子どもからお年寄りまで
楽しめるイベントに
大阪工業大学の教員や学生が企画・運営する参加型の「工作・実験フェア2013」は今回で5回目の実施となる。地域社会に「理科好き」「工作好き」の子どもたちを育てようと始められたもので、年々参加者が増え、今年は4,200人の親子が参加した。
会場となった大宮キャンパス周辺には、フェアののぼりがあちこちに立ち、お祭りのような雰囲気。地元や遠方から続々と親子連れが会場に向かう姿は、年に一度のイベントが浸透したことがうかがえた。
プログラムは過去最多の87プログラム。参加してみたくなるネーミングのタイトルが多く、事前申し込みが必要な59プログラムには、2,000人からの申し込みがあったという。自由参加の28のプログラムにも順番待ちが出るほどの参加者で賑わった。テーマの「科学の扉を開こう」にふさわしい、みる、はかる、つくるから自然の不思議さ、理科のおもしろさに触れるプログラムは子どもたちを多いに魅了した様子だった。幼い子どもたちも楽しめるように「KIDS ROOM」を開設したり、幼児でも参加できる風船を使ったロボットの作成やペーパークラフトを使ったロケット・人工衛星などの模型製作があったりと、参加者全員が楽しめる優しい対応が目に付いた。また、1階や3階にある食堂もオープンになっており、学生食堂のボリュームある内容と低価格に人気が集中した。
会場の大宮キャンパスは淀川沿いに立地し、1号館から10号館まである。大阪工業大学の精神を象徴している片岡メモリアルゲートは、向学心あふれる学生を最初に迎える赤レンガづくり。「大阪市の中央公会堂」をモチーフにしており、参加した保護者らに注目された。広大な敷地に立つ1号館、2号館、4号館、5号館、6号館、10号館が今回のプログラムの場。10時の開始と同時にすべてのプログラムがスタート、場内はすぐに子どもたちや保護者の熱気であふれかえった。
教育につながる
プログラムに人気
2号館1階では9種類のプログラムが一同に開始。さっそく事前予約していた「風車を作って発電しよう」に参加したのは、「今日を楽しみに来ました」と大阪市内から来たお父さんと小学校4年生の親子。その他、50人近くの親子が風車作りに悪戦苦闘した。材料は500mlのペットボトル2本に発電用モーター、発砲スチロールにストロー、お箸、紙皿など身近なものだ。道具はカッター、はさみ、油性マジック、ホッチキスなど。機械工学科の学生や教授が中心となり、黒板を使っての説明から始まった。子どもたちは真剣に説明を聞き、実際に取りかかった。カッターを使って、ペットボトルに切り込みを入れて羽根を作っていくのだが、側でヒヤヒヤして見ているお父さんが、つい手を出し、子どもと揉めるという微笑ましい場面もあった。コミュニケーションをとりながら完成させると、親子で「やったー」とVサイン。
その横では、「ストローでパンフルートを作って演奏してみよう」のプログラムを実施。太めのジャンボストローの長さを調節して音を出す。はさみを使うのが初めてという幼児の参加も多く、お母さんと一緒に一生懸命作る姿や、完成後、ストローを吹いてドレミの音が出ると、思わず笑顔が出る表情が印象的だった。
女の子が喜びそうなプログラムもあった。「楽しい香りを作ってみよう」。基本的な香料に別の香料を調合して、自分だけの香水を作るというプログラム。講座スタッフ陣からは、「香りの化学は有機化学の原点。この分野からは世界的に有名な多くの化学者が生まれました。今回の体験から化学者が誕生してくれることを期待しています」と小さなきっかけが将来につながることを話していた。
学生が主体となったデザイン工房からは、世界のクワガタムシやカブトムシが展示され、男の子から注目の的となった。巨大なヘラクレスオオカブトの周りには多くの子どもが集まり、「デカイ、大きい」と驚きの声が上がっていた。直接手に取っても良いクワガタもあり、恐る恐る手に取る子どもや、両手で取り、対戦させる勇敢な子どもたちもいた。目を輝かせて、いつまでも動かない子どもの姿を写真撮影する保護者もおり、「普段にない姿です」と興奮気味に話してくれた。
その他、1号館では小学生200人がオリジナルのペーパーカー作りに参加。完成後は坂道レースに参戦。「勝った! 早い!」と歓声が響き渡った。おじいちゃんとおばあちゃんが孫と一緒になり、ビニール袋ロケット作りに汗を流した姿も見られ、家族の絆が深まったと思われる場面もあった。
昼休みには大阪工業大学文化会ウィンドアンサンブルによる演奏会があり、ルパン3世やジブリのアニメテーマ曲がメドレーで演奏された。大勢の親子が集まり、手拍子を入れたり、拍手をしたりで素敵な時間を過ごしていた。
西村泰志工学部長は「少しでも理科のおもしろさやものづくりの楽しさを知ってもらえればいいですね」と主旨を語り、「学生600人が参加し、自分たちの企画を実践しています。教育の一環として子どもたちに教えるということが良い勉強にもなっていると思います。先ほど、お子さま連れのご家族に『ありがとう』と言ってもらえ、嬉しくなりました」とにこやかに話した。
夏休みも終わりに近い土曜日、しかも「工作・実験フェア」といった参加型のイベントは、ものづくりへの興味、理科の不思議などが刺激となり、子どもたちを一段と成長させたことは間違いない。また、親子・家族間のコミュニケーションがとれたという声も多く、中には、「夏休みの自由研究のテーマをゲットできた」という父親も、「最後は親子で楽しめたし、自身も楽しめた」という感想を聞くと、同大学が実施したフェアへの意義は大きいといえる。
地域に貢献する
大阪工業大学が
選ばれる理由
大阪工業大学は「世のため、人のため、地域のため」に真の実力を身に付ける教育を展開し、21世紀社会に貢献できる専門職業人の育成を目指している。1922年に開校した関西工学専修学校が始まりで、1949年に大阪工業大学となる。現在、工学部、情報科学部、知的財産学部の3学部15学科の学びのフィールドがある。全体の学生数は約8,000名。毎年の受験者数は右肩上がりで1万人を超えているという西日本有数の人気大学だ。
同大学が選ばれる理由のひとつには「就職に強い大学」。97.6%の就職率に96.4%の就職満足度は、同大学の基礎を重視し、実力ある人材を送り出す学風にある。前述の西村工学部長も「伝統に培われたものづくり教育を実践してきたことが認められた」と付け焼刃ではできないことを話す。時代の変化に左右されることなく、毎年順調な就職実績を積み上げてきた裏づけとして、2013年3月に開催された「社会人基礎力育成グランプリ決勝大会」では、「大賞(経済産業大臣賞)」を受賞した。
これは経済産業省が提唱する社会人基礎力、@前に踏み出す力(アクション)A考え抜く力(シンキング)Bチームで働く力(チームワーク)などを審査・評価する大会。今回選ばれた同大学チームは「なにわの町工場で鍛えられた社会人基礎力〜ものづくりに青春をかける学生エンジニアの挑戦〜」をテーマに、地元の中小企業と取り組んだ共同研究活動を発表したもの。2009年の大会に引き続き、2度目の快挙となった。
実践力を育てるプロジェクト活動も人気のひとつ。ロボット・ソーラーカー・人力飛行機プロジェクトなど数多く、学生主体で取り組んでいる。今回のフェアもその力が余すところなく実践されていた。そして、理工系の総合大学として充実した施設・設備。2013年春には大阪キタの新名所「グランフロント大阪」ナレッジキャピタル内に、新たな教育研究拠点を開設。大学の教育研究・研究成果を広く社会に発信する公開講座やセミナー等の開催、知的財産専門職大学院の社会人教育や社会の第一線で活躍する研究者・技術者との直接対話の場として活用し、産学公連携を推進している。 |