日本の教育はこれでよいのか
子どものやりたいことを
応援する塾をつくりたい
「スウェーデンに視察に行った時に一番衝撃的だったのが、子どもたちが全員『勉強は楽しい!』と答えてくれたこと。日本の子どもたちに同じ質問をしたら、ほぼ100%『楽しくない』と答えるでしょう。その時、自分が日本の教育を変えたいと痛感しました」
そう語る柴山さん。カナダ留学から帰国したのが2006年1月。サッカーのコーチ仲間の後押しもあり、「不安を感じる間もなく」3月に開塾した。
最初の生徒はサッカー教室の子どもたちだった。「このとき、入塾を決めてくれた親御さんには、本当に感謝しています。『子どもたちがやりたいことを応援する塾にしたい』という熱い思いに共感していただけました」。
「自分に才能はない」と言い切る柴山さん。できることは「努力」と「行動」と思い、開塾してからも死ぬ気で勉強した。教育関係からビジネス書まで年間300冊を読む一方、生徒からのどんな質問にも応えられるよう、教材研究を徹底的に行った。夜中に一人で模擬授業をすることもあった。
この頃、生徒募集に対する意識も変化した。指導者が生徒を集めることに違和感を持っていたが、「自塾の教育に自信があるのなら、広めなければ損をする子どもが出てくる」との助言を受け、募集にも力を入れるようになった。
●運営のポイント
教育理念を熱く訴えることで、保護者の信頼を獲得。生徒募集に結び付ける
講師は一緒に夢を追う仲間
意識を変えることで
生徒数80人突破
すぐに生徒数は50人を超え、教室は恵比寿に移転。しかし、そうなると1人では指導に手が回らない。講師に任せることが多くなった。
「その教室は3階建てだったのですが、下で僕が授業をしていると、講師の声が聞こえてくる。すると『なんでそんな教え方をするんだ』と思ってしまって…」
柴山さんには「講師はちゃんと指導をして当たり前」という考えがあった。しかし、それでは講師は育たないことに気付いた。
「講師は僕のビジョンに共感してくれる仲間。お互いに成長し、ここで働いてくれるからには幸せになってほしいと考え方を変えました」
その方針は、経営計画書にもはっきりと打ち出し、研修方法も刷新。それが講師自らも成長しようという姿勢へとつながり、生徒数80人の壁を突破するキッカケにもなった。
その後、世田谷にも教室をオープン。2教室となり生徒数は200人を超えた。「この時の原動力となったのが、社員を雇用したことです。その人の人生を背負うことになるわけですから、いっそう覚悟を決めました」
同塾では週3回、授業前にミーティングを行っている。月曜は戦略、火曜日はビジョンについて、木曜日は勉強会を行う。昨年までの勉強会では、現場のスキルに重点を置いていた。
「今年のテーマは数字です。『ビジョン・数字・行動・心』と言っているのですが、例えば宿題忘れの生徒が10人、中には3回連続の生徒もいたとします。その生徒は何か不安を抱えているのかもしれません。この数字を把握することで、適切な行動を起こすことができるのです」
●経営のポイント
講師は会社のビジョンを実現させる仲間として理念を共有
●運営のポイント
研修や勉強会を頻繁に行い、ビジョンや思いを共有し、スキルを高める
人生の目標を書き出す
オリジナルメソッド「SOL」
「ミラクルロード」も活用
同塾の指導スタイルは少人数授業と個別指導のダブル指導だ。
さらに一部のクラスでは「SOL(セルフ オーダーメイド ラーニング)」というオリジナルメソッドを取り入れている。
このメソッドでは授業の前後にホームルームの時間を設け、生徒は授業前に「Grow upシート」に人生の目的や夢を書き、それを実現させるための志望校や、そのために今日努力することを書く。そして授業後には、勉強したことで得られた成功体験を書き入れる。
「普通、勉強が終わると『疲れた』と思うことが多いですよね。実はそれがセルフイメージを下げる原因なんです。しかし、今日頑張ったことを書けば、ポジティブになり、自信もついてくるのです」
同塾ではさまざまな教材を使っているが、自立して学習が進められる生徒には「冨永式学習メソッド」の教材「ミラクルロード」も活用している。1ページの問題数が少なく、1冊子のページ数も少ない。短時間で達成感が得られるのが特徴だ。
「教材の良さもそうですが、冨永賢宏先生にお会いしした時、人間味あふれる温かさを感じ、冨永先生から学ばせていただきたいと思って、導入しました」と柴山さんは話す。
今年の3月に恵比寿教室の2階を床増し、高校部を本格的に立ち上げた。テーマは「学びが深まる場所」。楽しくリラックスできるデザインにこだわり、BGMにはクラシックが流れる。少人数グループが使いやすいように六角型やP型の机は特注した。また、壁のほとんどはホワイトボードになっており、生徒から質問を受けたら、講師はどこでも解説ができるようにもしている。
柴山さんは「将来的にはここを地域コミュニティにもしたいと考えています。例えば、建築家になりたい生徒がいたら、地域の建築家の方にここで講演してもらい、生徒や保護者だけでなく、学校の先生や地域の方にも参加してもらえればと思っています」と話した。
●指導のポイント
将来の目標を明確にするオリジナルメソッドで、志望校・今日の目標を決めることで、生徒のやる気を引き出す
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