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2012/7 塾ジャーナルより一部抜粋

安田教育研究所 高校入試セミナー
[研究会] 進む首都圏公立の入試改革
私立併願数が増える傾向に
「受験生の気持ちをつかんだ私学はどこか」

  2012年4月20日(金)/於 中央大学駿河台記念館  
 4月20日(金)、首都圏の高校入試を振り返るセミナー(安田教育研究所主催)が開催され、100人を超える参加者が集まった。多くの志願者を集めた私学はどこだったのか、改革の進む東京・神奈川・千葉・埼玉の公立高校の入試はどうだったのか…。さまざまな切り口からの分析が試みられたセミナーとなった。

来年度は神奈川、茨城が
入試を一本化

 最初に(株)進学研究会 進学研究所所長の進士高男氏から首都圏の公立高校入試の動向について解説があった。

 「東京の公立中学3年生は22年度前年比5.3%増、23年度が3.9%減、24年度は2.7%増。東京は5、4、3と変化する。これが大きな特徴の一つです。もう一つ首都圏の特徴は、入試を一本化する県が出てきたことです。埼玉は24年度に実施。神奈川が25年度、茨城は25年度、山梨は26年度に一本化します。神奈川の大きな特徴は、面接が全員必須になること。面接の配点は最低限2割。東京の場合は1000点満点の外側からの加算ですが、神奈川は満点の中に組み入れられます」

 東京は来年に限ってほとんど変化はないものの、推薦枠の上限が50%ではなく30%になるかもしれず、しかも「影響を受けるのは専門学科だと考えられる」と進士氏。

 千葉の高校入試制度が変わったのは23年度だが、この時前期で落ちた生徒が同じ学校を受けたケースは3人に2人。この時の公立の志向率は74.1%で、22年度の77.5%より減った。今年度は75.1%と、志向率がやや上がった結果になった。

 進士氏は「公立高校の入試制度が変わるときは、私立高校に分があります。私立の併願校が増えるからです。埼玉は今年から一本化しましたが、私立の単願・併願ともに増えました」と話す。

 都立については「都立も私立も隔年現象ということがあります。都立では芦花が前年度は受験者が少なく、今年は増えました。このように中堅校でも倍率が波を打つことがあります」と解説。また、3年前に開校した多摩科学技術も昨年は落ち着いていたものの、今年度は不合格者が106人と大きく変動した。

 「科学技術アドバイザーとして、企業や大学に協力を得ている学校です。刺激のある特別講座、実験実習を大事にした授業、ホンモノに触れる教育をしています。来年は反動が出るかと思いますが、期待値が高い学校です」

 さらに、都立の中高一貫校として、初めて内部進学者を出す南多摩、三鷹、大泉、富士の存在もクローズアップ。

 「都内全体では800数十人、内部進学する公立中3生がいます。その分、募集人員が減ります。当然、玉突きで影響が出ると考えられます」

 これらの学校は多摩地区か多摩に近いエリアに多く、次年度の動向が注目される。

 募集人員を増やすのではないかと思われるのは、小山台、竹早、駒場、小金井北と進士氏は分析している。

男子・女子校人気の神奈川
私立志向が高い埼玉

 次に、(株)エデュケーショナルネットワーク 開発本部開発部データ課課長の池田亨氏から、千葉・神奈川・埼玉の高校入試において、受験生がどう動いたか説明された。

千葉:

 千葉では中3の卒業予定者数は5万1,687人で、昨年より1,518人増。公立高校進学希望率は昨年が77.1%で、今年は77.2%とほぼ横ばい。「進学希望そのものはおとなしい状況だった」と池田氏は分析する。

 今年の特徴は「後期の倍率が非常に上がったこと」。後期の定員は昨対で305名増えたものの、志願者も昨対で1,110人増。昨年は入試制度が変わり、後期選抜が背水の陣の様相を見せたために、出願をセーブした傾向があった。しかし、思ったより倍率が出なかったため、「今年は後期に挑戦したのでは」と池田氏は語る。

 千葉の私立の出願傾向については「ますます前期にシフトし、後期は難関・上位校を除いて、二次募集的な色合いが強い」と話す。志願者数が増えた学校としては、「千葉英和(446人増加)」「千葉経済大(328人増加)」が顕著。定員80名の東邦大東邦も214人増と目立った存在となった。2年連続で10%以上志願者を増やしているのは芝浦工大柏、二松學舍柏、昭和学院だった。

神奈川:

 神奈川の公立では今年、私立との協議で決めた比率より定員を増やした。しかし、前期の志願者は予想に反して昨年より380人減。この理由を池田氏は「元々、前期・後期と違う学校を受験できるよう、数回チャンスを与えようとした制度のねらいがうまく機能しなくなってきていた。そこへ『来年度から一本化するのであれば、無理に前期で倍率の高いところを受験しなくてもいいのでは』という風潮になり、こうした数字になったのでは」と語る。

 また、湘南の人気が復活したのも印象に残ったことの一つと池田氏。「このところ、横浜翠嵐の人気の陰に隠れていたが、大学合格実績がよかったのも相まって人気復活を感じた」と話す。

 神奈川の私立で、他県には見られない動きとしてあったのが、男子校・女子校の志願者が増えたこと。内部進学率の高い大学附属校志向が健在だったことも他県にはない傾向だった。東京にも内部進学率が高い附属校があるが、志願者数は増えた学校、減った学校いろいろだったのに対し、神奈川では入試で特別の事情があった学校以外は増加している。130人以上志願者が増えたのは「湘南工科大附属(339人増)」「光明学園相模原(215人増)」等。増加率では、武相(増加率59%)、白鵬女子(56%)、横浜翠陵(52.4%)が50%超と突出。また、日吉の日大が他県生対象の併願推薦を1年で取りやめたのも、大きな変化だった。

埼玉:

 昨年、県内私立傾向が高かった埼玉。入試が一本化した今年もその傾向が続いた。私立の出願者は前年6万7,503人だったのが、今年は7万1,162人。「ここまで増えるとは思わなかった」と池田氏。公立中3生1人あたりの出願校数も2009年度を底に、2010年、11年、12年と右肩上がりに上昇しており、他県にはない動きを見せている。

 「公立を一校しか受験できなくなったため、私立の安全校+挑戦校を受験したのでは」と池田氏は分析する。埼玉の私立で爆発的に志願者を増やしたのは「栄東(703人増)」と「昌平(571人)増」だった。

 公立前期の普通科志願者数トップは、伊奈学園(志願者数905人)。伊奈学園の北辰テストの偏差値は60。この辺りの偏差値以上の生徒が、公立に落ちて、私立併願校に進む割合が高く、一番のボリュームゾーンになっている。一方、偏差値47以下は不合格の生徒は少なく、併願の私立に入学する生徒はあまり見られない。

 「この層の生徒を私立で確保するのであれば、事前に単願でとるしかない」と池田氏は話す。

塾から信頼されている
私立が入学者増やす

 引き続き進士氏が、入学手続者が超過した人気私立について解説した。

 「入学手続者が多かったのは大型の共学校。学力において、上のレベルも下のレベルも受け皿がある学校は、公立受験でチャレンジするときに受けやすい」と話す。

 さらに「学校説明会の内容が、毎回別内容で多岐にわたっている」「実際の問題を解くプレ入試のような手厚い説明会を実施している」といったところも入学手続者が増えていると指摘。大東学園、堀越のような、自分のやりたいことと学業を並行できる学校も一定のニーズを見せた。

 加えて「大手進学塾から大学進学実績において、信頼を寄せられている高校も入学者を増やしている」と進士氏。広尾学園、宝仙学園理数インター、東京都市大等々力等は、他校との違いを塾側がしっかり認識。塾生にその学校の特色が伝わっている。

 「我が校の特進、選抜クラスははっきりここが違うという情報をもっと塾に発信していくべきだと思います」と進士氏は話す。

 大学の附属校も人気だった。特に大学の人気も高い明大附属校は高倍率。國學院は附属大学に進学する生徒は少ないが、進学体制が整っており、MARCHクラスの大学に一番近い学校と認知されている。さらに今年は、併願公立校の不合格者が多かったため、入学者が増えたと思われる。

 「青山学院は今年、補欠合格者が出なかったそうです。都立最上位校を不合格となった受験生が、青学に手続きするケースが多かったのでしょう。次のレベルの生徒が繰り上がらなかったと推測できます。今まで早慶含め、都立の最上位校を受けていた生徒は、公立も私立も両方合格していましたが、早慶へ進学するほうが多かったのです。最近は都立最上位校に行き、国立大学への進学を希望する生徒が多くなりました。こうした受験者層が増えたため、青山学院の補欠合格者が出なかったのではないか、と考えられるのです。来年は高校の募集を増やす私立が少し増えると思います。これまで内部進学が多かった私立も来年からはぐんと減る、そんな危機感を持っている先生方も多いと思います。併願のしやすさ、面倒見の良さ…これらをどういう風に表現したらよいか学校全体で考える時期が来ていると思います」

入学後に鍛えて伸ばす
私立の傾向がくっきり

 今回はユニークな角度からの分析も試みられた。一都三県別に公立と私立の数校をピックアップ。早慶上理・GMARCH合格者数(02年〜12年)をグラフ化するとともに、その実績を出した生徒が入学した年の予想偏差値(公立は普通科、私立でコース分けしている場合は最上位コース、その年の受験生が受験情報誌で見た偏差値)と比較した。池田氏はまず埼玉から動向を解説。

 「公立トップ校の県立浦和では、早慶上理の合格者は変わっていませんが、二番手校の大宮は大きく伸ばしています。しかもGMARCHの合格者も増えています。しかし、入学時の偏差値レベルはそれほど変化なく、安定している感があります」

 一方私立では、開智の早慶上理・GMARCHの合格者数が劇的にアップ。

 「私立では開智に限らず、大宮開成、本庄第一等、入学者の偏差値がすべて右肩上がりに上昇しています。大学合格実績を見て、優秀な生徒が入学し、3年後に結果を出す。それなりの生徒が集まって鍛えていくと、こうした結果につながると思います」

 千葉では、県立千葉が07年〜12年で早慶上理を伸ばす。サンプルにした2番手校はほとんど変化なし。GMARCHは県立千葉だけでなく、2番手校も伸びている。私立では東邦大東邦、専修大松戸、千葉英和をサンプルにしたが、3校とも総じて着実に伸びている。偏差値は公立が横ばい、私立も専修大松戸は伸びているが他の2校はあまり変わっていない。

 「東邦大東邦は合格者が増えても、偏差値は伸びていません。コース分けを行っていないことも理由ですが、埼玉と違って新コースで成績上位生を集めよう、という考え方が希薄で、指導面で対応しているのでしょう」

 神奈川の湘南をはじめとする公立トップ校では、ほぼ早慶上理、GMARCHとも合格者数が増えている。私立では山手学院がGMARCHを非常に増やした。早慶上理も07年から12年は大きく増えた。鎌倉学園も同傾向で、横浜隼人と湘南工科大附属はGMARCHが増加傾向。偏差値は湘南と山手学院が緩やかに上昇、横浜隼人と湘南工科大附属が新設コースで上がった以外は公立私立とも大きく動いていない。

 「千葉で選んだ私立と同じく、指導面で対応しているのでしょう。こうした学校は地域での信頼が厚くなると思います」

 東京都立では西と国分寺の早慶上理の伸びが大きい。GMARCHはサンプルの各校ともほとんど増加。ただ、偏差値はあまり動いておらず、中にはやや下がっている例も。一方で私立は桐朋、錦城(小平)、八王子、東京成徳大、東京農大第一、青稜を選んでいるが、偏差値は桐朋と07年の東京農大第一以外はすべて上昇。大学合格者はGMARCHが全校とも右上がりの直線的な増加、早慶上理も小幅もあるものの、ほぼ全校とも右上がり。

 「大学合格実績と偏差値は相関しています。大学合格実績をコース分けしないで伸ばしていく学校もありますが、即効性という面では難しくなっているかもしれません。それでもGMARCHは合格者を増やすことが必要です。新設のコースに対する期待感があり、新コースに設定された偏差値と連動していく中で、従来に比べて1ランク学力が高い生徒が入学し、3年後に合格実績で成果を出していくサイクルがうまくできてくると、募集の好結果にも結びついていくのではないでしょうか」と話す。

 進路指導についても進士氏はアドバイス。

 「大学の合格実績は、一部の特進クラスの生徒の実績であることが多い。しかし、受験生や保護者の本音を考えれば、一般的な生徒がどのような進路をとったか、真ん中くらいの成績でいくと、どんな進路が望めるのかを知りたいのではないでしょうか。また都立は、今年4月から50校ほどが土曜日に授業を行っています。今回の入試で100人以上不合格を出し、かつ土曜日に授業がある高校。これだけの倍率が出るということは、勉強以外に何か活発なものがあって、認知されている学校です。何をしているか研究されることをお勧めします」

 安田教育研究所 副代表の平松享氏は、都立の進学指導重点校(日比谷・西・国立・八王子東・戸山・青山・立川)から青山が基準から考えると、外れてもおかしくはなく、代わりに桜修館が入るのではないかと予想。早慶上理+国立・医学系のいわゆる難関大学の合格者数15人以上が最低のボーダーラインだが、青山の合格者は今年8人で、桜修館は11人。ゴールデンウィーク明けの5月半ばには結論が出るのではないかと推測している。

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