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中学・高校受験:学びネット

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2014/11 塾ジャーナルより一部抜粋

ズームアップインタビュー この人に聞く108
抜群の合格実績で九州ナンバーワンの地位を確立
〜 成長のカギは人材育成と評価基準の透明化 〜

     

英進館株式会社
取締役管理本部長 西山 明さん

 福岡市に本部を置く英進館は1979年の創業以来、右肩上がりの成長を続けている。特にこの10年は筒井俊英社長のもとで、福岡県外への教場展開とともに、「幼児部」や「花まる学習会」、「パズル道場」などの新規事業を立ち上げて事業規模を拡大。生徒数・売上高ともに九州ナンバーワンの地位を築いてきた。今年3月期には、ついに売上高が100億円の大台を突破。その勢いは止まらない。急成長を可能にした要因と今後の取り組みについて、取締役管理本部長の西山明さんに聞いた。

1教場当たり600人を
集めるブランド力

── 最初に教場数など現在の事業規模を教えてください。

西山 福岡県を中心に九州7県に55教場を展開し、生徒数は約3万人です。中学生が一番多くて約50%、小学生が約35%、高校生が約15%と、近年高等部の生徒数が伸びてきています。というのも、最近は久留米附設やラ・サールに合格しても、地元の公立トップ高校に進学し、そのまま高等部に継続して難関大学を目指すケースが多いからです。今年は現役生を中心に、東大に57人、九大に209人が合格しました。

── 少子化にあっても順調に生徒数を伸ばされていますね。

西山 一直線ではなく、何度か節目はありました。

 英進館の始まりは、1979年に現館長の筒井勝美が生徒10数人で始めた総合学習塾です。「自立した社会人を育成する」を教育理念に、学ぶことを通して、日本の未来を担う子どもたちを育てることを目的としていました。中学受験に関しても「井の中の蛙で終わらせたくない」と、素質のある子どもは灘や開成、麻布等、全国区の難関校へのチャレンジも積極的に応援してきました。それが差別化となり、熱心な保護者の支持を受けて、生徒数も急激に増えてきました。

 ただし、教場展開は遅いですね。教師陣を揃えた万全の態勢が整った後でなければ、展開してこなかったからです。

── 1教場当たりの生徒数が非常に多いですね。

西山 教場ごとの差はありますが、平均して1教場あたり約600人の生徒たちが通塾しており、他塾に比べてかなり差はあると思います。それにより1学年の生徒数が多いことで、学力レベル別にきめ細かくクラス設定できるメリットがあります。また、遠方から通って来てくれる生徒が多く、県をまたいでの通塾も珍しくありません。

── なぜ、そこまでして通うのでしょうか。

西山 もちろん他塾と比較して圧倒的に高い合格実績があると思います。ただし、誰もが初めから難関校に合格する力を持っていたわけではありません。英進館に通う生徒の約7割が、入塾時偏差値50未満の成績でした。多くの生徒たちが英進館で学び、入塾当初は思いもしなかった学校への合格を果たしています。

 次に個性あふれる教師陣への信頼もあると思います。特定のスター教師に依存せず、個性を発揮し、生徒を楽しませる授業をする英進館の教師たち。英進館にすでに通塾されている生徒・保護者からの紹介入塾者が多いことも特徴の一つです。

── 成績を伸ばす秘訣は。

西山 その中心は熱血教師陣と優れた教材・指導システムにあると思います。教師については、さまざまな面から教師力の向上を図ってきました。また教材については、小学部では定評のある四谷大塚の教材を使用すると同時に、九州地区に合ったオリジナルの教材やテストも独自で作成してきました。1992年に現社長の筒井俊英が東大を卒業した後、東大と早稲田の友人2人と一緒に入社、彼らが現場で教えながら2年をかけて開発した教材が、受験用教材として日本で初めて特許を取得しています。この頃が英進館の第1の過渡期です。難関校の合格実績が一気に伸びました。

全社員の成績を
イントラネットで公開

── 第2の過渡期はいつ頃ですか。

西山 2004年に筒井が代表取締役社長に就任してからぐんと伸び出して、10年間で生徒数も業績も倍増しました。

── 何が起こったのでしょうか。

西山 熊本や鹿児島、佐賀、長崎、大分、宮崎と、少しずつ福岡県外に教場展開を始めました。相変わらずスローペースですが(笑)。

 しかし、一番大きいのは、新卒の採用方法を変えて、研修も強化したことです。学習塾は人材がすべてですから。

── 採用と研修について詳しく教えてください。

西山 例えば、会社説明会は人事部任せにせず、どの説明会でも筒井自らが話をします。採用基準も厳しくなりました。成績ではなく、志ある者を採用するために面接重視です。入社前の1週間の研修中は役員全員が張り付きます。そこで会社の理念や組織について研修し、皆のベクトルを合わせていきます。

 また、研修中は教師職にかかわらず、新入社員全員が毎日、模擬授業を実施します。教えるとはどういうことかを知ってもらうためです。初めて経験する者が多いので、当然苦労しながら、しかしモチベーション高く練習しています。もちろん私たちも付き合います。「もう1回見てください」と頼まれると、なかなか終わることができません(笑)。

 最終日は合格判定の模擬授業大会。他の業務をストップさせて開催する大きな行事で、大変に盛り上がります。研修後は各教室に配属されて、そこで科目研修を行い、1年間は常に先輩が付いて、手取り足取り指導していきます。

── 評価はどのようにされているのですか。

西山 授業アンケート・教師科目テスト・担当クラスの成績推移管理等、さまざまな項目からなる評価基準を通じて、できるだけ多くの社員の頑張りを評価できる体制を取ると同時に、社内表彰の場を各学期ごとに設け、頑張った職員たちが脚光を浴びる機会を増やせるように取り組んでいます。

── 担当クラスの成績推移管理とはどういうものですか。

西山 例えば、学力別の中学Sクラスであれば、どの教場のSクラスも同レベルの生徒たちで構成され、教材もカリキュラムも同じですから、成績も同じように推移するはずです。そこで差が出るとすれば、何か特別な事情がない限り、指導力の差とみなされます。それを改善していくことが目的です。

 英進館では、筒井自らが授業を担当しており、評価結果はすべてガラス張りにという思い切った改革がなされた後、社内の風通しは格段に良くなりました。

── 管理職には厳しいものがありますね。

西山 教師としては管理職も新人も同じ立場です。科目の会議でも、新人からどんどん意見が出ます。管理職が新人に、「そこはどう教えている?」と質問する場面もあります。新人からも良い点は学ぶ。そういうことに意味があります。筒井の言葉を借りれば、「昔、頑張ったからではなく、いま頑張っていることが重要」。上司が一生懸命に努力するから、部下の信頼が得られるのです。

 また、成績評価とは別に年に1度、会社の理念や合格実績、受験情報など、業務上の基本的な知識を問う、全社員が受けるテストがあります。設問はB4用紙6頁分ほどで制限時間は70分。このテストの成績もトップから最下位まですべて公開されています。

── 以前から行われていたのですか。

西山 実施していました。ただし、筒井が社長になる前には、管理職はテストを受けていませんでした。筒井は、まず自らがテストを受験することからスタートしました。そして全員が公平にテストを受験することによって、ベテラン社員のマンネリ化を防ぎ、「ひたむきに努力をする」ことの重要性を、社内に植え付けていったのです。

シンガポールで
「花まる学習会」を開始

── 新規事業について教えてください。

西山 2007年に、楽しみながら算数脳を鍛える「アルゴクラブ」がスタートしました。これは、入社1年目の新卒5人が中核メンバーとなって立ち上げた部署でした。このように新規立ち上げ事業については、入社間もない新人たちに積極的にチャンスを与えています。基本的には新しい取り組みは新しい者に任せていく方針です。信頼して任せることが人を育てることにつながっていきます。

 2008年には「幼児部」をスタートしました。その中核メンバーとして現在も部署を引っ張っているのは、当時入社2年目の新卒社員でした。そして、2012年には、「花まる学習会」を開始しました。この責任者もアルゴ立ち上げメンバーの一人であり、新卒たちがその中心となっています。

── 「花まる学習会」は九州初ですね。

西山 「花まる学習会」の高濱正伸先生と筒井が教育対談したときに、将来「メシを食える大人」を育てるという教育理念が一致。ぜひにと勧められ、全国でただ一つのフランチャイズとしてスタートしました。小1生から小3生までが対象で、現在、開校2年目にして生徒数は約1,200人となっています。その結果、今年、花まるから小学部に進学した生徒たちを中心に、小4生が増えています。

── 海外進出はいかがですか。

西山 今年2月にシンガポール校を開校しました。小1生から小3生を対象にした「花まる学習会」と小4生対象の「英進館小学部」です。海外に住む日本人のお子さんに、日本と同様のしっかりとした教育を提供したいと考えてスタートし、現在約120人の生徒たちが通ってくれています。

── シンガポールを選ばれた理由は。

西山 たまたま福岡の他企業と一緒に、筒井を中心に幹部職員でシンガポールを視察した際に、日本人学校の先生と親しくなったことがきっかけです。向こうから声をかけていただいて、一緒に教場をつくることになりました。いま責任者として、うちのスタッフ3人と仕事をしてもらっています。シンガポールは、アセアン諸国における情報の集積地ですから、海外のアンテナ校としての位置づけです。現在、急いで他国に進出する予定はありません。

── 国内で九州以外での展開はいかがですか。

西山 広島以東に単体で進出する考えは、今のところありません。当面は九州内部で展開していきます。ただし、展開を焦っているわけではありません。売り上げも100億円を超えましたが、売り上げのみを追っていくこともありません。もっと人材を育成し、新しい取り組みに力を入れていきたいと考えています。少子化の中で、学習塾も取捨選択されます。合格実績だけでなく、保護者の期待に添わなければなりません。

 現在も、ホームルームを通じてキャリア教育を実施したり、さまざまな取り組みを行っています。子どもたちに早く社会に出て活躍したいと思ってもらえるように、まず私たち教師自身が、教えるという仕事を通して、やりがいを持って生き生きとした姿を見てもらいたいと思っています。

── 本日はありがとうございました。

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