト・生徒アンケート結果の両方に合格した講師だけが教壇に立つことができる

「塾でしかできない教育」
全国展開で伝えたい本質

── ご自身も「創造学園エディック」(兵庫県)での長いキャリアをお持ちですが、現場で培われた視点とは。

福住 「塾」の世界に身を投じてきた人たちは「塾でしかできない教育がある」という価値観を持っています。ほとんどの創業者は、集団指導の中で切磋琢磨し、生徒たちの能力が飛躍的に伸びること、最終的に自分で努力できる子どもたちが育つことを知っている。そうでなければ、この仕事を一生の仕事にしようとは思わないでしょう。「社会の仇花」と呼ばれ、学習塾不要論が起きたときも、乗り越えるだけの価値があると信じて、先生方は今も一生懸命子どもたちに対峙していると思います。

── 2010年に学研エデュケーショナル代表取締役に就任。そして学研塾HDの現職にある今、塾への情熱に変化はありますか。

福住 良し悪しではなく「塾」の根幹が変化してきているとは思います。創業期の「人間教育」よりも、「教育ビジネス」の会社・業界と捉えて参入する人が増えてきました。少子化の大きな流れの中で生き残る戦略として「個別指導」が隆盛です。すると「集団内で伸びる」ことを知らない子どもたちや保護者、また初めから個別指導を仕事と考える講師も増えてくるでしょう。大学受験も映像配信型の授業が多い中、グループ塾の「創学ゼミナール」・「Z-UP」ではライブ授業で勝負しています。松下村塾や適塾のような、志を持つ者が集い、切磋琢磨して伸びる集団指導の「塾の価値観」をもっとアピールしていきたい。その思いを塾HDという立場で10社の力を結集して、全国展開できることは大変ありがたいと思っています。

── 学研HD代表取締役社長・宮原博昭氏も「塾業界の社会的成長・ステータスの向上を期待」(2012年5月号記事)と。アピールはまだ不十分だと思いますか。

福住 まだまだですね。ただ世間の求めるものは、やはり「合格実績」などの数字であり、それが現実。そこへ「塾の価値観」だけ声高に喧伝するつもりはありません。科目指導を通して、子どもたちの人間力を引っ張り出そうという考え方に賛同いただける塾が全国に広がり、どの地域にも安心してお子様を預けていただける教育事業体を創りたい。最終的に「自分の人生の中で大きな柱ができた」という手応えを得て、卒業する生徒がたくさん現れてくれたら、それで充分だと私は思います。

── その最終目標の実現に向けて、現状の課題を挙げるとしたら。

福住 タテのつながり・ヨコの展開をもう少し緻密にしていくこと。幼児教室の「ほっぺんくらぶ」から学研教室、またはグループ塾、そして高等部へとつながりはあるものの、実際のジョイントはまだシームレスではないので、整理が必要です。こちらの押し付けではなく、子どもたちやご父母が、同じ塾・系列と感じられる一本の柱を作りたいですね。「ヨコ」の展開は、教育ICTや英語教育などの品揃え。タテ・ヨコ両方の整備をしていくことが、塾HDとしての足元を固めていくことになると考えています。

学童保育、教育ICT
新しい教育を世界へ発信

── 塾HDの新たな展開としては、「クランテテ三田」を開校したばかりですね。

福住 (株)市進ホールディングスさんとのフィフティ・フィフティによる初の本格的な共同事業です。

── プレスリリースには「最高レベルの幼児保育・学童保育・進学指導を提供する教育施設」とありますが、最大の特徴は。

福住 学研が40年以上前から研究実践を続けている「モンテッソーリ教育」を環境設計の基盤として、生活の中にネイティブの先生による英会話コミュニケーションを取り入れています。2〜12歳の子どもが、英語のある生活をごく自然に感じられるように環境づくりをしています。

── 英語以外の企画も盛りだくさんですね。

福住 学研グループが開発した運動プログラム「リトルアスリートクラブ」を導入し、プロトレーナーによる運動指導を行っています。幼児には思考力を磨く脳育教材での多様な遊びを、小学生には学校の宿題を徹底サポートし、自学自習の習慣づけを行う学びのプログラムを提供しています。これからも子どもたちの「自分を成長させるちから(自己教育力)」を信じ、意欲を引き出す多様なイベントを企画しています。今冬から小学生以上を対象としたオーダーメイド型個別指導「クランテテアカデミー」を開設すべく、準備を進めています。

── ご父母の反応などから、この新しい教育システムへの高い期待・ニーズなどを感じますか。

福住 預かってもらっている間に子どもにいろんな体験をさせたい、勉強を教えてもらえる時間があればなお良いという、結構「欲張り」なコース設定が人気を集めています。費用とコースメニューの豊富さは比例しますので、料金設定が難しいところですね。

── 他に現在推進中の企画などは。

福住 学研教室の海外展開です。すでにグループ塾・秀文社が昭和63年に海外子女向け進学塾のシンガポール校を設置しており、グローバル展開の先鋒隊になっています。

── 学研「サイエンススクール」をすでに6ヵ国(インド・香港・タイ・インドネシア・ベトナム・中国)で現地向けの展開が始まっていますね。

福住 ミャンマー・タイではサイエンスに加えて「算数教室」も展開しています。文章題や図形問題などを盛り込んだ教材で思考力を育成します。高額な月謝ではないので、幅広い生活層に受け入れられると思います。

── 教育ICT分野での海外進出も今後の視野に入れていますか。

福住 インドの公立小学校への算数教材導入が決まった(株)タマイ インベストメント エデュケーションズと、今年5月に業務提携しました。これを足掛かりに、教材ICTコンテンツの世界展開を予定しています。

── 塾・教室事業と出版事業の両輪を持つ学研HDにとって、教育ICTにはどのような可能性を。

福住 出版事業は紙からコンテンツ・サービスへと進化していく方向性にあり、塾・教室事業のパイプがあれば一層広がりが出ると思います。ただ、ICTの効果に関して「実証済み」とは言い難いのが教育界の現状です。学研教室ではタブレット学習の「iコース」の会員が8,000人を超えており、教育効果を検証するにはまずまずの数ではないかと。

── 教育ICTの実効性を打ち出すために必要なことは何でしょう。

福住 子どもが自主的に学習に取り組み教育成果が上がるサイクル、その仕組み作りですね。学研教室では、先生が直接指導はせず、ペースメーカーとして進度管理を行い、寄り添い励ましながら、自主的な家庭学習へとつなげていきます。「人間」である先生が常に介在することで、どのような成果を生むのか、検証している段階です。

── 塾業界で長くご活躍なさってきて、さまざまな困難を乗り越えていらしたと思います。今後、塾HDにおいても生かせる克服方法がありましたら、ぜひお聞かせください。

福住 創造学園時代、阪神・淡路大震災で被災し、生徒やご家族が亡くなるなど「これで終わりか」と半ば思いました。しかし「いや、ここで押し潰されてはいけない。もう一度、塾の原点に戻ろう」と社員一丸で再スタート。あの年からの加速はすさまじく、会社は大きく成長しました。東日本大震災でも翌日から支援物資を仙台まで運び、グループ塾「東北ベストスタディ」での無料指導会を実施。大きな困難も次へのエネルギーに必ずなります。そして何よりも「先生に出会えたから頑張れた」、「この仲間たちと一緒にいたから自分が伸びた」と言う子どもたちの言葉。この仕事のすばらしさ、可能性を感じます。すべての生徒にそう感じてもらえるために一生懸命努力をする。その姿勢さえ変えなければ、必ず評価されると思っています。

── 大変重い実感を伴う、揺るぎない御信念ですね。これからの御社の不屈の推進力になると思います。ありがとうございました。

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