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2012/5 塾ジャーナルより一部抜粋

[研修会] 第48回 火曜倶楽部セミナーに400人以上参加
2012年中学入試分析と東大秋入学を問う

  2012年3月13日(火)/於 東京ドームホテル  
     
私立中学・高校と学習塾のためのシンポジウム「火曜倶楽部」は、主催者側の一人、(株)リヴィジョン代表の富永光太郎氏の挨拶からスタート。今回のセミナーは、いつもと趣向を変え、(1)首都圏三大模試関係者による「2012年中学入試分析」と、(2)東京私学教育研究所の清水哲雄所長と大学通信の安田賢治ゼネラルマネージャーを招いた「東大秋入試を問う〜高大接続を踏まえて、私立中高はどう対処するべきか〜」の、2部構成で行われた。会場は立ち見が出るほどの盛況で、私立学校、学習塾、出版社ら教育関係企業410人の参加となった。

第一部
(1)「2012年中学入試分析」

パネリスト

市川 理香氏
(日能研進学情報センター センター課長)

岩崎 隆義氏
(四谷大塚 中学情報部部長)

司会
後藤 卓也氏 (啓明舎)

受験者数は微減
安全安心志向に

後藤 まず、私のほうから本日ご欠席の首都圏中学模試センターの新井氏に代わって、今年の出願状況についてご報告します。2007年をピークに中学入試の受験者数は相当数減り、集計によると、2007年から2012年で約10%強減になっています。受験率も16.45%から14.80%に減り、やはりこの5年間で、中学受験者数の冷え込みは明らかです。ただ、かなり悲観的な見通しが多い中で、受験者数・受験率ともに、微減に留まっていることはおわかりかと思います。

岩崎 残念ながら、受験者数はやはり減っています。傾向として、2月1日の試験を受けない生徒が年々増えているのですが、これは埼玉と千葉で受験を終える生徒が増えたからです。その一方で、2月2日から始まる生徒もいて、受験日程が多様化しているといえます。私どもの集計では、今年は小6の17.2%が受験をしたので、昨年に比べて0.4%ダウンになりました。思ったよりは減らなかったという理由は、新設校、新設受験回の増加が4%引き上げているからです。計算してみると一人当たり5.45回数併願していることになり、併願数は去年とほぼ変わりませんでした。1都3県で1校平均約4試験回実施している計算になり、一人当たり5.45回とすると、親御さんが入学させたい学校は1校か2校なのではないかと考えています。

市川 日能研生の併願数は一人7〜8校で、去年と同じでした。やはり埼玉で終わり、2月1日以降は受験しない率が増え、より確実に合格できるところに出願するという、安全安心の傾向がありました。

後藤 「より確実に」という点、岩崎さんはいかがですか。

岩崎 親御さん自身が偏差値世代ですから、子どもの模試の結果を非常に分析しています。合不合テストで確率が20%未満の学校に出願するよりも、合格できる学校で、同じような教育サービスが受けられると考えられる学校にシフトしているのではないかと思います。つまり安全志向ですね。受かる可能性が高い学校しか出願しない傾向が強くなっていると思います。

保護者の精査に適う
教育内容をアピールする

後藤 出願が増えている学校、減っている学校など、どういう流れがあるとお考えですか。

市川 一つの視点で見ると、今年は学費がキーワードになっていると思います。学費のトップ50校中34校が応募者減になり、その中には大学付属校も多く含まれています。一方で、学費が高くても前年比増の学校も多くありました。近年、子どもを通わせたい学校を精査するという親の研究が深まっていると感じています。中でも、父親にその傾向は強いように思います。高い学費を払ってでもそれに見合った教育を実践している学校であれば、通わせてあげたいという親が増えているからではないでしょうか。卒業後の進路や日々の教育活動の様子、在校生・卒業生・保護者とのかかわり方はどうなっているのか、などの学校の出来事を発信することが必要であると感じています。

岩崎 「大学付属や共学人気に陰りが出てきた」という話の時に、その原因をワンフレーズで表現できない傾向にあります。建学の精神や校風など、学校それぞれで明確な違いを出すことが大事だと思います。すべての面で親御さんの選択に見合うだけの学校になっているかどうかが大切です。大学合格実績を超える何かで訴求できている学校は、出願数が高い印象です。また、地元の学校に通うという原理原則は生きており、通うのはやはり近いほうがいいと私は思っています。

後藤 公立についてはいかがでしょうか。

市川 日能研生の調べでは、私立と公立両方受かった場合、公立の一貫校を選ぶ率が59.8%になっています。公立に受かった喜び、学費のことなどの要素を合わせてのことだと思います。両方受かった場合、6割の生徒が公立一貫校を選んでいるという現実はありますが、いかに私学の良さを伝え、その生徒たちを私学に呼べるかということを考える必要があると思います。

後藤 公立は私立との併願が多いので、公立校の躍進は中学受験全体の活性化の役割も果たしているとは思うのですが、私立のかなり高いレベルの学校でも辞退して公立を選んでいるというのは、私学にとってはあまりありがたい話ではないですね。来年度以降の募集に向けて、私学にとって夢や希望の持てるメッセージ・エピソードはないでしょうか。

岩崎 入試要項を変更するのではなく、先生方の目指す、または実践している教育を愚直に学校説明会で表現することも大事ではないでしょうか。多感な時期である中・高の6年間を預かるのですから、リベラル・アーツ(文理にとらわれず、広く知識を身に付けながら、創造的な発想法を訓練する教育システム)を実現できるのは私学しかないと思います。これからの生徒が集まる学校、親御さんに支持される学校というのは、その一点ではないかと思うのです。センター試験対応型の勉強や文系・理系に分けて特化した教育で、実績を伸ばしてきたのが今までだとすれば、これからは日本の明日を考え、本来なら大学でやるべきことを私学の中・高でやるような教育が必要です。そこを自信を持って親御さんに伝えたときに、親御さんが安心してわが子を預けたいと思うようなご家庭が一軒でも増えるのではないでしょうか。そこが明らかな公立との違いだと思って、エールを送っています。

市川 先ほど私立と公立両方受かった場合、6割は公立に行くと申しましたが、両方受かっても選ばれている私学もありますので、自信を持っていただきたいです。今年の特徴に、埼玉県の生徒が埼玉県内に通う割合が4割になった(2002年は25%)という変化があります。つまり、いい学校が近隣にあれば、わざわざ遠くへ行かず、地域の学校に行く生徒が増えたのです。そこには夢を持っていただきたいと思います。

通塾年数の圧縮、
教育サービスとしての
多様化などの変化

後藤 受験科目は4教科化している流れがありますが、通塾年数の圧縮もある中で、2教科の受験が見直されてもいいのではないでしょうか。つまり、2教科の試験で、地頭のいい、底力のある子を6年間で育てるという学校が増えてもいいのではないかと思うのですが、その点いかがでしょう。

岩崎 通塾年数の圧縮もありますし、そもそも塾に通わない生徒も受験するようになっています。三大模試の状況から、今年は出願数が5〜10%減るかもしれないという大方の予想でしたが、実際はそこまで減らなかったのは、新設回の増加もあるにしても、模試を受けない、あるいは通塾しない生徒の存在も反映しているのだと思います。通塾、親が教材を使って教える、ネットでの勉強と、教育サービスとしての多様化もあります。そうなると、2教科は外せない選択肢になります。適性検査型、PISA型入試で生徒を獲得している学校や、校長先生の面接のみで合格・不合格を決める学校もあり、試験内容も多様化しています。

後藤 前年の大学進学実績が、翌年の募集に反映されるのは確かですが、中高一貫の6年間の中で、どのように子どもを育てていくのかを保護者がしっかり精査する時代になっていると思います。実績だけでなく、教育の中身をしっかり見た学校選びをしていただけるように、私たち塾業界も私学の良さをアピールする働きかけをしたいと考えております。数字だけを見ると暗い材料が多いですが、来年以降、数字に一喜一憂するのではなく、中身の伴った活況を示せるように、力を合わせてがんばっていきたいと思います。


第二部
(2)「東大秋入学を問う」
〜高大接続を踏まえて、私立中高はどう対処するべきか

パネリスト

安田 賢治氏
(大学通信 情報調査・編集部ゼネラルマネージャー)

秋入学は私学にとって
教育の中身が問われる機会に

 日本の現状では、秋入学は4月入学の補完という形で行われていて、人数は2,226人しかいません。そのうち留学生が1,500人、帰国子女が147人、社会人193人で、それ以外は300人ぐらいしかいないのが現状です。

 東京大学はアジアではトップレベルですが、世界の大学ランキングでは30位です。例えば、東大の外国人教員の割合は3.7%ですが、マサチューセッツ工科大は14%、オックスフォード大は20%なので、世界のトップレベルに比べると非常に低いといえます。国際基準に則って秋入学にし、多くの留学生、外国人教員を呼ぶことによって、これを改善したいというねらいがあるのです。

 秋入学の画期的なことは、4月から9月までの半年の期間「ギャップターム」が導入されることと、東大単独ではなく、北海道大学・東北大学・筑波大学などの国立大と早稲田大学・慶應義塾大学の2私大合わせた11大学と協議を進めていることです。

 今の学生は海外に出かけない、留学しない、と非常に内向きです。その理由として、“就活に遅れる”というようなことも調査の中で上がってきています。東大としては海外留学を促進して、タフな東大生を作りたい、グローバル化キャンパスを作りたいということだと思います。また内向き志向を打破できない場合、例えば、クラスに留学生がたくさんいれば、当然日本にいながらにして国際交流ができる、という考えもあります。最終的な目的は、大学の教育力、研究力の強化があるのです。

 東大は高大接続の重要性もポイントにあげていますが、高大だけでなく、小中、中高の接続の問題もあると思います。

 また、制度を作れば留学生がどんどん入ってくるというわけではなく、留学生から見て12大学にどれだけ魅力のあるカリキュラム、コンテンツがあるのかが問われ、学びたいことに応えてくれる教育ができないと、留学生も海外の教員も来ないでしょう。

 秋入学の問題が、教育改革に一石を投じたのは間違いないと思いますし、私学にはやはり、教育の中身が問われていく気がしてなりません。

パネリスト

清水 哲雄氏
(東京私学教育研究所 所長)

「履修」でなく「修得」してきた
私学の独自性をさらに問い直す

 東大の中間報告書には、半年間のギャップタームの意義として、「受験に付きまとう偏差値重視の価値観をリセットし、大学で学ぶ目的意識を明確にできる」「受験競争の中で染みついた点数至上の意識、価値観を転換させる」という表現があります。これは大学入試を実施する側が、中高の教育をどう評価しているのかがわかる文章だと思います。私学は偏差値重視の教育を目指してきたとでも言うのでしょうか。そんなはずはないですし、偏差値を重視して、とにかく大学に受かればいいという教育を私学がしてきたとは思えません。正直言って非常に遺憾に思います。

 ギャップタームは高大のバランスの中で、高と大をどう接続していくのか、というテーマの一つにも位置づけられると思いますし、そういう意味で私学は一歩先を行っていると考えていいかと思います。

 大学側は高校側にも意見を聞くべきだし、経団連や大企業には「大学3年からの非人間的な就活をすぐに止めてほしい」というぐらいの意見を言うべきだと思います。

 高校側は春入学、秋入学の両方の指導をしなくてはならなくなりますし、卒業したら終わりではないので、相当な議論が必要で、意見を出す必要が出てくる状況になると思います。

 こういった話し合いが、高大接続も含めて、中等・高等教育全体が見直されるきっかけになれば、リベラル・アーツの問題も合わせて、議論の中に乗せていくべきだと思っているところです。

 日本の大学の受験資格の一つに、高校までの教科を修了することが課せられていますが、単なる「履修」ではなく、「修得」することを実践してきたのが私学だと思うのです。

 高大接続のテストについては、本当に長いこと議論してきました。テストには集団準拠型(偏差値)と項目準拠型(TOEICなど)があり、高大接続テストは、項目準拠型のテストを作っていかなくてはいけないと私は思っています。

 そういうわけで、秋入学には相当な準備が必要ですし、テスト文化自体を変えていかないといけないような、かなり長いスパンの話だと思います。しかし、トップレベルのほとんどの国がそうなっていますし、できないことではありません。

 私学のそれぞれの学校が、あるいは私学全体として、独自性や存在意義をもう一度、改めて考え直す時期になっているのです。

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